君たちの幸せを願ってる[初めまして皆さん、僕はスミレ、こちらは。]
[ミモザと言う!よろしく頼む!]
[僕らは。]
「司くん、くすぐったいよ。」
「類が可愛いのが悪い。」
[彼ら、今は毛繕いしてるのかな?それは置いておいて、あの太陽みたいなキラキラした毛並みの司くんと僕の名前と同じ花みたいな毛並みの類くんたち人間の雄同士だけど番に、飼われている猫で。]
[犬だな!そして、オレたちも番だぞ!]
[僕、ミモザくんと番になったつもりはないけど。]
[なんだと!?]
[まあそれは置いておいて。]
[置いておくな、スミレ!!]
[今日はそんな僕らの1日と僕らの飼い主の二人のお話をさせて欲しいな。けど、今日は。]
「んっ、だめ、司くん。」
「寝るか。」
「ん。」
[時間みたいだから、また明日。]
[スミレ、無視するな!!]
「?、何かミモザが鳴いてるね。」
「またスミレに振られたか?」
翌日。
6時頃、類くんが起きる音で僕も目を覚ます。どうやらミモザくんも起きたみたい。
[うむ!おはよう、スミレ!!]
[うん、おはよう、ミモザくん。]
「ふぁ…」
[類くんおっきな欠伸してる。]
[眠そうだな。多分、昨日もあの後暫くは類の鳴き声が聞こえてたから、司が類を苛めてたんだろう!全く司はいつも類を苛める!!]
[僕らは犬と猫だから、耳はいいからね。類くん大丈夫かなぁ。]
[大丈夫じゃないか?腰を擦ってはいるが、ちゃんと歩けてる。夜に時々類の鳴き声がする日の翌日はあの部屋から出てこない事があるが、今日は出てきたからな!]
[その時は司くんがあの部屋から出てくるけどね。前に一回全くあの部屋から二人とも出てこなかった日もあったね。]
[あの日はずっと類の鳴き声がしてたから、少し心配だったな。]
[うん。]
類くんが僕らの方へとやってきた。
「おはよう、スミレ、ミモザ。」
「にゃーん。」
「わんっ!」
僕らもおはようと挨拶をすれば、笑った類くんが僕らの頭を撫でてくる。
「ご飯あげるね、ちょっと待ってて。」
そう言って僕らのお皿を類くんは持っていく。水音の後にキッチンの向こうからカラカラと音がしてお腹が鳴いた。直ぐに類くんが僕らのお皿を持ってこちらへ戻ってくる。類くんが僕の前にご飯を置いてくれて、頭を撫でてくるのにありがとうとお礼を言う。
「にゃー。」
「スミレ、いつも鳴いてくれるね、お礼言ってくれてるのかな?」
それに返事をするように鳴けば、類くんが頭を撫でてくれた。僕らはこんなにもお話してるのに、類くんたちには聞こえないのが凄く残念。僕はもっとお話したいのに。
「じゃあミモザ。ミモザ、お座り。」
シュタッと腰を降ろしたミモザくんに笑ってしまう。
[笑うな、スミレ!]
[ごめんね、ミモザくん、いつも機敏だから面白い。]
けど僕もミモザくんを待つ。
「ミモザ、お手、お代わり。」
シュババッと言うように類くんの手に右、左と前足を乗せたミモザくんに類くんもクスクス笑ってる。
「ミモザ、本当に早いね。じゃあ伏せ、そのまま待てだよ?」
伏せたままミモザくんは類くんを見上げる。
「うん、ミモザ、良しだよ。」
類くんがミモザくんの頭を撫でる。それに立ち上がったミモザくんの頂きます!!と言う声で僕も僕のご飯に口をつける。僕とミモザくんが食べているのを見た類くんが優しく微笑む。僕はあの類くんのお顔が好き。
「二匹ともトイレは大丈夫そうだね。」
頷いた類くんがキッチンの方へと歩いて行く。司くんのご飯を作るみたい。僕はそれを見送りご飯を食べた。それから数十分後、今度は司くんが起きてきたみたい。あのお部屋から司くんが出てきた。
[珍しいな、何時も類に起こして貰ってるのに。]
「あれ、珍しいね。司くん、おはよ。」
「ん、はよ、類。」
[類くんにも珍しいって言われてるね。]
[まあ、当然だな!]
