統合失調症になっちゃったロス「ローレル、大丈夫だよ。落ち着いて…」
ローレル「違うよ、ロス。違うよ。俺が悪いってみんなが言うんだ。頭の中でずっと、ずっと、俺を虐めるんだ」
ロス「そっか…それはすごく怖いよね」
ロスが俺の手を優しく握る。俺はもっと強く握り返した。
ローレル「…うん。だからさ、ロスは悪くないからね?俺のせいでごめんね?」
ロス「そんなこと言わないで。ローレルは何も悪くないよ。悪いのはあいつらなんだから。もう大丈夫。俺が全部やっつけてあげるから」
ローレル「……ありがとう」
ロス「ローレル……。なぁ、キスしていい?」
ローレル「え!?バカ!……ここ外だし……恥ずかしいだろ……」
ロス「じゃあ……これだけ」
そう言ってロスは俺の頬にキスをした。
少しだけ頬に触れる唇がくすぐったい。
ローレル「……/////」
ロス「可愛いよ、ローレル」
ローレル「うるせぇ!」
ロス「はいはい」
それから俺たちは、2人で一緒に帰った。
家に帰ってからも、その日あったことをたくさん話した。
次の日からも、いつも通りの生活が続いた。
朝起きて、ロスと一緒に学校に行って、夕方になったら家に帰る。
毎日毎日それを繰り返しているうちに、いつの間にか1年という月日が経っていた。
1年の間に、いろんなことがあった。
ロスのお母さんとお父さんの離婚が成立して、お母さんの実家で一緒に暮らすことになったり。
そして、俺が頭の中のみんなから虐められることもなくなってきた頃。
ローレル「ねぇ、ロス。明日って何の日だっけ?」
ある日、俺はふと思い出してロスに聞いてみた。
すると、ロスの顔色が一瞬にして変わった気がする。
でも、すぐに元の表情に戻っていた。
ロス「……何かの記念日だったかな?」
ローレル「うーん……。なんか忘れてる気がする」
ロス「まぁ、気になるなら明日にでも調べればいいよ」
ローレル「そうだな……ありがと」
ロス「どういたしまして」
それからまたいつも通りの日常に戻った、はずだった。……あれ?おかしいな……。
次の日の朝になっても、やっぱり俺は大切な事を忘れたままでいる。
それがどうしても気になってしまって、今日一日ずっとモヤモヤしたまま過ごしていた。
放課後になり、帰ろうとした時、先生に声をかけられた。
先生「ロス君、ローレル君。ちょっとこっち来なさい」
ロス・ローレル「はい」
2人揃って返事をして職員室まで行く。
そこで先生から言われたことは、思いもしなかったことだった。
先生「あのね、実はロス君のお母さんが仕事の関係で遠くに引っ越すことになったの。それでね、ロス君は転校することになっちゃったんだけど、ローレル君はこの学校でそのまま過ごして欲しいと思ってるの。だから、ロス君とはお別れすることになるけど、今まで通り仲良くして欲しいわ」
ローレル「え……」
突然のことに頭が追いつかない。
そんな、急に引っ越しなんて……。
ロス「嘘だろ、先生!?」
先生「ごめんね、ロス君。本当は昨日の内に言わなくちゃいけなかったんだけど……」
ロス「なんでですか!?」
先生「……本当に、急遽決まったことらしくて。私にも連絡が来たのはついさっきのことなのよ」
ロス「…………」
先生の言葉を聞いて、ロスは無言のまま俯いてしまった。……こんなの、酷すぎる。
ローレル「先生!お願いします!なんとかなりませんか!?」
先生「ローレルくん……」
必死に懇願するが、先生は困った顔をするだけだった。……仕方がないのか。だって、これはもう決まってしまったことだから。
ロス「わかりました。先生には迷惑かけられませんから。……俺たちはこれからもあの家で暮らします。母さんが居なくてもなんとかします。お願いします。この学校に通わせてください」
先生「え……そんなこと無理よ!あなた自分が何歳だと思って――」
ロス「関係ありません。俺たちは……俺は、ここにいたいんです」
先生「でも!」
ローレル「先生!」
俺もロスに続いて口を開く。
ローレル「俺からもお願いします。俺もこの学校を卒業したいです。……それに……俺はロスと一緒にいたいから」
そう言って頭を下げる。……しばらくして、諦めたようにため息をつく音が聞こえてきた。
先生「はぁ……。仕方ないわね、そこまで言うなら先生からお母さんにうまく説明しておくわ。ただし、出席は怠らないようにね」
ロス&ローレル「はい!」
先生「……ふふっ、本当に仲がいいのね。あーあ、先生も彼氏欲しいな」
ローレル「なっ……こんなの彼氏なんかじゃないです!!」
先生「あら、そうなの?てっきりラブラブカップルだと思ってたわ♡」
ローレル「〜っ////」
ロス「じゃあ、先生。また明日会いましょう」
先生「えぇ、2人とも元気でね。……あと、ロス君」
ロス「はい?」
先生「ローレル君の事、大事にしてあげなさいね。」
ロス「先生……」
二人は小さい声で何か話しているが、俺には聴き取れなかった。
ロス「……もちろんです。今日は本当にありがとうございました」
そして、2人で一緒に学校を出た。……これからどうなるんだろう。
不安でいっぱいだったけど、俺はロスの隣にいるだけで安心できた。
ローレル「ロス……」
ロス「ん?」
ローレル「……ありがとう……」
ロス「こっちこそ、ありがとう」
そう言ってロスはまた俺の頬にキスをした。
俺はびっくりして、恥ずかしくて……そして、何だか悔しくて、仕返しにロスの頬にキスをした。