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    なるちょ

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    錦桐(錦山BD)

    切ないお話に自分が耐えられなくなったので、END後に別END分岐がありますが、そちらは転生(錦山記憶有り)注意です。

    #腐が如く
    #錦桐
    kamTung
    ##錦桐

    今日という日にありがとう帰りにコンビニで買い込んだ缶ビールを2つ取り出して蓋を開けると、1つは机に置いたまま、もう1つを持ち上げて軽くぶつけるとようやく喉を潤す。

    「やっとお前に奢れたな」

    金を惜しまず、いつも面倒をみてくれた兄弟分を思い出す。
    いつも奢ってもらってばかりいたが、いつか俺が奢ると約束をしていた。
    本当ならこうやって毎年奢るつもりが……できなかった。
    現実を受け入れることが辛く、思い出すと立てなくなるのではないかと不安になったからだ。

    しかし、いい加減そんな弱さと別れを告げないと笑われてしまうと、今年は部屋で祝い酒を決めた。

    「錦は酒に詳しかったが、今日はビールで我慢しろよ」
    誰もいない空間にポツポツと言葉を投げる。
    昔を思い出したり、自分の近況を報告した後、あの爆発が起きてからどれくらいの時が経っただろう、とボーッと考えながら酒の量を増やしていくと、いつの間に寝てしまったのか……。
    目を覚ますと残っていたビールはぬるくなり、蓋を開けただけのビールは、そこにはなかった。

    ガバッと起き上がって直視するも、寝起きの頭は言うことをきかず、何が起きているのか考えることができない。
    「おい桐生。蓋開けたまま放置てしたからすっかりアルコールが飛んでんじゃねぇか。こんな不味い酒は初めて飲んだぜ」
    奢りだから文句は言わねえけど、と文句を言いながら笑って愚痴る……錦がいた。

    「どういう、ことだ」
    「は?お前が奢るって言ったんだろ。まさか店じゃなくて缶とは思わなかったけ」
    「そうじゃねえ!お前は、あの時……あの爆発で……」
    ああ、そうか。これは夢か、俺の作り出した願望か幻か。
    錦は、最後に見たままの若さでそこにいた。
    まるで、これが現実ではないと念を押されているようだった。
    「あんま難しく考えんなよ、桐生。お前の率直な気持ちはどうなんだ」
    そんなもの……。
    「嬉しいに決まってる……っ」
    「そうか。俺も、また桐生に会えて嬉しいぜ」
    俺の最後の言葉は嗚咽に消えた。
    耐えて我慢していたものが溢れ、俺は声を殺して泣いた。

    「錦、すまない」
    「ったく、今日は違うだろ、桐生」
    「そうだな。誕生日おめでとう、錦。生まれてきて、俺と一緒にいてくれて……錦といた日々は、俺にとって……何にも変えられない、かけがえがないもので……」
    ゆっくりと途切れながら話す俺に、錦は相槌を打ちながら聞いている。
    俺を抱きしめる腕も、背中を優しく擦る手も、宥めるような声も全部、俺が知っている錦そのもので、都合のいい夢だと分かってはいるが、抗う術のない俺が浸るには十分すぎる時間だった。

    「なぁ桐生。俺はずっとお前を見守ってる。これからも……この先も、ずっと。だからってわけじゃねえけど……幸せになれよ。そんで、お前がこっちに来たらまた酒を飲んで騒いで、バカやろうぜ」
    思い出に蓋をして忘れていた錦の笑顔が、目の前にある。
    俺は錦のこの顔が好きだった。

    分かったよ、錦。
    次にお前と酒を飲むその日まで、精一杯生きるとお前に誓う。
    その時は、また肩を組んで笑ってバカ話をしよう。

    覚悟を決めて顔を上げると、濡れた頬はそのままに俺も錦に向かって微笑む。
    それを見た錦は親指で涙を拭い、顔を寄せるとそっと触れるだけのキスを落とした……しかし、俺がその温もりを感じる間もなく世界は白に染まった。



    「錦!」
    同じ感覚にガバッと起き上がって周りを見回すも、錦がいた場所にはもう誰もいなかった。
    錦が不味いと言っていたビールは少しも減ることはなく、最初と同じ場所に置いてある。
    「そうか……そう、だよな」
    全てを理解した俺の目から流れた最後の雫は、静かに床に吸い込まれていった。
    拭われた涙の跡に、俺が気づくことはなかった。

    END





    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





    おまけの錦山視点。
    最後に桐生が目を覚ますシーンからの別エンド分岐。
    ※転生(錦山記憶有り)注意





    「錦!」
    同じ感覚にガバッと起き上がって周りを見回すも、錦がいた場所にはもう誰もいなかった。
    「にし、き……夢……ん?俺は、何の夢を……」

    「何だよ桐生。トイレ借りたくらいで怒んなよ」
    「は?……トイ、レ?」
    「さっき借りるって言っただろ。つってもお前だいぶ飲んでたからな。さては、寝てて聞いてなかったな」
    「あ、ああ……そう、だったな。すまん」
    まだ起きたばかりのためか、イマイチ分かっていないような顔をしながらも返事をする桐生。
    「よし!起きたんなら飲み直すぞ。たく、主役より飲むやつがあるか?まぁ、お前の金だからいいけどよ」
    やれやれとわざとらしく言うと、桐生も段々と思い出してきたのか、納得して頷く。

