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    なるちょ

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    なるちょ

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    大桐(桐生BD)

    とにかく、ただただ甘い大桐にしたかっただけ。
    2人のお互いを好きな気持ちが溢れていたら良いなと思いました。

    #腐が如く
    #大桐
    daitong
    ##大桐

    あなたの願いを叶えましょう現在の時間は6月17日0時を過ぎたばかり。

    昨日は珍しく早く帰宅することができたため、桐生さんお手製のカレーを食べ、一緒にお風呂……は入れなかったが、先に上がっていた桐生さんに髪を乾かしてもらってとても幸せな気持ちのまま一緒に布団に入ると、すぐに抱きしめて何度も口づけを交わす。
    日付が変わる少し前にした長めのキスは、日を跨いで触れ合っているという状況に興奮を隠すことができず、桐生さんが嫌がらないのをいいことに舌を潜り込ませてたっぷりと咥内を味わうように蠢かす。
    別に寝る前だとか、夜中だとか、そういうことで興奮しているわけではない。
    今日は特別で……大切な日だから。

    漸く唇を解放すると、息苦しさから酸素を求めて何度も呼吸を繰り返す桐生さんに、俺は体を起こすとその場に正座をする。
    「だ、いご?」
    段々と呼吸が戻り、落ち着いて俺に視線を向けるその瞳が戸惑いに満ちていて、それすらも愛しく今にも抱き潰してしまいたくなるが、ここは我慢だ。
    「桐生さん」
    正座のまま真面目な顔で声をかけると、よくわからないまま桐生さんも俺に向き合うように正座をする。
    何とも不思議な光景だ。

    「桐生さん。俺が今から何を言おうとしているのか分かっていませんね」
    「……ああ」
    視線を斜め上に向けて少し考えるも、思い当たることはなかったらしい。
    本当にこの人は、周りの人のことは気にする割に自分のこととなると無頓着というかなんというか。
    「では、とても大事なことを言いますから、よく聞いてくださいね」
    「……わかった」
    小言か説教か、何を言われてしまうのかと両手を膝に置いてキュッと唇を引き締める桐生さんの姿に、思わず吹き出してしまうそうになるのを堪え、下を向いて目を閉じ、呼吸と気持ちを整えてから改めて向き合う。
    「桐生さん」
    もう一度名前を呼びながらずい、と距離を詰めて互いの膝頭がぶつかりそうな位置まで移動すると、桐生さんの体が僅かに強張る。
    「な、何だ」
    膝の上でぎゅっと握られて少し汗ばんでいる両手をまとめてそっと握ると、手の甲にチュッと触れるだけのキスをしてから、彼にしか見せない溢れんばかりの笑顔で一言。
    「誕生日、おめでとうございます」

    「……は?」
    やっぱり。冗談ではなく本当に自分の誕生日を忘れていたようで、俺の言葉を理解するのに時間がかかっているようだ。
    こういうところも、可愛い人なんだよな。
    「生まれてきてくれて、俺と出会って、今も一緒に歩んでくれて、感謝と愛しさでいっぱいです。ずっとずっと桐生さんが大好きです。そんな桐生さんの誕生日を一番にお祝いできることが……」
    「ま、待て」
    更に続ける俺に頭が追い付かないらしく、慌ててストップをかけるが、こんなことで止まるくらいなら長年初恋を拗らせてなどいない。
    「ダメです。桐生さんが受け入れてくれるまで続けます。昔話から続けてもいいんですよ……桐生君?」
    半分脅しのように、俺の気持ちを長編で伝えようとするも、耳まで赤く染めて降参している桐生さんを見たらそれ以上続けることができなかった。
    結局、惚れた方が負けだから仕方ない。
    この負けという言葉がどうにも腑に落ちないが、今は置いておこう。

    「俺がこの日をどんなに待ち望んでいたかわかってくれました?」
    「自分の誕生日を忘れていて悪かった。しかし、大吾の誕生日を忘れてしまったならまだしも……」
    この期に及んでまだ分かっていないらしい。
    拗ねて唇を少し突き出してぶつぶつ言っている姿も可愛いと思ってしまい、いつもならここで俺が折れているところだが、今日は簡単には折れてあげることはできない。
    「はぁ……桐生さん。もし、桐生さんが俺の誕生日を盛大に祝おうと思ってくれていたのに、俺自身が自分の誕生日に興味がなくて覚えてもいなかったら、どう思います?」
    そこまで言ってようやくわかってもらえたようで、桐生さんが言葉に詰まる。
    「では改めて。桐生さん、誕生日おめでとうございます」
    「ああ。ありがとう大吾」
    どちらともなく、自然と唇が触れ合う。
    触れた場所から、俺の気持ちが少しでも貴方に伝わりますように。

