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    unirou_reinou

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    unirou_reinou

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    一応Bではないです。
    🐺さんに息抜きに外に連れていかれる🦇の2人が星を見る話です。

    空に歌を。「コーサカ、行きたい場所があるんだけど」
     唐突、本当に唐突に相方は声をかけてきた。
    「行きたい場所があるんだけど」
    「いや聞こえてるけど。あなたがあまりにも唐突だから反応が遅れただけで」
    「コーサカと行きたいんだけど」
    「分かった分かった、なに? 何処に行きたいの?」
    「おれの地元なんだけど」 
    「ごめん、用事あったわ」
    「ちょっと待って、最後まで聞いてよ!」
    「悪りぃ悪りぃ、ジョーさんの実家って正月くらいしか行かないからさ、普通の日に言われるとちょっと吃驚したわ」
    「ん? 実家には寄らないよ? 日帰り」
    「は? じゃあ何しに行くの?」
     よくぞ聞いてくれました、とアンジョーは表情で語る。

    「星を二人占めするんだよ」

    ──正直、アンジョーの言っていることはよく分からなかった。
    ただ、なんとなく魅力的なワードだったから、二人で電車に乗り込んだ。
    「コーサカ、酔い止めは飲んだ?」
    「飲んだし、持って来てる」
    「あはは、対策バッチリだねぇ」
    「自分が三半規管弱い事は自分が一番よく分かってますから」
    少し得意げに俺は笑ってみせた。
    「日帰りだけど、作業大丈夫だった? 強引に連れて来ちゃったけど……」
    「本当にお前がよく言うな」
    冗談めかして笑い、俺は言葉を続ける。
    「ま、ジョーさんが思ってる程切羽詰まってはないよ。一切作業がないっていうと流石に嘘になるけどさ、息抜きに一日休むくらいならまあ、リカバリー効くし、出先でも出来そうな作業もあったし」
    「そっか、コーサカが大丈夫って言うなら良いんだけど……」
     少し不安げな表情を見て思わず、
    「まあ、無理はしないって」
    と、口走ってしまった。
    そっか、とアンジョーは深くは聞かず、安心した様に笑った。
     まあ、もしも無理をしたら力強くで休憩だの、息抜きだの差し込まれるであろうし。俺だってアンジョーが無理したら怒るし、お互いそこら辺は分かっているだろう。自信はないが……。

    ──電車やバスを乗り継いで、アンジョーに手を引かれ歩いて行く頃には、夕方になっていた。
    夏に比べるとやはり、日が落ちるのは早くなっているなぁ……等とぼんやりと考えた。
    「こっちだよ」と、ワクワクした様子を隠しきれていなかった。声色が明るく、本当なら今すぐ駆け出したいのだろう。気を抜いたら、尻尾を出しそうで、少しだけ不安だが、不思議と人通りは無く、どんどんと森の方へと歩いて行く。
    「ジョーさん、何処向かってんの? ここ、下手したら迷子になるだろ」
    「おれはここ歩き慣れてるから平気だよ。ちょっと木が多くて獣道なだけ」
    「もうほぼ森だろ……」
     呆れた様に溢したが、自然の匂いは不快ではなく、自分の地元が田舎なのもあるだろうが、正直心地良い。
    そういえば、毎年正月はアンジョーの家で過ごしているが、こうやってちゃんと回った事は意外となかったかもしれない。
     好奇心が疼いている内に、段々と開けてきた。
    その頃には辺りは暗くなっていたが──言葉を失う程、美しい星空が広がっていた。

    「見て、ここ。崖になってるからちょっと危ないんだけどさ、狼ってよくこういうところでさ、遠吠してるイメージ持たれてるよね。おれ小さい頃にここ見つけてさ、それからこっそり通ってる穴場みたいなところなんだ。いつ来ても凄く景色が良いんだよ」
    「すげぇな……」
    「でしょ!」
     思わず溢れた言葉に、アンジョーは満面の笑みを浮かべていた。
    「それでね、おれ、学生の頃は結構ここに通って歌ってたんだ」
    「遠吠えじゃなくて?」
    「それは創作の中のイメージでしょ。おれはね、いつもここで歌ってた。誰にも届かない事は分かってたよ、月に届くとも思ってなかったけど……『あの月に届けるぞー』みたいな気持ちで歌ってた。まあ、中学くらいの頃は夕陽に向かって、だったけどさ」
    「ジョーさんらしいな」
     歌が好きな狼男。そんなあいつらしいエピソードだ。
    「ねぇ、コーサカ」
    「なに?」
    「ここで星見てるとさ、ちょっとスッキリしない?」
    「……する」
     あぁ、こいつは最近煮詰まっていることが分かっていたのか。
    ならば、少しくらい我儘を言ってもいいだろう。
    「ジョーさん」
    「なに?」
    「ジョーさんの歌が聴きたい。ここで、月に向かって歌ってたんだろ? 聴かせてよ」
    一瞬驚いた様にぽかんと口を開いた。が、次の瞬間笑顔で頷いた。
    「……うん! 任せて」
    今はもう、誰にも届かない、なんてことはないのだから。
    俺が独り占めしてやる。相棒の最高の歌を。
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