ラフ・ウィズ・ミー 初めてソレを握らされたのは八歳か九歳の時だったと思う。
黒くて重い、鉄の塊。おもちゃみたいに簡単に渡してきたのは悪ガキ仲間の兄ちゃんで、オレと同じくソレを初めて手にした同い年くらいの仲間たちは「カッコイー!」と興奮気味に瞳を輝かせ、取り合うように次々手に取っては眺め回した。
この世界には魔法という絶対的な力があるが、スラム街には魔力を持っている人間はそういない。ここで絶対的に人を支配する力は魔法ではなく――拳銃。魔法と同じくらいに簡単に人の命を奪える道具だ。
引き鉄を引いて、パァンと一発。興奮と少しの不安でハイになりながら、空虚を狙って構えるフリをしてパァンと呟いてみれば、まるで自分が誰よりも強くなった気がして心が震えた。
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