そのまま類くんにちゅーした司くんが類くんの腰に手を添える。
「腰、大丈夫か?」
「大丈夫だよ。昨日の司くん優しかったし。」
[つまり司は昨日類を苛めたから、反省して起きてきたってことか?]
[多分、そうなのかな??]
「何か手伝うか?」
「あ、だったらミモザとスミレ、もうご飯食べ終わってるだろうから、お皿回収して洗ってくれると嬉しいな。」
「分かった。」
類くんからのお願いに頷いた司くんがこちらへやってくる。
「はよ、スミレ、ミモザ。」
ふっと目を細めた司くんが僕の頭を撫でてくるのに、僕はおはようと返した。
「スミレはいつも返事返してくれんな。」
笑ってる司くんのこのお顔も僕は好きなんだけど。
[あっ!!またスミレに触ったな!!]
うう゛と唸るミモザくんに司くんはまた呆れた顔をした。僕も呆れた顔をする。
[ミモザくんどれだけ司くんに対抗心あるの?]
[スミレはオレだからな!!司に取られて堪るか!!]
[だから僕はミモザくんの番になった覚えはないって言ってるのに。]
「んとに、ミモザ、お前なぁ。いっつもいっつも。」
ミモザくんの両頬を摘まんで引っ張る司くんと唸るミモザくん。
[離せぇ!!]
ミモザくんは文句言いながらも尻尾が揺れてる。ミモザくんも司くん好きな癖に素直になれないから困ったものだねぇ。けどこれも司くんとミモザくんのコミュニケーションなのかも知れない。
[二人とも楽しそう。]
[楽しくないぞ!!]
そんな尻尾ブンブン振りながら言われても説得力ないのに。
ひとしきりミモザくんの頬を引っ張った司くんが凄く優しいお顔をして、ミモザくんの頭を一度撫でてミモザくんのお皿とそして僕のお皿を持っていく。
[僕、あの司くんのお顔好きだよ。]
[オレも嫌いじゃないが、けどやっぱ、スミレが司の事ばっか言うと嫌だ。]
ちょっと拗ねたようなミモザくんに仕方ないなぁとゲージ越しに舐める。
[スミレ!!]
凄く尻尾を振ってるミモザくんが僕を舐め回すので、鬱陶しくなり、爪を出さずに猫パンチ。
[しつこいよ、ミモザくん。]
[スミレェ…]
悲しそうに僕を呼ぶけど、しつこいミモザくんが悪い。
「またミモザの奴、スミレに猫パンチ食らってるな。」
「ミモザは本当にスミレが大好きなんだけどね。」
「ちょっと片想いみたいで可愛そうだな、ミモザの奴。」
僕らを見ながら困ったように笑ってる類くんと司くんが見える。僕はミモザくんと番になったつもりはないけど、ミモザくんのことは嫌いじゃないし、寧ろ好きなんだよ司くんと言いたいけど、やっぱり伝えられないのは歯がゆい。けど、それをミモザくん本人に言うつもりはない、だってミモザくんが調子に乗っちゃうからね。
「あ、もうこんな時間だ。朝、パパッて作っちゃうね。」
「ああ、サンキュ、言ってくれれば手伝う。」
「うん、ありがと、司くん。」
キッチンに振り返った類くんを見てから、落ち込んでるミモザくんにいつまで落ち込んでるのと声を掛ける。
[スミレが冷たいせいだろう…?]
ミモザくん、面倒臭い。そう言えばミモザくんが更に落ち込んだ。いや、本当に面倒臭い。もういいか。
[僕、寝るね。お休み、ミモザくん。]
[んな!?スミレ、寝るのか!?おい!!]
「またミモザが鳴いてる。」
「昨日と同じじゃねぇか。」
そんな僕らを見て、司くんと類くんは顔を見合せて肩を竦めていた。
▽
次に僕が起きたのはお昼過ぎ、どうやら司くんも類くんもお仕事に行っているらしく居ない。ミモザくんのゲージを見ればミモザくんも寝ているみたい。特に何かある訳でもないし、もう一度寝ようかな。
それから暫く、此方に向かってくる足音が聴こえる。類くんの足音だ。
[類が帰ってきたな!]
[ミモザくんも起きたの?]
[ああ、類の足音が聴こえたからな!]
