nanana
DONE10年後くらいの水と油。年下の男の家にお泊りした朝のこと。付き合ってる。
心許りの疵ばかり(雷コウ) 昼すぎより雷、土砂降りの雨となるでしょう。
流れる朝のニュースに目の前で明太子を頬張る男が窓の外の快晴を見上げながら訝し気に眉を寄せた。秋の空は変わりやすい。
この男と出会ってから十年ほど、この男を抱くようになってから五年とちょっと、それからこうやって自宅に泊めて一緒に朝ご飯を食べるような仲になってから三年ほど。
過去の自分がこの光景を見れば驚くのだろうが、今の自分だっていまだにこの光景を見慣れず新鮮に驚いてばかりだ。パンとコーヒーで食事を済ませそうな風貌のこの男が好む朝食は白米と明太子。この男がうちに泊まる日には必ず冷蔵庫に明太子を入れている。この男の為に買い置いているなどとは思われたくは無いからこの男が来る前日の夜には必ず封を開けて一つ食べる。明太子を食べれば翌日はこの男に会えるのだ、と訳の分からないことを思うようになってしまったことなど誰にも知られたくはない。
1303流れる朝のニュースに目の前で明太子を頬張る男が窓の外の快晴を見上げながら訝し気に眉を寄せた。秋の空は変わりやすい。
この男と出会ってから十年ほど、この男を抱くようになってから五年とちょっと、それからこうやって自宅に泊めて一緒に朝ご飯を食べるような仲になってから三年ほど。
過去の自分がこの光景を見れば驚くのだろうが、今の自分だっていまだにこの光景を見慣れず新鮮に驚いてばかりだ。パンとコーヒーで食事を済ませそうな風貌のこの男が好む朝食は白米と明太子。この男がうちに泊まる日には必ず冷蔵庫に明太子を入れている。この男の為に買い置いているなどとは思われたくは無いからこの男が来る前日の夜には必ず封を開けて一つ食べる。明太子を食べれば翌日はこの男に会えるのだ、と訳の分からないことを思うようになってしまったことなど誰にも知られたくはない。
nanana
DONE割とドレッシングになってる水と油の事後の朝の話。多分あと50年くらいしたら素直に言える気もする。
言葉を飲み込んで今日も眠る(雷コウ) 初夏の太陽が昇りきる前の白さ。そんな光が閉め損ねたカーテンから零れる早朝。自然と開けられた瞼はやたらと軽かった。いつもなら瞼と体はだけは重いというのにそれ以上意識を落とすことは許されない、そんな重たいばかりの朝を迎えるというのに今日は違う。きちんと大多数の人々が目覚める時間帯まで眠れたばかりかおまけに気分もいい。
隣で寝ていた男を起こさぬようにコウはゆっくりとベッドから抜け出す。半端に空いていたカーテンを全開にして光を取り込んだ。明るい光が部屋中を充満してもベッドの中の男はすやすやと起きる気配もない。元々朝に弱い男だ。
年下の癖に背が高くて、体格も良くて、好戦的で、それから肉食獣のような男である。平素腹立たしいことばかりの男ではあるが、眠っているのを見るのは目の前で腹を出して眠る野生の獣を見ているようで非常に愉快だ。
1430隣で寝ていた男を起こさぬようにコウはゆっくりとベッドから抜け出す。半端に空いていたカーテンを全開にして光を取り込んだ。明るい光が部屋中を充満してもベッドの中の男はすやすやと起きる気配もない。元々朝に弱い男だ。
年下の癖に背が高くて、体格も良くて、好戦的で、それから肉食獣のような男である。平素腹立たしいことばかりの男ではあるが、眠っているのを見るのは目の前で腹を出して眠る野生の獣を見ているようで非常に愉快だ。
nanana
DONEわじきさんガチ恋の少女の幽霊に憑りつかれたカミサマの話。年下の人の無自覚片思い。
波打ち際の白昼夢(雷コウ) 柔らかな波の音に包まれて夜の闇に意識を落とした。周回中だった携帯の端末は落ちてく意識ギリギリで充電に繋ぐことができたかは目覚めた時に結果発表だ。海に一番近いこの部屋。干したてのシーツの香りと高知のそれとは違う透き通るような水の香り。雷我は宴会の熱の冷めきらないシャークハウスで眠りについた。
こうやってたびたびシャークハウスにD4のメンバーで泊まるようになったのは、サマービートの一件で駄目な大人たちが味をしめたせいである。半年に一回くらいの頻度でこうやって交流会と称して沖縄に呼び出されてはこうやって宴会を繰り広げる。二回、三回とお世話になってしまえばこの家にも慣れたものだ。毎回律義に行われる部屋割りのくじ引きで雷我が今回引いたのはこの海に近い石垣真那人の部屋だった。
3264こうやってたびたびシャークハウスにD4のメンバーで泊まるようになったのは、サマービートの一件で駄目な大人たちが味をしめたせいである。半年に一回くらいの頻度でこうやって交流会と称して沖縄に呼び出されてはこうやって宴会を繰り広げる。二回、三回とお世話になってしまえばこの家にも慣れたものだ。毎回律義に行われる部屋割りのくじ引きで雷我が今回引いたのはこの海に近い石垣真那人の部屋だった。
nanana