    そろそろ、0時を過ぎて1時間が経とうとしていた。
    どおりで足が痺れているわけだ。
    普段正座をし慣れていないため、手を握ったまま桐生さんごとまた布団に横になる。
    「はぁ……恰好つかないですね」
    苦笑すると、俺の手から逃れた桐生さんが普段後ろへ流している俺の髪に触れて梳くように撫でながら、その手のぬくもりと同じくらいの優しさを含んだ顔で見つめると、微笑むように目を細める。
    その表情に、初めて恋を自覚した時のようにドキッと胸が高鳴る。
    「お前はいつもカッコいいぜ、大吾」
    「っ……」
    不意打ちはズルいですよ。
    そんな顔で、そんな触れ方で、そんな声で……桐生さんの全身から俺への気持ちが流れてくるのを感じる……ただただ、愛しいという気持ち。
    これは、先程の意趣返しか?
    「大吾にとってのカッコいいの定義がわからないが、例えお前がみっともないだとか情けないと思っているようなことでも、それが大吾なら俺にはカッコよく見えるぜ」
    「桐生、さん」
    「惚れているのは、お前だけじゃないということだ」
    俺は今どんな顔をしてる?
    あなたの前ではいつでもカッコいい自分でいたいのに、そんなことを言われてしまったら、どんな顔をすればいいのかわからなくなってしまう。

    今日、この瞬間、また桐生さんを好きになった。
    この人はどれだけ、何回俺を惚れさせるのだろう。
    好きな気持ちが溢れて、涙が出てしまいそうなのを堪えた顔で見つめ返すと、ぎゅう、と俺の頭を抱えるように抱きしめられ、しっかりと鍛えている胸元に顔が当たり、桐生さんの匂いに包まれて安心して目を閉じると、背中に手をまわして抱きしめる。
    あー。幸せだなぁ……て。
    「違う違う。今日は俺が桐生さんのお願いを聞く日なんですから」
    思い出したように顔を上げて近距離から桐生さんを見ると、ん? と微笑みを向けたままそっと髪を撫でられる。
    「誕生日はそういう日だったか?」
    「今日はそういう日なんです。したいこととか、逆にしてほしいこととか、欲しいものとか何かないんですか?」
    「今こうしてることが、したいことではあるんだがな」
    嘘は言っていないらしい。抱きしめて撫でる手の優しさも、満足そうな笑みも本物だとわかるから。
    「これだと、俺が嬉しいことになっちゃうじゃないですか」
    「嬉しいのか?」
    「当り前じゃないですか」
    「そうか。ならおとなしく撫でられてろ」
    フッといつもの桐生さんらしい顔に、また惚れ直す。
    カッコいいのに可愛いとか反則だろ。

    魅力に溢れたこの人を好きな人がたくさんいるから、いつも気が気じゃない。
    でも、少しは自信を持っていいのだろうか。
    桐生さんが機嫌よく鼻歌を歌いながら俺を抱きしめて撫でているのを見ると、そんなことを考えてしまう。
    いや、一応……一応じゃなくちゃんと恋人なのだから、自信も何もないだろと言われてしまいそうだが、こればっかりは仕方ない。
    ずっと好きだったのだから。
    子どもの時からずっと……あの日、長い長い初恋は終わりを迎え、新たに恋という名に変わり、今も俺の胸の中に生き続いている。

    恋人として、誕生日を二人で過ごすのは初めてだった。
    何だかんだ問題が起こったり忙しかったり、会うことすらできないこともあったが、今日は奇跡が起きて、一日休暇を取ることができた。
    いや、奇跡も何も、死に物狂いでいろいろ終わらせただけだが、そのせいもあってか、実はものすごく……眠い。
    ゆっくりと桐生さんと過ごすはずが、こんな心地の良いことをされたら、睡魔が……非常にまずいが、この人の腕の中で眠れる幸せに抗うことなど……。



    「やっと寝たか。まったく、ずいぶん無茶したらしいな、六代目」
    腕の中で規則正しい寝息が聞こえると、起こさない程度の声を漏らし、背中をトントンとリズムよく手を置いて更に深く眠れるように促す。
    大吾が体を壊すのではないかと心配する声を聞いていたので、無理をするなと言うつもりだったのだが、まさか俺の誕生日に時間を作るためだったとは……さすがに何も言えなくなってしまった。
    正直に言えば、体調を崩すようなことはしてほしくないが、本音はただ嬉しかった。
    俺のために一生懸命な大吾が昔から可愛くて、カッコよくて、とても愛しい。
    普段そういうことを口に出すことが中々できないが、一人の男として、恋人として、大吾の気持ちのどれだけ返せているのだろう。
    子どものような寝顔にキュッと胸が締めつけられるような気持ちになるのも、抱きしめるとあたたかくて愛しいと思う気持ちも、すべて大吾が好きだから。
    いつかこういう気持ちもちゃんと伝えたいとは思うが、素直に口にするにはまだ羞恥が勝ってしまうらしい。

    誕生日に欲しいものも、してほしいことも、既に叶っているというのに、真剣に聞いてくる大吾にまた胸がときめくのを感じた。
    「お前とこうしていることが、俺には何にも代えることができない幸せなことなんだぜ。大吾」
    ちゅ、と無防備な頬に口づけると、ほんのりと表情が嬉しそうなものに変わり、フッと口角が上がる。
    とりあえず今はしっかりと睡眠をとって、朝起きたら一緒に飯を食って、その後のことはこれから考えよう。
    まだ今日は始まったばかりだからな。
    このままで一日過ごすのも俺としては有りなんだが、形に拘る大吾はどうしても何かしたいのだろう。
    俺の幸せは、いつだってお前の横にあることを知ってほしい。
    高価な贈り物よりも、どんなに美味しいものよりも、大吾がいるかが大事なんだが……今日は、いつもより少しだけ素直になってみるのも悪くないかもしれない。

    END
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