凶器の行方この度はイベント会場にて新刊をお手に取っていただきありがとうございました。
下記おまけSSは新刊本編より少し後のお話になります。
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【凶器の行方】
「捨てるか、売るか。なんでもいい、とにかく早急に処分してくれ」
ネクタイを締め、出勤準備を済ませたオレの手に稀咲が握りこませたのは、大粒のダイヤモンドが光る指輪だった。
「ああ、これ。抜き取ってたんだ?」
「オレに繋がるものを残しておく訳にもいかないしな、それに……」
言い澱むと、稀咲はそっと目を伏せた。近頃よく稀咲が見せる表情だ。外界を遮断し、眩しい光を浴びた時のように目を細め、何かこの世のものではないものを見つめている。
「……とにかく、早急に処分してくれ。お前にしか頼めない」
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