DONEアンタが恋愛的に気になるをうっかり言い間違えた男の話。春の嵐が告げる(雷コウ) 厚手のコートを羽織っていても身をすくめて歩かねばならないほどの寒さはこの頃めっきり少なくなった。特に今日は風は冷たいとは言え降り注ぐ日光が温かい。ずっと必需品だった手袋を置いてコウは福岡から広島の地へと飛び出した。歩く街のあちこちで春の匂いがする。
柔らかな陽の光を浴びながら辿り着いた広島本部の会議室。会議開始時間ギリギリにたどり着いたものだからそこには残りのHEADが三人そろっていると思っていたのに人影は一つしかい。窓際の一際日の当たる席に机に突っ伏すようにして眠っていた金色の頭がドアの開いた音に反応をして顔を上げる。
男は寝起きのぼんやりとした表情のまま眉を寄せる。この男が自分を嫌っているのは知っているがそこまで露骨に態度を変えなくてもいいのでは、とは思うもののこのわかりやすさは実はそこまで嫌いではない。他の人たちは、と聞くよりも先に男が眠そうに口を開いた。
2053柔らかな陽の光を浴びながら辿り着いた広島本部の会議室。会議開始時間ギリギリにたどり着いたものだからそこには残りのHEADが三人そろっていると思っていたのに人影は一つしかい。窓際の一際日の当たる席に机に突っ伏すようにして眠っていた金色の頭がドアの開いた音に反応をして顔を上げる。
男は寝起きのぼんやりとした表情のまま眉を寄せる。この男が自分を嫌っているのは知っているがそこまで露骨に態度を変えなくてもいいのでは、とは思うもののこのわかりやすさは実はそこまで嫌いではない。他の人たちは、と聞くよりも先に男が眠そうに口を開いた。
nanana
DONE過去に体の関係があった二人の未来の話。残り香が晒す傷跡(雷コウ) 水面に浮かんだ泡のような、明け方の葉についた露のような、そんな夢とも紛うような一時の事。十八から二十歳になるくらいの間、嫌いな男を抱いていた時期があったのだ。
どうしてそれが始まっただとか、どうして一夜の過ちで終わらせなかったのだとか、そういうものはもはやわからない。ただ、確かにそんな時期が存在していた。
それが終わったのは、そう、あれは二十歳の誕生日の事。二十歳の誕生日、という自分にとってそこそこに大きなイベントだったから記憶している。丁度誕生日がHEADばかり集められた会議だったのだ。恒例になった会議の前日の夜のホテルでの逢瀬。いつものように適当に抱いて、適当に眠りについた誕生日当日の朝。目覚めたときにはベッドの隣は空だった。触れてみてもそこにぬくもりは無く、とっくの昔に男はこの部屋を出て行ったのだと知る。目覚めた時にいないのは初めての事でもない。それなのにどうしてか今日は心がざわつく。いつも通りにベッドサイドの机に置かれていたホテル代金がいつも以上に他人行儀に見えた。
1835どうしてそれが始まっただとか、どうして一夜の過ちで終わらせなかったのだとか、そういうものはもはやわからない。ただ、確かにそんな時期が存在していた。
それが終わったのは、そう、あれは二十歳の誕生日の事。二十歳の誕生日、という自分にとってそこそこに大きなイベントだったから記憶している。丁度誕生日がHEADばかり集められた会議だったのだ。恒例になった会議の前日の夜のホテルでの逢瀬。いつものように適当に抱いて、適当に眠りについた誕生日当日の朝。目覚めたときにはベッドの隣は空だった。触れてみてもそこにぬくもりは無く、とっくの昔に男はこの部屋を出て行ったのだと知る。目覚めた時にいないのは初めての事でもない。それなのにどうしてか今日は心がざわつく。いつも通りにベッドサイドの机に置かれていたホテル代金がいつも以上に他人行儀に見えた。
nanana
DONE高校卒業後。雷コウ付き合ってるのを知っているノラ君の話。
年上の人は不在。
春によるさざなみ(雷コウ) まるで合成写真のようだと、ノラはメニュー表で顔を隠しながら笑いをこらえる。笑っているのがばれてしまえば悪いこの男の機嫌がさらに降下することは間違いない。拗ねて、帰る、と言われては元も子もない。
淡いアイボリーを基調とした可愛らしい内装に、壁際に伸びているタワー。あちこちに散らばった玩具と駆け回りながら自由に過ごすネコたちがいるノラのお気に入りのネコカフェ。そんな空間に押し込められて居心地が悪そうに身を小さくしている我らがヘッドは滅多にみられるものではない。
ただ居心地が悪かったのは雷我だけではないと見える。雷獣大将と呼ばれる威圧感は、どうやらもう一回り体の大きなネコ科の獣にも似ているのだろう。いつもは人懐こく駆け寄ってくるはずのネコですら遠巻きにこちらをうかがっている。自由の象徴のような彼らも委縮することだってあるのだ。
2367淡いアイボリーを基調とした可愛らしい内装に、壁際に伸びているタワー。あちこちに散らばった玩具と駆け回りながら自由に過ごすネコたちがいるノラのお気に入りのネコカフェ。そんな空間に押し込められて居心地が悪そうに身を小さくしている我らがヘッドは滅多にみられるものではない。
