深夜2時、パンとココア さく、さく、さく。深夜の台所に、食パンの悲鳴が響く。硬めに焼き上げられた小さな一斤のそれを、端から二センチ程の厚さに切っていく。ぱたり、と倒れた“みみ”の部分は申し訳ないけれどそのままにして、改めてもう一度三センチ程のあたりに刃を立てる。さく、さく、さく、さく。四度斬りつけた程度で身を分たれてしまうくらい小さな食パンを、一切れだけ。
皆が寝静まった夜更けに小腹がすいて、ひっそり抜け出し何か無いかと台所に顔を覗かせたら目があった手のひらほどの食パン。おそらく明日の朝ごはんにニキが買ってきたのだろう。一切れぐらいなら許してもらえるだろうと手を伸ばした時、トラックの鳴き声が遠く響いた。咎められているように聞こえるのは気のせいだろう。
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