Linking 自分には一生縁がないものだと思っていた。諦観していたわけではなくあまりにもリアリティがなくて想像もつかなかった〝結婚〟というものをまさか自分がして、イサミがしみじみと感じたのはいくら愛し合っていても昨日までは他人だった人を堂々と〝家族〟と呼べるようになった凄さだった。
婚姻届けの記入は勿論のこと、各種保険の手続きや名義変更もうんざりする程こなしたし、結婚式では大泣きとまではいかなかったとはいえ、小雨のような涙がずっと零れ続けて止まらなかった。それなのに、愛する人が家族になったのだと実感したのはもっと単純な、知り合いに彼を紹介した時に発した「夫です」の一言だった。
夫。夫か……。改めて噛みしめてみても、なんとも言いようのないふわふわした気持ちになる。擽ったいような、気恥ずかしいような、それでいて誇らしくて、心地良い。そんな柄ではないというのにだれ彼構わず「あいつ、俺の夫なんですよ」と触れ回りたくなる。要は、とてつもなく浮かれている。
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