ただ居心地が悪かったのは雷我だけではないと見える。雷獣大将と呼ばれる威圧感は、どうやらもう一回り体の大きなネコ科の獣にも似ているのだろう。いつもは人懐こく駆け寄ってくるはずのネコですら遠巻きにこちらをうかがっている。自由の象徴のような彼らも委縮することだってあるのだ。
nanana
DONEお付き合いしている雷コウin一人暮らしをしている年下彼氏の部屋。微睡む白(雷コウ) 中途半端に閉じられたカーテンの隙間から僅かに朝日が差し込む。我ながらよく眠れた方だと思いながら確認した端末は午前五時を示す。グレー色の、まだ薄暗い部屋のシングルベッドに男二人。狭いベッドで床に落ちたら困るとぴったり寄り添ったまま眠って、目の前に見えるのは昨夜自分を抱いていた男の体。
一番寒い季節は超えたもののまだ朝晩は肌寒い。それなのに面倒だからとパンツだけ履いて布団をかぶって眠りに落ちた男は当然のことながら朝になっても裸のまま。起き抜けでまだ霞がかかったままの頭で目の前の体を見つめた。持って生まれた体格とほどよくつけられた筋肉、こうであればよかったなと思うものをこの男は持っている。
ぺた、ぺたと掌で胸に触れる。規則正しい寝息に合わせてそこも上下に揺れていた。衣服によって日に焼けないそこは生来の肌の白さがよく目立つ。ぺたり、ぺたりと触れる箇所を下におろして、胸の下からお腹のあたりのでこぼこをなぞる。うっすらと割れている腹筋は、敦豪にも付き合ってもらい筋トレまでしたコウにはどうしても手に入らなかったものだ。
1006一番寒い季節は超えたもののまだ朝晩は肌寒い。それなのに面倒だからとパンツだけ履いて布団をかぶって眠りに落ちた男は当然のことながら朝になっても裸のまま。起き抜けでまだ霞がかかったままの頭で目の前の体を見つめた。持って生まれた体格とほどよくつけられた筋肉、こうであればよかったなと思うものをこの男は持っている。
ぺた、ぺたと掌で胸に触れる。規則正しい寝息に合わせてそこも上下に揺れていた。衣服によって日に焼けないそこは生来の肌の白さがよく目立つ。ぺたり、ぺたりと触れる箇所を下におろして、胸の下からお腹のあたりのでこぼこをなぞる。うっすらと割れている腹筋は、敦豪にも付き合ってもらい筋トレまでしたコウにはどうしても手に入らなかったものだ。
nanana
DONE付き合ってない雷コウ。次に会った時には、プレゼントされたのだというもっとよく似合うグレーがかった青のマフラーが巻かれていてどうしてか腹立たしかった。
吐き出した冬を噛む(雷コウ) 以上で終了だ、と男が持っていた資料を机でトントンとまとめながら告げた時、窓の外には白い雪がちらついていた。数年に一度と言われる寒波は、地元である高知にも、今現在訪れている福岡にも珍しく雪をもたらしている。それがどこか新鮮で少しだけ窓の外をぼんやりと眺める。男もつられたように同じように視線を向けた。
「雪か、どうりで寒いわけだな」
二人きりの福岡支部の会議室。ちょうど職員の帰り時間なのだろう、廊下の方からも賑やかな声がする。
「こんな日にわざわざ福岡まで来てくれた礼だ。もつ鍋でもご馳走しよう」
こんな日に、というのはダブルミーニングだ。一つはこんな大寒波の訪れる日に、という意味で、もう一つはクリスマスイブにという意味だ。雷我がこの日を選んだことに深い意味はない。たまたま都合のよかった日にちを指定したらそれがクリスマスイブだっただけの話だ。夜鳴のメンバーと予定したパーティの日付は明日だったからクリスマスにはイブという文化があるのを忘れていたせいかもしれない。
2302「雪か、どうりで寒いわけだな」
二人きりの福岡支部の会議室。ちょうど職員の帰り時間なのだろう、廊下の方からも賑やかな声がする。
「こんな日にわざわざ福岡まで来てくれた礼だ。もつ鍋でもご馳走しよう」
こんな日に、というのはダブルミーニングだ。一つはこんな大寒波の訪れる日に、という意味で、もう一つはクリスマスイブにという意味だ。雷我がこの日を選んだことに深い意味はない。たまたま都合のよかった日にちを指定したらそれがクリスマスイブだっただけの話だ。夜鳴のメンバーと予定したパーティの日付は明日だったからクリスマスにはイブという文化があるのを忘れていたせいかもしれない。
nanana
DONE付き合ってない雷コウ。愛も執着も受け取れない大人と聞き分けなんてよくなりたくない子供。生温い熱は気持ちが悪い(雷コウ) こういうのは困ると伏し目がちに小さく発せられたその声は、手酷く抱いたどの夜の後よりも弱弱しかった。
風呂上がりの濡れ髪と温まって血色のよくなった真っ白な肌、羽織られたバスローブの胸元の襟を両手で掴んで胸元を開いて見せるそこには多数の鬱血痕が散らばる。
散々鳴かせて焦らしてわけがわからなくなっているのをいいことに、胸元に普段は男から拒絶されているキスマークを付けた。一つ付けたらどうにも止まらなくて、二つ、三つ、片手じゃ足らない回数男の薄い肌を吸い上げて、見下ろして胸に広がったのは確かに満足感。それが何を意味するかなんてとっくに自分でもわかっていた。