カチャと言う音がして鍵が回る音、ドアノブが下がる音。それから鍵を閉める音がして、靴を脱ぐ音。それから直ぐにこちらへ歩いてくる足音が聴こえる。玄関へ続くドアから類くんが顔を覗かせる。
「ただいま、スミレ、ミモザ。」
ふわりと微笑んだ類くんにお帰りとお出迎えの挨拶。ミモザくんもお帰りと言ってる。そんな僕らのゲージを類くんは開けてくれて、僕らはゲージから出る。そのまま類くんは手を洗いにお風呂場の方へ。僕らはそんな類くんの後ろについて行き、類くんの足元に擦り付く。そんな僕らに類くんがクスクスと笑った。
「何時も熱烈なお出迎えありがとうね、スミレ、ミモザ。」
手を洗い終わった類くんがしゃがんで僕らの頭を撫でてくれる。思わず喉をゴロゴロ鳴らせば、類くんは僕を抱き上げてくれる。そんな類くんのお顔にすりすりと自分の顔を擦り付けた。
「ふふ、くすぐったいよ、スミレ。」
「んにゃ~。」
「わんわんっ!」
ミモザくんが類くんの足に手を掛けて立ち上がってる。
「ミモザも抱っこして欲しいのかな?」
「わんっ!」
「分かった、ちょっと待ってね。スミレ、ちょっと降りてくれる?」
それはちょっと嫌だったので、僕は類くんの肩に乗る。
「スミレ、降りないんだね。」
もう、仕方ないなぁと言いながら類くんは僕を肩に乗せたまま、ミモザくんを抱っこする。それにミモザくんは嬉しそうに尻尾をブンブン振って、類くんの頬を舐めた。
「ミモザもくすぐったいよ。」
クスクスと笑ってる類くんに僕ももう一度顔を擦り付けながら、ミモザくんに話し掛ける。
[ミモザくん、類くんには明確に好きを表現するよね。]
[だって、類だからな!]
[司くんにもそのぐらい好き表現してあげればいいのに。]
[む、司には嫌だ!司はオレのライバルだからな!!]
[ライバルって…]
[ライバルだ!!だって司はスミレを取る!!]
だから、僕はミモザくんの番になった覚えはないって言ってるのに…。けどちょっと悪い気はしない、ミモザくんには言ってあげないけどね。
[それに司は類を苛めるからな!!類はオレが守る!!]
[類くんには多分伝わってないと思うけど、けど、何で類くんは保護対象なの?]
[それは勿論、類が好きだからだ!オレが一番好きなのはスミレだが、2番目に好きなのは類だからな!!]
[ふーん…]
真っ直ぐ僕を好きって言ってくれるミモザくんにやっぱり悪い気はしないけど。
[司くんは?]
[…嫌いじゃない、が、やはり司はライバルだ!!オレは負けん!!]
キリッとした顔をしたミモザくんがちょっと面白かった。
「スミレもミモザもちょっと降りてくれる?」
類くんの言葉と共にミモザくんが降ろされ、僕も床に降ろされる。そのまま類くんは冷蔵庫を開けた。今日の夜の司くんのご飯かな。
「んー、夜、何作ろうかな…。」
類くんがあーでもないこーでもないと言って唸ってる。
「買い物行けば良かったかなぁ。あ、オムライスにしようかな。今日、猫の日だからケチャップで猫の絵描こうかな。」
司くんどんな反応するかな。とちょっと悪戯っぽい顔をして類くんが楽しそうに笑った。
「けど、明日はちゃんと買い物行ってこよう。」
そう呟いて、類くんが冷蔵庫のドアを閉めた。今日は直ぐには下拵えしないみたい。あ、なら、類くんに遊んで貰おう!そう思った僕は好きなおもちゃを持ってくることにした。
[スミレ?]
[類くんに遊んで貰う!]
不思議そうなミモザくんが僕を呼ぶので、僕も目的を話しておもちゃ箱へ。
[確かに今日は今からでも遊んでくれそうだが…]
[ミモザくんも遊ぶ?]
お気に入りのおもちゃを咥えてミモザくんに問う。
[…遊ぶ。]
[うん、じゃあ類くんのとこ行こう!]
