婚姻届プププランドでは珍しく何日か雨が続いた後にやってきた晴れの日の事だった。
カービィが一枚の紙をもって嬉しそうに私の元にやってきた。
「メタナイト!見てみて!!」
紙の上部には手書きで“婚姻届”という文字が書かれている。
筆跡からして鏡の国に居る我が友人の現身、ブラックデデデに違いない。
「シャドーからこれ!教えてもらったんだ!!“ふうふ”になる2人の名前を書くんだって!!」
そう喜びながら紙を見せる恋人が可愛らしい…と思うのと同時に一つ疑問が浮かび上がる。
「シャドーから…ってことは……あの二人…。」
「“けっこん”したんだって!!“しょうにん”っていうところにサインして欲しいって言われたからサインもしたんだよ~♪」
そう言いながらニコニコしている恋人を横目に見てふと思い出す。
確か、異世界の文化で生涯共に暮らすと誓った二人が愛を確かめる方法の手段として“婚姻届”なるものが在ると書物で見たことがある。確かそこには……。
「確か…証人は二人ではなかったのか…?」
「ん?ダークがね、『アイツが知ったら俺たちより先に届けを出したいとかなんとか言ってすぐにサインしてくれなさそうだ。』とか言いながらブラックデデデに書いてもらってたよ~。」
「あいつ……。」
否定はできなかった。確かに私の現身の考える事だ。私が逆の立場だったら同じ事をしようとしたに違いない。いや、する。
「ブラックデデデに『おめでとう』って言われてた時の2人、とっても嬉しそうだったよ!!」
すてきだったな~うらやましいなぁ…と嬉しそうな表情と違い寂しそうに小さく呟く恋人の姿。
互いに冒険や仕事ですれ違いもある私たち、身を固める事も有りかと考えた時もあったが優しくて困った者を助けてあげたいという彼女の性格上、私のエゴの鎖で縛りつけるのも彼女に悪いと思い共に暮らしたいと言い出しにくかった。でも、彼女の考えは違ったのだな。
今、実際に友人お手製の紙を大事にしながら私の元へ持ってきてくれた…。その彼女の考えは?気持ちは…?
「カービィ……。」
いつもとは違う声色をした私に、はっとして振り向いた彼女。頬が少し赤い。
「私たちも……身を固めないか……?君が良ければなのだが……。」
私の気持ちを伝え終わった瞬間、彼女の目からは大粒の涙が零れていた。
「やっと…言ってくれたんだね……待ってたよ……。」
その時の彼女の姿は今まで見たどの姿よりも、綺麗だった。
その後、鏡の国に行き二人に現状を伝えた。
彼女の現身は彼女と同じように泣いて喜び、私の現身は「良かったじゃねぇか。」と感情を出さずに言いながらも表情は喜んでいるようだった。
二人に証人になって貰った後、私たちが住んでいる場所の(自称)国王であり、大事な共通の友人のところに向かった。
「ほぅ……婚姻届……面白い文化だな。」
相変わらず私達の友人は面白いものや知らない文化に興味津々だった。
「で…最後にここに住んでいる所のトップの者の印やサインが要るんだな…。」
「うん。デデデ、お願いできるかな?」
「当たり前だ。大事な友人同士の新たな門出、俺様がお祝いしてやる!!」
そう言いながら彼は私達の署名以上に大きなサインと、普段見る事が出来ない特別な印を押してくれた。
「おめでとう、カービィ!メタナイト!!二人に永久の祝福を!!!!」
城中からの温かな言葉や行動に驚きながらも、友人の心からの気持ちに私と彼女は微笑んだ。