責めるように見せつけてくる白く湿った平たい胸に広がる赤い花弁がいやに扇情的で困る。体温が僅かに上がるような感覚に蓋をする、もうこの目の前の細っこい男の体力はゼロに近い。
1489風呂上がりの濡れ髪と温まって血色のよくなった真っ白な肌、羽織られたバスローブの胸元の襟を両手で掴んで胸元を開いて見せるそこには多数の鬱血痕が散らばる。
散々鳴かせて焦らしてわけがわからなくなっているのをいいことに、胸元に普段は男から拒絶されているキスマークを付けた。一つ付けたらどうにも止まらなくて、二つ、三つ、片手じゃ足らない回数男の薄い肌を吸い上げて、見下ろして胸に広がったのは確かに満足感。それが何を意味するかなんてとっくに自分でもわかっていた。
責めるように見せつけてくる白く湿った平たい胸に広がる赤い花弁がいやに扇情的で困る。体温が僅かに上がるような感覚に蓋をする、もうこの目の前の細っこい男の体力はゼロに近い。
nanana
DONE付き合ってる二人。ソロコレのときのプリンの話。
カードとプリン(雷コウ) ギリギリのところでシャワーを浴びてそのまま一瞬寝落ちていたらしい。意識を取り戻したときには真っ暗にされた部屋に一人きりで、シャワー室から水音が響くだけ。入れ替わるようにしてあの男はシャワーを浴びに行ったのだろうから寝ていたのはそんなに長い時間ではなかったのだと推測する。
気怠く重たい体を引きずって備え付けの冷蔵庫を開ける。今日はしつこく鳴かされたせいだろうか、酷く喉が渇いてせっかく準備していた水も飲み干してしまった。水分を含んだはずなのにケホと漏れ出た咳はカラカラに乾いていて、どうにも喉の調子が良くない。明日は講演の予定が入っていた。のど飴でも舐めればマシになるのだろうか。
残りの体力と明日のスケジュールとを天秤にかけて、十秒ほど思案してから着ていたバスローブを脱いで、朝に着る予定にしていた服に手をかける。確かホテルを出たすぐのところにコンビニがあったはずだ。
2165気怠く重たい体を引きずって備え付けの冷蔵庫を開ける。今日はしつこく鳴かされたせいだろうか、酷く喉が渇いてせっかく準備していた水も飲み干してしまった。水分を含んだはずなのにケホと漏れ出た咳はカラカラに乾いていて、どうにも喉の調子が良くない。明日は講演の予定が入っていた。のど飴でも舐めればマシになるのだろうか。
残りの体力と明日のスケジュールとを天秤にかけて、十秒ほど思案してから着ていたバスローブを脱いで、朝に着る予定にしていた服に手をかける。確かホテルを出たすぐのところにコンビニがあったはずだ。
nanana
DONE初恋の子供とずるい大人地獄の底で待ち合わせ(雷コウ) 彼と初めて肌を重ねたのは一年ほど前、彼が十八の年のこと。無理矢理から始まった関係も、どうしてか今は合意の上に成り立っている。有無を言わさず強引にされているのが楽だった。決してこちらを認めない相容れない視線で刺されるのが息苦しくて心地よかった。devaのHEAD、先生、そしてカミサマ。そのどれでもない天神コウというただ一人の矮小な人間として扱われることにどこか安堵を覚えていたのかもしれない。
一度肌を重ねてから、なんの縁が結ばれたのかはわからない。それまで半年に一度会う程度だったこの男と、仕事で、あるいは偶然に、そしてプライベートで一か月に一度は出会っては性欲を発散するだけの関係を続けていた。
いつかは終わるだろうと思っていたこの捻じれた関係が、こんな風に突然、それも思いもよらない形で終わろうとは思ってもいなかった。
1919一度肌を重ねてから、なんの縁が結ばれたのかはわからない。それまで半年に一度会う程度だったこの男と、仕事で、あるいは偶然に、そしてプライベートで一か月に一度は出会っては性欲を発散するだけの関係を続けていた。
いつかは終わるだろうと思っていたこの捻じれた関係が、こんな風に突然、それも思いもよらない形で終わろうとは思ってもいなかった。
nanana
DONEモブ女にナンパされたり、縛ったり、噛まれたりする話。あまりにも古典的(雷コウ) 路面電車のある風景にももう慣れたものだ。何度も会議やら何やらで行き来した広島本部周辺の地理はほとんど頭に入っていてもはや地図は必要ない。D4会議を終えてコウは一人でホテルへの道のりを歩く。少しだけ本部に用事があり一人居残りをしたために他のメンバーはとっくにホテルへと戻っているはずだ。
夏の終わりの日が短くなった世界。オレンジ色の空に東から紫が混じって、雑多な街並みの色合いを一秒ごとに変えていく。人々の喧騒は福岡も広島も変わらず、街に溢れ返る人波に逆らわないように、白いコートを翻らせながらコウは歩いていた。福岡ではちょっとした有名人であるコウも、広島ではまだまだ知名度が低い。誰にも声をかけられず、誰にも振り返られることなく歩く道は少し新鮮でもある。
