遠くの星より、隣の私に。短冊に書いた願いごとは、私には届きません。
物事には役割があり、短冊に書かれた願いは「星に願ったもの」であり、『私』に向けて訴えられたものではありません。
人の願いを叶える力がある私でさえ、この『領域』を侵してはならず、どんなに些細なお願いであっても、決して聞き入れてはいけないのです。
「ねえ、リシェロ。知っているかもしれないけど、七夕にはね、短冊に願い事を書いて笹に飾る習わしがあるのよ。面白いでしょう?」
街の広場に飾られた笹のそばに、小さな簡易の机が一棹。そこには色とりどりの無地の短冊と鉛筆が置いてあって、ライヘンさんはそこから1枚、金色の短冊を選んで椅子に座りました。
「この色だったら、どんなに遠くの空からだって、すぐ見つけられるでしょう?せっかく書くお願いですもの、ちゃんと叶えてもらわないとね」
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