    桐生は寝ながらうなされて、うわ言のように俺の名を呼んでいた。
    起こさなければと思いながらも、下手に起こしてそのまま記憶が蘇ってはと思うとできなかった。
    俺自身も、衝撃を受ける形で全てを思い出したから。
    桐生と過ごした日々も、俺の裏切りも、最後の瞬間のあいつの顔や声も……。
    だから、桐生が起きそうになって慌ててトイレから出てくる振りをした。
    起きてもどうやら記憶は曖昧で、今はもう夢の内容も思い出せないようで安心した。
    まだ、桐生は知らなくていい……できるなら、このままずっと知らずに生きてほしい。
    何も知らずにいてほしいなど、ただの俺のエゴでしかないが。
    バレたら桐生怒るだろうな。はは、それはまぁ、そん時考えるか。

    「どうした?」
    「いや、何でも……」
    隣に腰掛けて近くで桐生の顔を見て、頬が濡れていることがわかった。
    桐生は気づいていないようなので、腕をのばして親指で涙を拭うと、そこでようやく桐生は自分が泣いていた事に気づいたらしい。
    慌てて自分で擦ろうとする腕を掴んで顔を寄せると、触れるだけのキス。
    「なっ……」
    「イヤか?」
    「イヤ……じゃ、ねぇ」
    耳や首まで赤い。
    初めてではないが、いつまでもこのウブな反応の桐生が愛しい。
    ついからかいたくもなるが、優しくしたいし、めいいっぱい愛したい。
    桐生と結ばれて、愛し合って……あの頃はこんな時がくるとは思いもしなかったが、今度は本当に大事なものを間違えたりしないし、自分の気持ちにも嘘をつかない。

    全てを思い出したあの時に、俺は決めた。
    桐生を本当の意味で、一番近くで見守ると。
    これからも……この先も、ずっと。
    一緒に幸せになろうな、桐生。

    「改めて、誕生日おめでとう、錦」
    「ああ。ありがとな、桐生」
    あの日と同じ笑顔。もう涙はいらない。
    そして触れた唇は同じように柔らかく、だが、確かな温もりを感じた。

    END
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    山瀬屋

    MOURNING(モブ→)錦(→)桐。無意識に愛憎極まってる感じ。桐は収監中で出てこない。普段は何ともないんだけど、雨音+桐への悔恨を夢に見て相乗効果でPTSDチックになる錦と、カリスマ錦山組長が見たくて…ていうか最終直系組長まで行くだけの実力もあるし、割と錦すき!な人もいっぱい居たのでは?とも思うんですけど、結局錦は自分の認めた相手とかからそれ貰えないと意味無いからって病んでそうなタイプかなって思っています
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    「親父、もうずっと籠もりっぱなしだぜ」
    「お前、様子見て来いよ」

    ドン、と背中を押されて、締め切られたドアの前で俺は立ち竦む。兄貴達は、もう30分も無えんだから早くしろ、と耳打ちをして蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまった。

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    冷えたナイフの切先のような隙の無さ。スマートに優雅なようで、その癖どこまでも鮮やかに暴力的だ。流麗で、そして苛烈な緋色の昇り鯉。その勢いは破竹だった。そしてそんな最中に、疑りそうな目が神経質に揺れている。その時折見せる不思議なアンバランスさは、妙に人を集めた。
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    山瀬屋

    MAIKING生存if錦(病み)が桐(健康)を殺そうとして出来ない地獄みたいな話の書きかけ
    ご都合if妄想。錦桐と言い張りたいけどカプ色薄め。ただ🌻と言うには重いし製造元がアレなのでアレです
    生存if錦(病み)が桐(健康)を殺そうとして出来ない地獄みたいな話①(仮題)こんこんと眠り続ける眼の前の男を、錦山は黙って見ていた。余り飲まないように気を付けていたはずだったが、半身に色濃く残った火傷の痕が摂取したアルコールに酷く熱を持つ。コップを手に取ろうとして、右手に力が入らず錦山は舌打ちをした。

    「ザマァねえな」

    思わず漏らした言葉は、男に言ったのか、自分自身に言ったのか、錦山自身にもよくわからなかった。眠りこけた男の顔はもちろん精悍な、髭も生えた成人男性だ、―そして若干年嵩でもある―、が、存外錦山にはあどけなく映った。最も男と錦山の年齢は変わらないのだから、その印象は些か錦山自身にとっても不思議に思えた。男は眉を顰めている事が多くこの弛緩した表情を起床時に見ることがあまり無いからなのか、それともこの男と幼少期から長く過ごしていたせいでそう感じるのか?少しの思考が巡る。しかし、まあ、どちらにしてもくだらない考えだと錦山は断じた。
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