4964夏の終わりの日が短くなった世界。オレンジ色の空に東から紫が混じって、雑多な街並みの色合いを一秒ごとに変えていく。人々の喧騒は福岡も広島も変わらず、街に溢れ返る人波に逆らわないように、白いコートを翻らせながらコウは歩いていた。福岡ではちょっとした有名人であるコウも、広島ではまだまだ知名度が低い。誰にも声をかけられず、誰にも振り返られることなく歩く道は少し新鮮でもある。
nanana
DONE年下の男が調子を崩した話。ハッシュ・ア・バイ ベイビー(雷コウ) ホテルの部屋のチャイムが鳴ったのは「何号室?」と素っ気ない年下の男からのラインに返信をした五分後のことだった。
広島でのHEAD会議のあとに用意されたいつものホテル。コウがドアを開けるため風呂上がりできちんと着ていなかった服を正しく着なおしていると、急かすようにもう一度チャイムが鳴った。
ドアスコープの向こうにいたのは先ほどラインを寄こしてきた男で、俯いているその表情は見えない。チェーンを外してドアを開ける。お邪魔します、と呟いた声は小さく覇気がない。ぬるりという擬音が似合うように男は部屋へと入り込んだ。暑がりの男にしては珍しく薄手の長袖を着込んで片手には自分の部屋から持ってきたのであろうシーツを抱えている。どうしたんだ、という言葉よりも先に男は窓際にあった一人がけのソファーを指さしてこちらに尋ねた。
2060広島でのHEAD会議のあとに用意されたいつものホテル。コウがドアを開けるため風呂上がりできちんと着ていなかった服を正しく着なおしていると、急かすようにもう一度チャイムが鳴った。
ドアスコープの向こうにいたのは先ほどラインを寄こしてきた男で、俯いているその表情は見えない。チェーンを外してドアを開ける。お邪魔します、と呟いた声は小さく覇気がない。ぬるりという擬音が似合うように男は部屋へと入り込んだ。暑がりの男にしては珍しく薄手の長袖を着込んで片手には自分の部屋から持ってきたのであろうシーツを抱えている。どうしたんだ、という言葉よりも先に男は窓際にあった一人がけのソファーを指さしてこちらに尋ねた。
nanana
DONE不眠症の男がよく眠っている朝にテンションが上がって朝食を作りすぎる年下彼氏の話。年下彼氏一人暮らしをしている時空。
ワンルームで朝食を(雷コウ) 久々に自分の部屋に他人を招いて眠ったせいだろうか、朝に弱いはずの雷我が携帯電話のアラームを待たずに目を覚ました。目覚めたときに目の前にあったのはそこんじょそこらでは男だろうと女だろうと見ないほどのドギツイ美人顔で、その美人がよく眠っていたものだから寝ぼけたままだった意識は一気に覚醒する。
この男の寝顔を見た回数が少ないわけではない。ただそれはいつも抱きつぶした後の暗い夜の数時間のことで、こんな朝日の眩しい朝に見るのは初めてのことだった。不眠症を患うこの男はいつだってこちらが目を覚ます前に目覚めては生き急ぐように仕事をこなす。
真っ白な陽の光に照らされて髪の毛と同じ色をした色素の薄い睫毛が、透けるように光を反射しながら寝息に合わせて揺れていた。いくつ年を重ねたところで抜けないあどけなさ、眠っていると余計にそれが感じられる。これでも七歳差があるのだけど。
2052この男の寝顔を見た回数が少ないわけではない。ただそれはいつも抱きつぶした後の暗い夜の数時間のことで、こんな朝日の眩しい朝に見るのは初めてのことだった。不眠症を患うこの男はいつだってこちらが目を覚ます前に目覚めては生き急ぐように仕事をこなす。
真っ白な陽の光に照らされて髪の毛と同じ色をした色素の薄い睫毛が、透けるように光を反射しながら寝息に合わせて揺れていた。いくつ年を重ねたところで抜けないあどけなさ、眠っていると余計にそれが感じられる。これでも七歳差があるのだけど。
nanana
DONEお互いに名前呼びをさせたかったはずだった。胡蝶の夢 真っ白な部屋で目を覚ます。
瞳を開けた途端に溢れ返る光の洪水に目覚めたばかりの脳はわずかばかり混乱を起こした。まとわりつく真っ白なシーツ。大きめのサイズだというのに何故かベッドの片側に寄っていて、空いた片側に少しばかりの寂しさを感じる朝。ここはいったいどこだろうか。
「起きたのかい、雷我」
春の陽ざしのような声が自分の名前を呼ぶのを聞いてそちらを向いた。名前を呼び捨てにするような人間など家族と護しかいないはずなのに、その声はどちらとも違う。
「そろそろ起こそうと思っていたところだったよ」
片手に小さめの霧吹きを持ってサボテンに水をやる男はそう言って笑う。真っ白な衣服に身を包み、穏やかな朝の日を背に微笑む男は酷く眩しい。
2155瞳を開けた途端に溢れ返る光の洪水に目覚めたばかりの脳はわずかばかり混乱を起こした。まとわりつく真っ白なシーツ。大きめのサイズだというのに何故かベッドの片側に寄っていて、空いた片側に少しばかりの寂しさを感じる朝。ここはいったいどこだろうか。
「起きたのかい、雷我」
