「お義父さん」の訳し方 青年は癖毛の黒髪を風に任せて木陰に腰を下ろし、大きく深呼吸をする。木々に青々と茂る葉や草花の緩やかなさざめきが、耳や汗ばんだ肌を撫でては実に心地が良い。
息を吸って、吐いて。またひとつ深呼吸をした。束の間の休息を噛み締める。
青年は旅をしている。今もその最中だ。
ある日は、神鳥と噂される鳥が引く薬売りの馬車で善を売り。
またある日は、隠れるように奴隷商の元へ足を運んで悪を買う。
「俺はいったい、何がしたいんだろうな」
良い事の後には悪い事がある。運命とはそうバランスを取るものだとか、そうでもないのだとか。
じゃあ悪い行いをした後には何がくるのか。はてさて、因果は廻るというけれど。
一見、考えなしの矛盾に思える行動でも結果は伴うものであり、運命の秤ってやつはいい加減でバネが馬鹿になっているのかと疑いたくもなる。
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