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    nanana

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    構ってもらえなくて拗ねてる年下彼氏の話

    #雷コウ
    ##ハンセム

    珍しく朝まで目覚めなくて慌てた(雷コウ) あらかじめ仕事が忙しいからと断られていたのも本当で、ソシャゲのイベ最終日だからそちらに集中したかったのも本当だった。だからと言って本当にここまで放置されるとは思ってもみなかった。
     イベントの終了時刻、結果集計待ちの画面が表示されたのを確認して携帯を投げ捨ててベッドに転がった。順位はこの部屋に来る前に想定していたよりも随分良いものになっているだろう。
     自分が携帯を眺め続けている間、同じようにパソコンに向かって何かを叩き続けているカミサマの背中を雷我はベッドの上から眺める。出張で同じホテルに泊まるときはいつの間にか暗黙の了解のように雷我がこの男の部屋を訪れるようになっていた。いつからだったとか、どうしてだったかとかはもはや忘れた。あるのは毎回そうやって体を重ね続けた事実だけ。
     セックスしたかったのは本当だ。こちらは健全な性欲有り余った高校生なのだ。そんな理由もあるし、絶対に他人には、特にこの男には言いいたくないのだけれども、情事の最中にいつだって上から目線で偉そうで小姑みたいなこの男が少し甘えた様に縋ってくるのがたまらなく好きだった。本当に認めたくもないのだけれど。
     仕事が忙しい、と断られた時点で無理矢理事に及ぼうなんて思わなかった。がっついているとも思われたくもないし、仕事が理由で断ることなんて初めてだったからよっぽどなのだろうと思ったからだ。
     まぁ、本当にこんなにも一切合切存在を無視されるとは思っても見なかったのだけれど。別に構わないけれど。一つも怒ってはないけれど。寂しいとか絶対にないけれど。
     キーボードを叩く音がゲーム音の消えた静かな部屋に響く。部屋から音が消えたことにも気が付かない集中力。横に置かれているカップのコーヒーはいったい何杯目なのか。そういうものを飲んでいるから眠れなくなるのではないか。
     姿勢よく伸ばされた背中。冷房の風に吹かれてふわふわと揺れるミルクティー色した甘そうな柔らかい髪の毛。自分の固い髪の毛とは全然違って、初めて触れた時は驚いた。
     あれに触りたい。
     静かな空間に耐え切れず眠気が襲う、我慢することなくくわと一つ欠伸をして瞳を閉じた。まどろみの中落ちていく瞼、男はまだ微動だにせずパソコンを叩き続けていた。

    ***

     コーヒーを口にしようとカップを握ったところで空になっていることに気が付いた。一つ伸びをしてパソコンから目を離す。ん、と小さな寝言が聞こえてきたところでそう言えば部屋に自分以外の人間がいたことを思い出した。
     振り向いて人のベッドで寝こけている男の顔を見た。傍若無人、跳ねっ返りが強くて好戦的、普段は可愛げの欠片もない男だけれども寝顔だけは高校生のあどけなさを残す。
     何をしにこの男はこの部屋に来たのか。性欲解消に来たのかもしれないが、それなら相手ができないと言った時点で帰るはずだ。意味もなくこの部屋に居座っているのは何故なのだろう。考えたけれどまるで正反対のこの男の思考などわかるはずもない、そう結論付けてすぐに考える事をやめた。
     布団もかけずにまぁ。雷我の好みに合わせてクーラーの設定温度を下げているこの部屋。さすがにこのまま寝させて風邪でもひかれたらたまらない。
     凝り固まった体をほぐすように関節を伸ばしながら椅子から立ち上がる。節々からやたらといい音が聞こえたのは加齢のせいではないと信じたい。
     自分より大きな身体をした年下の男に布団をそっとかけた。獰猛な肉食獣の瞳は閉じられていつもより威圧感が無い。なんだかそれが珍しくて眩しい金色のたてがみに手を伸ばす。触れたそれは本人の性格に似たのか固くて真っ直ぐだ。
    「……ん、」
     触れられた感触に気が付いたのだろう。肉食獣が目を覚ます。まだ夢見心地のその瞳はぼんやりと空を彷徨って、そしてこちらに焦点を合わせた。
    「……しごと、おわったのか?」
     終わっていない、というよりも早く腕が伸びてこちらの体をベッドに引きずり込む。待ってと制止をかけようと開いた口は、うなじに落とされた口づけのおかげで言葉ではなく小さな悲鳴を発した。
     抱き枕のようにすっぽりと背後から腕の中に納められて簡単には逃げ出せない。ちゅっちゅとついばむ様に落とされる唇がうなじから頭の方へ登っていく。柔らか、と小さく呟く声がして、やがて小さな寝息が聞こえ始める。
     背中越しに伝わる体温と、とくとくと刻まれる鼓動。無理矢理その腕の中から出ることは出来る。けれどそれをすればこの男を起こしてしまうだろう。
     どうしようかと悩んでいると不意に欠伸が漏れた。身体全体が重く温かくなり、徐々に重たくなる瞼に。迫りくる眠気が我ながら珍しいなと思う。
     仕事が終わってはいないし電気もつけっぱなしなのだけれど。
    どうせまた朝早くに目覚めてしまう。起きてまた続きをすればいいだけだ。そう結論付けて、コウは抱きかかえられたままゆっくりと心地よい眠りに落ちた。
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    nanana

    DONE付き合ってない雷コウ。
    次に会った時には、プレゼントされたのだというもっとよく似合うグレーがかった青のマフラーが巻かれていてどうしてか腹立たしかった。
    吐き出した冬を噛む(雷コウ) 以上で終了だ、と男が持っていた資料を机でトントンとまとめながら告げた時、窓の外には白い雪がちらついていた。数年に一度と言われる寒波は、地元である高知にも、今現在訪れている福岡にも珍しく雪をもたらしている。それがどこか新鮮で少しだけ窓の外をぼんやりと眺める。男もつられたように同じように視線を向けた。
    「雪か、どうりで寒いわけだな」
     二人きりの福岡支部の会議室。ちょうど職員の帰り時間なのだろう、廊下の方からも賑やかな声がする。
    「こんな日にわざわざ福岡まで来てくれた礼だ。もつ鍋でもご馳走しよう」
     こんな日に、というのはダブルミーニングだ。一つはこんな大寒波の訪れる日に、という意味で、もう一つはクリスマスイブにという意味だ。雷我がこの日を選んだことに深い意味はない。たまたま都合のよかった日にちを指定したらそれがクリスマスイブだっただけの話だ。夜鳴のメンバーと予定したパーティの日付は明日だったからクリスマスにはイブという文化があるのを忘れていたせいかもしれない。
    2302

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