春の陽ざしのような声が自分の名前を呼ぶのを聞いてそちらを向いた。名前を呼び捨てにするような人間など家族と護しかいないはずなのに、その声はどちらとも違う。
「そろそろ起こそうと思っていたところだったよ」
片手に小さめの霧吹きを持ってサボテンに水をやる男はそう言って笑う。真っ白な衣服に身を包み、穏やかな朝の日を背に微笑む男は酷く眩しい。
nanana
DONE二十歳になった年下彼氏が一緒に酒を飲む話。酒は強くても弱くてもいい。
アルコールは甘くない(雷コウ)「和食君のところのお酒は、噂に違わず美味しいな」
それは普段よりも柔らかで、舌っ足らずに甘い声だった。
一応、というように用意されていた徳利と杯は最初こそ使用されていたものの、お互いにペースを上げるうちにまどろっこしいと直接酒瓶からビールグラスに注がれるようになり、もはやテーブルの片隅に片付けられてインテリアと化した。
二十歳の誕生日が来たら君の家のお酒が一緒に飲みたい、と言い出したのは目の前に座っている年上の彼氏のほうだった。高校卒業を機に始めた一人暮らし。この部屋にコウが訪れることは今までにも何度かあったがこうやって酒を酌み交わすのは初めてだった。この生真面目な男が未成年にアルコールを飲ませるなんて許容できるはずもなかったのだ。
2635それは普段よりも柔らかで、舌っ足らずに甘い声だった。
一応、というように用意されていた徳利と杯は最初こそ使用されていたものの、お互いにペースを上げるうちにまどろっこしいと直接酒瓶からビールグラスに注がれるようになり、もはやテーブルの片隅に片付けられてインテリアと化した。
二十歳の誕生日が来たら君の家のお酒が一緒に飲みたい、と言い出したのは目の前に座っている年上の彼氏のほうだった。高校卒業を機に始めた一人暮らし。この部屋にコウが訪れることは今までにも何度かあったがこうやって酒を酌み交わすのは初めてだった。この生真面目な男が未成年にアルコールを飲ませるなんて許容できるはずもなかったのだ。
nanana
DONEちゃんと付き合ってる年下彼氏のバイクの後ろに乗る話。夏を走る(雷コウ)「乗ってけ、駅まで送る」
目の前の投げてよこされた丸いヘルメットは真新しくて傷一つない。渡された青いそれと、男の青い瞳を交互に見つめてコウは立ちすくんだ。
高知で行われたHEAD会議のあとのこと。解散、という利狂の言葉で四人はばらばらの方向へと歩き出す。地元の雷我は我先にと会議室を飛び出して、流は飛行場へのタクシーの手配をする。利狂はといえばまだ高知でやることがあるらしく、残されたコウは新幹線に乗ろうと駅に向かい建物の玄関をくぐった。
玄関先にいたのは、真っ先に飛び出したはずの男だった。バイクにまたがりながらコウにヘルメットをポンと投げてよこす。
「んだよ、アンタ散々杁さんの後ろ乗ってっだろ。つけ方わかんねぇわけじゃないよな」
1785目の前の投げてよこされた丸いヘルメットは真新しくて傷一つない。渡された青いそれと、男の青い瞳を交互に見つめてコウは立ちすくんだ。
高知で行われたHEAD会議のあとのこと。解散、という利狂の言葉で四人はばらばらの方向へと歩き出す。地元の雷我は我先にと会議室を飛び出して、流は飛行場へのタクシーの手配をする。利狂はといえばまだ高知でやることがあるらしく、残されたコウは新幹線に乗ろうと駅に向かい建物の玄関をくぐった。
玄関先にいたのは、真っ先に飛び出したはずの男だった。バイクにまたがりながらコウにヘルメットをポンと投げてよこす。
「んだよ、アンタ散々杁さんの後ろ乗ってっだろ。つけ方わかんねぇわけじゃないよな」
nanana
DONE高速道路を運転をするコ様と助手席のわじき。付き合ってない。
夜を行く(雷コウ) どこまでもまっすぐ続く真っ黒な道路に、等間隔で白銀の光が並んで、それをいくつもいくつも追い越して「わ」ナンバーの車は走る。高速道路の横の道はどうしてかは知らないけれど薄汚れた下品なネオンライトに照らされた看板が並んでいるか、もしくは何もないかの二択であることがほとんどだ。さっきまでは前者で車通りも多かったはずなのにいつの間にか後者へと変わっていた。
車内に流れる知らない男がパーソナリティを務めるラジオ番組。流れる音楽は微妙に年代が古いらしく、雷我も隣でハンドルを握る男にもどこかピンとこない。それでも乗車した時から沈黙を続けている二人にとっては、勝手に喋り続ける男の声と馴染みのない音楽は一種の生命線のようなものだった。
1798車内に流れる知らない男がパーソナリティを務めるラジオ番組。流れる音楽は微妙に年代が古いらしく、雷我も隣でハンドルを握る男にもどこかピンとこない。それでも乗車した時から沈黙を続けている二人にとっては、勝手に喋り続ける男の声と馴染みのない音楽は一種の生命線のようなものだった。
nanana
DONE事後の話。かなりイチャイチャしてる。付き合っているつもりだった年下彼氏と、恋愛のれの字もわからない年上彼氏。
気狂い達の恋愛模様(雷コウ)「ヤってる時にあんま嫌々言われると萎えるんだけど」