咥えたまま、まだキッチンの付近に居る類くんのとこへ、類くんの足元におもちゃを置いて、お座りしておねだり。
「にゃ~。」
「スミレ、遊びたいの?」
「んにゃあ。」
類くんの問いかけに頷く。僕と遊んで、類くん!
「ふふ。いいよ、じゃああっち行こうか。」
類くんがしゃがんでくれて、僕が置いたおもちゃを手にとって、僕の頭を撫でた後に指を指す。やった!遊んでくれる!!
司くんも類くんも何時も遊んでくれるところに一目散に向かって、お座りして類くんが来るのを待つ。ミモザくんも僕の傍にお座りした。
「ミモザも遊ぶの?」
「わんっ!」
当然だ!と言うミモザくんに類くんがクスクスと笑う。
「分かったよ。じゃあ、行くよ?」
[勝負だよ、ミモザくん!]
[負けんぞ!!]
それと言う言葉と共にふわりと投げられるおもちゃを目で追ってパシッと捕まえる。
「スミレ捕まえるの上手だね!」
[ふふん!]
[次は負けん!!]
類くんの手に先程捕まえたおもちゃを置けば、二回目はちょっと勢いよく遠くに投げられて、それは落ちる前にミモザくんがぱくっと口で咥えて捕まえた。
「ミモザも負けず劣らずだね。」
[どうだ!]
[一勝一敗だね、次は負けない!!]
それで15分くらい遊んでくれた類くんが少し休憩ねと僕とミモザくんの頭を撫でた。今日は此処までらしい。立ち上がった類くんがキッチンに向かうのが見える。そろそろ下ごしらえ、かな?
[やるじゃないか、スミレ!]
[ミモザくんこそ!]
勝負は五分五分だったけど、少し疲れたので思わず欠伸をしてその場に丸くなる。するとミモザくんが僕の傍に寄ってきて、僕に引っ付いてミモザくんも丸くなった。ミモザくんも欠伸をこぼしてる。ミモザくんの体温が心地いい。そのまま僕の意識は落ちていった。
「ふふ、可愛いなぁ、二匹とも。」
クスクスと笑う類くんの声とぱしゃりと音が聴こえた。
それから暫く。また足音が聴こえて、僕は起きる。ミモザくんも起きたみたい。
[司くんの足音だ!]
[司が帰ってきたみたいだな…。]
起き上がって玄関の方へと走っていく、僕らが行き来しやすいように玄関へのドアは基本的に開いてるから僕はお座りして玄関で待つ。ミモザくんは立ったままだ。鍵が回って、ドアから司くんが顔を覗かせる。
「にゃあ。」
「うう゛ッ。」
僕はお帰りと言っているけど、ミモザくんは相変わらずだ。
「ただいま。いつもお出迎えありがとな、スミレ。」
「んにゃあ!」
司くんが優しいお顔をして僕を撫でてくれる。僕はその手に、ゴロゴロと喉を鳴らして、すりすりと甘える。
「ミモザも相変わらずだな。」
今度は呆れた顔をした後にミモザくんの頬を引っ張る司くんのお顔はやっぱり楽しそう。
[離せぇ!!]
バタバタしてるミモザくんと後ろから類くんの足音がする。
「お帰り、司くん。」
「ん、ただいま、類。」
見上げた類くんのお顔も司くんのお顔も凄く嬉しそう。二人は本当にラブラブな番だ。
「類。」
ミモザくんから手を離した司くんが立ち上がって類くんを呼んで、類くんが司くんに寄れば、司くんは類くんの頬を撫でて、朝と同じでちゅーしてる。これも何時もの光景。類くんがお仕事で司くんがお休みの時は立ってる場所は逆だけど。パッと離れた二人。
「お風呂、沸いてるよ。」
「ん、入るわ。と、これな。今日も美味かった。」
「お粗末様でした。」
司くんが小さな箱を類くんに渡すのも何時もの光景。その度に類くんは嬉しそうに微笑む。そのまま司くんが靴を脱いで上がってくる。これから司くんはお風呂なので、後は付いて行かずに何時ものお部屋へと戻る、だってお風呂ならお水があるから行きたくない。肉球濡れるの嫌だし。ミモザくんも付いてくる。
「毎度思うんだが、やっぱスミレ賢いよな?」
「うん、僕もそう思う。スミレ、僕が帰ってきたら、洗面所まで付いてくるんだけど、司くんには絶対に付いていかないよね。」
「けど、俺が風呂じゃない時は付いてくるんだよな。」
「そうそう。」
「ミモザも賢いのは賢いんだがな。」
「絶対に僕らの言ってること分かってるんだよね、二匹とも。けどミモザは司くんの言うこと聞かないし唸るよね。」
「舐められてるっつーか、敵対心な気がしてならねぇわ。ミモザ、スミレが本当に大好きみてぇだからな。ライバル認定されてんのかもな。」
「ふふ、かも知れないね。そう言う負けず嫌いなとこ司くんに似てる気がするよ。」
「飼い主に似るって奴か?それならスミレは多分お前似かもな。」
「かな?」
司くんと類くんがそんな会話をしているとはいざ知らず、僕らはお部屋に戻ってくる。
[司の奴、いっつもオレの頬を引っ張りおって!!]
