【オークションは胃痛でしかない】他者から値段を付けられる。という行為には慣れていた。犬呼ばわり同様に、身体に宿した型落ちの魔術刻印と足りない魔力量。魔術師という商品として値札に割引きシールが何重にも貼られているのは自覚している。虚しさしかないが事実だ。
閉じ込められた檻を覆う布越しに、大勢の人の気配を感じ取る。司会者と思しき男性の声で、適当に僕の身体的特徴を開示する。共に、魔術師の素養あり。マスター資格者が付け足された。布を取れば一発でわかるだろうにと心の中で司会者を罵るものの、布越しから感じる人の囁きに熱量はないため、口から出るのは冷静な判断だ。
「バラされるのがオチだな」
バラされる......つまり、頭部のみだとか、心臓だけだとか、欲しいところだけを持って行く競りにしかならない。客の気分次第だろうが、その気配しかない。
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