どの部屋を選んでもたいして変わり映えのない使用目的の限られた安っぽいホテルの一室、一ラウンド終えてベッドにくたばっているやたらと見目だけはいい男に雷我はそう告げた。男は一瞬何を言われているかわからなかったらしい。未だ息は整わないまま、肩で呼吸をしながら左右違う色の瞳でこちらをぽやりと見返した。
「……嫌々、って?」
「あ?ヤってる最中だよ、俺が何したってアンタ、全部嫌って首振るじゃねぇか」
「それはっ……!」
「それは?」
「…………」
「黙ってねぇでなんか言えって」
いつも腹が立つほどに回る口が今はどうにも動かないらしい。男はベッドに転がったまま悔しそうに何か口を開きかけて、そしてまた閉じてこちらを何か言いたそうに見つめ返した。
2516どの部屋を選んでもたいして変わり映えのない使用目的の限られた安っぽいホテルの一室、一ラウンド終えてベッドにくたばっているやたらと見目だけはいい男に雷我はそう告げた。男は一瞬何を言われているかわからなかったらしい。未だ息は整わないまま、肩で呼吸をしながら左右違う色の瞳でこちらをぽやりと見返した。
「……嫌々、って?」
「あ?ヤってる最中だよ、俺が何したってアンタ、全部嫌って首振るじゃねぇか」
「それはっ……!」
「それは?」
「…………」
「黙ってねぇでなんか言えって」
いつも腹が立つほどに回る口が今はどうにも動かないらしい。男はベッドに転がったまま悔しそうに何か口を開きかけて、そしてまた閉じてこちらを何か言いたそうに見つめ返した。
nanana
DONE事後の話。足腰立たなくなったコ様。
青春アラカルト(雷コウ) ぼんやりとした意識が徐々にクリアになっていく。性行為後の気怠さと節々に残る痛みを感じながら虚ろにホテルの天井を眺める。最後に、落ちるなシャワー浴びろ、と頬を叩かれたことは覚えていた。返事だけをした記憶はあるもののそのまま寝落ちてしまったらしい。申し訳程度に掛けられていた薄いシーツが上からかけられていた。
狭い室内、音は全て筒抜けで浴室のシャワーの音も全部聞こえていた。当然それはさっきまで肌を重ねていた男がシャワーを浴びている音だろう。
喉が渇いた。
もぞもぞと緩慢に起き上がる。シーツを剥いだ途端に感じた冷気。またあの男はクーラーの温度を下げている。ぞわぞわと肌が粟立つのを感じながらベッドから降りるために地面に脚をつく。最初に感じたのは床がぐにゃりと柔らかく変形したような錯覚。力を込めたはずの膝がかくんと折れ曲がり体は重力に負けて落下していく。咄嗟に捕まろうとしたした手を伸ばしたサイドテーブル。それはただ上にあった携帯電話を派手に落下させただけでなんの役にも立たなかった。
2501狭い室内、音は全て筒抜けで浴室のシャワーの音も全部聞こえていた。当然それはさっきまで肌を重ねていた男がシャワーを浴びている音だろう。
喉が渇いた。
もぞもぞと緩慢に起き上がる。シーツを剥いだ途端に感じた冷気。またあの男はクーラーの温度を下げている。ぞわぞわと肌が粟立つのを感じながらベッドから降りるために地面に脚をつく。最初に感じたのは床がぐにゃりと柔らかく変形したような錯覚。力を込めたはずの膝がかくんと折れ曲がり体は重力に負けて落下していく。咄嗟に捕まろうとしたした手を伸ばしたサイドテーブル。それはただ上にあった携帯電話を派手に落下させただけでなんの役にも立たなかった。
nanana
DONE不眠症の男とその恋人の話。同棲してる。砂時計はまだ落ちない(雷コウ) 好きな人の前では安心して眠れる、なんていうのはソシャゲのストーリーの定番で。
ゲームのストーリーを流し読みしてしまうタイプではあるのだけれど、それは流し読みだとしても覚えてしまっているほどの定番ネタだ。オキなんたらなんていうホルモンが出てウンヌンカンヌン。それは別に覚えておく必要もないし、思い出す必要もない。
目覚めた瞬間に空になっている腕の中を見ていつも苛立ちと悔しさの混ざり合った感情に意味もなく叫び声をあげたくなる。どうせまた、と舌打ちをして起き上がって机を見る。昨夜あれだけ乱れて鳴いていた男が、そんな事実は無かったのだと思わせるように淡々とパソコンで何かを叩いていた。
その背中を眺めながらため息を吐くのは何度目だろうか。
1783ゲームのストーリーを流し読みしてしまうタイプではあるのだけれど、それは流し読みだとしても覚えてしまっているほどの定番ネタだ。オキなんたらなんていうホルモンが出てウンヌンカンヌン。それは別に覚えておく必要もないし、思い出す必要もない。
目覚めた瞬間に空になっている腕の中を見ていつも苛立ちと悔しさの混ざり合った感情に意味もなく叫び声をあげたくなる。どうせまた、と舌打ちをして起き上がって机を見る。昨夜あれだけ乱れて鳴いていた男が、そんな事実は無かったのだと思わせるように淡々とパソコンで何かを叩いていた。
その背中を眺めながらため息を吐くのは何度目だろうか。
nanana