ぷんすこしてるミモザくんに呆れ顔。
[それはミモザくんが司くんに唸るからだよ。]
たまには普通にお出迎えしたら?と言えば、ミモザくんは何とも複雑な顔をする。
[そんなに嫌なの、司くんに好意示すの。]
[嫌だな!!]
言いきるミモザくんにやっぱり僕は呆れ顔。ミモザくんが本当は司くんが好きなのは分かるけど、僕は類くんも司くんも大好きだから、大好きな人にいつまでもあんな態度されるのは嫌だ。
[ミモザくんが司くんへの態度改めないなら、僕、一生ミモザくんの番になってあげない。]
[んな!?]
スミレェって情けない声がするけど、知らない!
「くぅん…。」
「いや、何かミモザがスゲェ情けねぇ声で鳴いてるな。」
「スミレにまた振られたのかな。」
お風呂から上がってきた様子の司くんは肩にタオルを掛けて、冷蔵庫からお水を取り出して飲んでる。
「あ、司くん、もうちょっとご飯待って。」
「それは全然いいが。」
「司くんが良かったら、スミレとミモザにご飯上げて?」
「ん。」
キッチンで料理してる類くんが司くんにお願いしてて、司くんは頷いて、お水を仕舞ったその足で僕らのご飯を用意してくれるみたい。そんな司くんの足元へと向かい、すりすりと擦り付く。
「んにゃあ~。」
「スミレ、ちょっと待てよ。」
おずおずとミモザくんもこっちに来てる。
「あ?珍しい。ミモザがこっち来てる。」
「あれ?本当だ。」
司くんと類くんが目を丸くしてる。そりゃそうだ、司くんがご飯くれる時はミモザくんこっち来ないから。
ちょっとは態度を改めるのかな、ミモザくん。何とも複雑な顔をしてるみたいだけど、ミモザくん、そんなに僕と番になりたいのかな。
「きゅう…。」
「えらく情けねぇ声で鳴くな?どうした、ミモザ、何時もの勢いはどうした。」
司くんが怪訝な顔をしている。
「調子悪くねぇよな、なあ、類。」
「うん、うんちもいいうんちだったから、大丈夫だと思うんだけど…。」
司くんも類くんもミモザくんの変わりように逆に心配になってるみたいで眉が下がってる。
[ちょっとミモザくん、司くんと類くんが逆に心配してるよ?]
[……、どうしろと。]
何とも情けない声。
[そこまで大人しくならなくても、多少、態度を改めるだけでも許してあげる。番も考えてあげる。]
[!?、本当か!?]
「うお、急に元気になった。」
「ミモザとスミレの間で何かあったのかな…。」
急にテンションが上がったミモザくんに司くんと類くんがまた驚いた顔をした。
[もう、ミモザくん!!また司くんと類くんが驚いてるよ!?]
[すまん!!]
