さよなら、またあえるひまでさよならさよなら
2024年6月3日
15:44
「ドクターイエロー、運行停止が決まったって聞いたかい?リュウジくん」
不意の一言に、一瞬自分の時間が止まる。声の先に目線を向けると、そこには父のように見守ってくれていた人物がいた。
「もう、そんな時期なんですか。シンカリオンの運用もまた変わりますね」
あくまでも、冷静に返す。
「そうだね。ちょっとさみしくなるね。今まで名古屋支部にはシンカリオンはふたつあったから」
「そうですね…このことはシマカゼには?」
お別れを告げないといけないのは自分だけじゃない。後輩もだ。そう思うと同時に返事がくる。
「これからだよ」
「では、俺からシマカゼには伝えます。あとはそうだな…ハヤトとセイリュウは自力でラストランの最前まで来そうだな…」
「じゃあ、シマカゼくんによろしくね」
「はい」
超進化研究所のジャケットが重く感じる。これで、「父親」に直接関係するものを無くすのは2度目だ。正確には、完全になくなるのは死以外では初めてかもしれない。
後輩に全て譲ったつもりだったのに、まだまだ現役の考えがあった自分に驚いた。
「500系こだまも、ドクターイエローも、お疲れ様ってやつか」
つぶやいた一言は、かつての恩師と愛機をいたわるような言葉だった。自分でも驚いてしまう。
交代はこんな静かな形でちょうどいいのだ。疾風のように駆け抜けるのはもう、良いのだ。
強がりにも近いそれを抱えて、未来に向けた一歩を踏み出した。