ポッキーの日つんつん、と頬を突く感触がした。桐島さんと二人きりの部室だ。相手は決まっている。
一気に振り向きたい衝動を抑え、できるだけゆっくりと横を向く。気をつけないと桐島さんは小学生でもしないような悪戯をしかけてくるから。
あれだ。振り向くと指を突き刺してくるやつとか。
俺が引っかかると宝くじでも当たったみたいに手を叩き、踊り、大袈裟に喜ぶ。腹がたつので俺は黙って呪いをかける。好きなパンを目の前で逃す呪いだ。
まあいい。今日は腹立つ踊りは回避した。
「なにしてんすか?」
「今日はあれの日やろ」
用心しながら振り向いた俺の目の前には、茶色の棒がふらふらと揺れていた。ほんのり甘い香りもする。どこをどうみても日本で知らない人はいない棒型チョコだった。
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