冒頭書き始めた目覚めるようなオーロラと、沸き立つようなアンティークゴールドは、マレウスに自覚と威厳、そして、健やかさを願う、じんわりとあたたかな愛情をもたらしてくれる。
ラズベリーのようなその赤い光は、人生の導そのもの。そして、降り注ぐような愛に包まれた、揺りかごでもあり、止まり木でもあった。
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かつて、茨の谷の隣に栄えた、人の子らの王国。マレウスはおばあさまの目を盗んでは、よく覗き見た。そこで暮らす人々は活気に満ち溢れており、細かなことで一喜一憂をし、ひたすらに愛し、その短い生涯を駆け抜けているように、マレウスには思えた。茨の谷に流れる、厳かで、ゆったりとした、悠久にも思える時間。我が一族が治める限り、この時間は悠久でなければならないのだと、マレウスは当たり前に思った。
かの国の、由緒ある一族の末裔であるあの子は、混じり気のない、純粋な"人の子"であるが、纏う空気はゆったりと、茨に囲まれたこの地に馴染む。
一方、揺るぎのない力をこの地から与えられ、存分に発揮してきた妖精族の血を引くあの子は、いつか見た隣国の彼らの様に、与えられた生を精一杯生きている。
リリアが自分の下にこの二人を連れてきた意義を、マレウスは感じ取る。