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    こぴっく

    @Copic_V91の、らくがきや、お話を載せていきます。

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    こぴっく

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    前に上げた鬼配墓のテイクn回目!
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    ・視点が章ごとに変わることがあります(ぼく=⏳、僕=📮にしてある(はず))
    ・章ごとに小分けにして投稿します
    ・誤字脱字がある可能性があります

    綿毛の君と傘帽子の君③第3章

    「アンタの名前を教えて欲しいっ!」

    考えるよりも先に口が動いた。

    自分でも、何故こんなことを口走ったのか分からない。

    言葉が口をついて出た後、やっと頭が冴えてきて、汗がどっと吹き出した。

    よく分からないものと口を聞いてしまった!

    ぼくの息は浅く短くなり、指先が震える。

    だが、男はとくに気にした風もなく、柔らかくぼくに微笑みかけ、

    『僕の名前は繝薙け繧ソ繝シです』

    と男は言う。

    男の声は相変わらず頭の中で響くのに、不思議と彼の名前の部分だけは、ぼやけて滲む。

    「……ごめんなさい。聞き取れなかった」

    正直に話すと、男は困ったように眉を下げて笑った。

    男は、懐から巻物を取り出しすと、流れるような手つきで そこに何かを書き始め、よし、といったふうに頷くと、巻物をぼくの目の前で広げて見せた。

    『これから暫くは筆談にしましょう。

    僕の名前が聞き取れないのは、きっと貴方のせいではありませんので お気になさらずに。

    僕の名前が聞き取れない内は、貴方の好きなように呼んでくれて構いません』

    「じゃあ、兄さんって呼んでいいか?」

    この男の優しげな雰囲気が、2つ隣の家の兄弟の 兄の方と似ていたから、ぼくも、あんな兄さんが欲しかったから、そう呼んだ。

    この理由を知ってしまったら、この人は気を悪くしてしまうだろうか。

    『いいですよ』答え、人好きのする笑顔をたたえた彼の顔を見て、ぼくの中で後暗い気持ち芽生えた。

    そんなこと知らない兄さんは、大人の手で、ぼくの手を握ってくれた。

    ぼくの手よりも冷たかったけれど、繋いだところから、ほんのり暖かくなってくる。

    ぼくは、兄さんに手を引かれ歩いた。

    兄さんは、ぼくの短い歩幅に合わせて横並んで歩いてくれた。

    「なあ、どこに向かっているんだ?」

    ぼくの体感では10分以上歩いていた。

    ぼくが山中を迷っていた時間を考えると、明るい道にまだ出られていないのは当然のことなのだが、暗い道を歩き続けていると不安になってくるのだ。

    『貴方のお家へと思っていたのですが、

    その前に少し遊んで行きませんか?

    折角のお祭りなので』

    悪戯っぽい微笑を湛え首を傾げる姿は、彼の見た目とは違って、ぼくと同じくらいの子どもみたいだった。

    「行きたい!

    行きたいけど、母さんが心配しているから」

    もう随分くらいから、母さん絶対心配してる。

    『長く引き止めるようなことはしません。

    少しだけでも、遊んで行きませんか?』

    「…本当に少しだけだぞ」

    渋々承諾すると、兄さんは心底嬉しそうに破顔していた。

    繋いだ手を握り直し、再度、ぼくたちは明るい道を目指した。
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