ぺしっと爪を出さない猫パンチでミモザくんを疎める。耳を下げたミモザくんを見てふんすと鼻を鳴らす。
「何かミモザの奴、完全にスミレの尻に引かれてねぇか、これ。」
「僕もそんな気がする。惚れた方が負けって事かな?耳が痛いなぁ…。」
困ったように眉を下げた類くんに、司くんが苦い顔をする。
「いや、本当にプロポーズする前は悪かった。本当に反省してる…。」
「もういいよ。司くんが今は本当に僕を大事にしてくれてることちゃんと分かってるから。」
類くんは苦笑を一つ。それに司くんはやるせない顔をしてる。類くんと司くんは基本的にはラブラブだけど、僕らと出会う前に何かあったのか、司くんは時々凄く後悔したような悲しいお顔をする。
「…なあ類、抱き締めてもいいか?」
「うん、いいよ。」
眉を下げた司くんが類くんに聞き、類くんはふわりと微笑み、腕を広げた。それに司くんは類くんを抱き締める。そのまま二人はまたちゅーをして、そのまま額を合わせた。
「あの頃は傷つけてばっかで本当に悪かった…。」
「うん、大丈夫だよ。今は僕、本当に幸せだよ。」
苦い顔をしたまま、後悔したような司くんを宥めるように類くんが司くんの背中を撫でてる。
「いや、それじゃ足りない。これからはもっと幸せにするからな。」
「今も充分幸せだけど、司くんならもっと幸せにしてくれるって信じてるよ。」
司くんは類くんを更に力強く抱き締めて、決心したように呟いてる。そんな司くんに類くんは目を閉じて、微笑む。
「類。」
「ん。」
ちゅっと音を立てて、司くんがまた類くんにちゅーしてる。今度は何回も繰り返してる。
「類、愛してる。」
「うん、僕も愛してるよ。」
けどそろそろ僕もお腹空いたからお邪魔だと思ったけどにゃあと鳴く。それに司くんと類くんは我に返ったみたいで、そそくさと離れる。それにあのまま司くんと類くんが続けてれば、多分またミモザくんが司くんに向かって吠えてた。
「悪い、スミレ。飯な。」
「にゃあ。」
司くんが僕のご飯とミモザくんのご飯を入れてくれて、顎で何時もの場所を指す。ミモザくんと共にその場所に向かってから、お座りして待つ。僕の前にご飯が置かれて、司くんはミモザくんにお座りと声を掛ける。何時ものミモザくんなら司くんの言うことは聞かないけど、やっぱり少しだけ態度を改めるらしくちゃんとお座りをする。
「うわ、珍しい、本当に今日はどうした、ミモザ。」
「わふっ。」
[スミレが言うから仕方なくだぞ!]
そう言ってミモザくんはつーんと司くんから目を逸らす。
「ミモザ、お手、お代わり。」
司くんの顔は見ないけどちゃんと司くんの言うこと聞いてるミモザくんに、思わず僕もどうしたの?と問い掛ける。
[スミレが言ったんだろう?]
[それは、そうだけど…。]
[…それに、オレも本当は司の事は嫌いじゃないからな。]
ちょっとぐらいなら言うこと聞いてやってもいいと思ったんだとミモザくんは確かにそう言った。ちゃんと認めてくれたんだ。
[ふふ、そっか…なら、]
ちょっと番になる事を考えてあげてもいいかな。と思った。ミモザくんには言わないけど。けど、その態度をずっと続けてくれるなら、ミモザくんがもう一度僕に告白してきた時に受け入れてあげようとこっそりと思った。
「司くん、お待たせ!ご飯、出来たよ!」
僕らを見ていた司くんを類くんが呼ぶ。それに司くんは優しいお顔で一度僕らの頭を撫でる。何時も司くんと類くんがご飯を食べてる机に向かった司くんが目を丸くしたのが見える。
「オムライスに猫の絵?」
「うん、今日、猫の日だからね。」
類くんが楽しそうに笑ってる、夕方に冷蔵庫を覗いてる時と同じお顔してる。
「これ、もしかしてスミレか?」
「あ、分かった?」
「分かる、似てんな。」
司くんも楽しそうに笑ってる。さっきの類くんを抱き締めてる時のお顔と全然違う。
「あ、どうせなら。」
僕らをパシャパシャする携帯で司くんがオムライスを撮ってるのを見て、類くんは悪戯が成功したみたいに嬉しそうに笑ってる。
[司も類も楽しそうに笑ってるな。]
[うん、僕、二人が幸せそうなの見るの凄く好き。]
[オレも好きだぞ。]
[ずっと二人には幸せで居て欲しいな。]
オレもそう思う。と言って僕の傍に座って寄り添ってきたミモザくんが僕の尻尾に自分の尻尾を当ててくるので、それに応える為に僕もミモザくんの尻尾に自分の尻尾を絡めた。