DONE構ってもらえなくて拗ねてる年下彼氏の話珍しく朝まで目覚めなくて慌てた(雷コウ) あらかじめ仕事が忙しいからと断られていたのも本当で、ソシャゲのイベ最終日だからそちらに集中したかったのも本当だった。だからと言って本当にここまで放置されるとは思ってもみなかった。
イベントの終了時刻、結果集計待ちの画面が表示されたのを確認して携帯を投げ捨ててベッドに転がった。順位はこの部屋に来る前に想定していたよりも随分良いものになっているだろう。
自分が携帯を眺め続けている間、同じようにパソコンに向かって何かを叩き続けているカミサマの背中を雷我はベッドの上から眺める。出張で同じホテルに泊まるときはいつの間にか暗黙の了解のように雷我がこの男の部屋を訪れるようになっていた。いつからだったとか、どうしてだったかとかはもはや忘れた。あるのは毎回そうやって体を重ね続けた事実だけ。
2035イベントの終了時刻、結果集計待ちの画面が表示されたのを確認して携帯を投げ捨ててベッドに転がった。順位はこの部屋に来る前に想定していたよりも随分良いものになっているだろう。
自分が携帯を眺め続けている間、同じようにパソコンに向かって何かを叩き続けているカミサマの背中を雷我はベッドの上から眺める。出張で同じホテルに泊まるときはいつの間にか暗黙の了解のように雷我がこの男の部屋を訪れるようになっていた。いつからだったとか、どうしてだったかとかはもはや忘れた。あるのは毎回そうやって体を重ね続けた事実だけ。
nanana
DONE天神コウが枕営業をしているという捏造記事が流れた話。R18ありの分は本にしました。
泡沫と雷鳴(雷コウ)1.
天神コウが枕営業をしている、そんな記事が出回ったのはまだ梅雨の気配残る初夏の事。
無論、そんな事実はどこにもなく、アンチの仕業による捏造記事は証拠もない推論ばかりで綴られ、小さくピンぼけた写真に写る二人は腰を抱き寄せているわけでも肩を抱いているわけでもない。うまい事トリミングして誤魔化しているつもりなのかもしれないが、その扉はホテルなどでは無くコウが講演を行った大学の講堂で、隣にいるのは案内をしてくれた学長である。ちなみに言えばトリミングされて捨てられてしまった部分には他の福岡支部のメンバーも存在している。
まぁ、有り体に行ってしまえばそれは酷くクオリティの低い創作物だったのだ。そんなものを信じたものなんて、DAAの内部どころか外部にすらいなかった。というわけでそんな話題にするのも不快な捏造は誰に語られることもなく消えていくこととなった。
18333天神コウが枕営業をしている、そんな記事が出回ったのはまだ梅雨の気配残る初夏の事。
無論、そんな事実はどこにもなく、アンチの仕業による捏造記事は証拠もない推論ばかりで綴られ、小さくピンぼけた写真に写る二人は腰を抱き寄せているわけでも肩を抱いているわけでもない。うまい事トリミングして誤魔化しているつもりなのかもしれないが、その扉はホテルなどでは無くコウが講演を行った大学の講堂で、隣にいるのは案内をしてくれた学長である。ちなみに言えばトリミングされて捨てられてしまった部分には他の福岡支部のメンバーも存在している。
まぁ、有り体に行ってしまえばそれは酷くクオリティの低い創作物だったのだ。そんなものを信じたものなんて、DAAの内部どころか外部にすらいなかった。というわけでそんな話題にするのも不快な捏造は誰に語られることもなく消えていくこととなった。
nanana
DONE付き合ってないけど付き合ってる雷コウ。色々小難しく考えがちな高校生と無自覚に性癖を曲げてくる大人の話。恋せよ、獣(雷コウ) 終わった後にいつも苦々しい後悔に苛まれる。そういうことをしたかったわけではないのだ。シャワー室から出てきたばかりの雷我はそんな事を思いながら、シーツがくしゃくしゃになった白いベッドの上で背中を丸めている男の背中を無言で眺めた。
タオルでごしごしと一、二度拭かれただけの濡れ髪は、未だ乾きもせずにぽたぽたと小さな音を立てて柔らかいホテルの床に雫を落とす。そんなか細い音すら響く様な静寂。
ベッドの上の男は相も変わらず俯いたまま。おそらくこちらがシャワー室から出てきたことい気が付いているのにも関わらず、申し訳程度に掛けられた薄いシーツを頭から被って手首を摩り続ける。そこには赤くなって熱を持つ拘束の痕。
2321タオルでごしごしと一、二度拭かれただけの濡れ髪は、未だ乾きもせずにぽたぽたと小さな音を立てて柔らかいホテルの床に雫を落とす。そんなか細い音すら響く様な静寂。
ベッドの上の男は相も変わらず俯いたまま。おそらくこちらがシャワー室から出てきたことい気が付いているのにも関わらず、申し訳程度に掛けられた薄いシーツを頭から被って手首を摩り続ける。そこには赤くなって熱を持つ拘束の痕。
nanana
DONE和食誕。付き合ってる雷コウ。割と浮かれがちな高校生と、驚くほど恋愛適性のない大人の話。
ハルノヨ(雷コウ) 和食雷我の誕生日は酷く騒がしく始まった。携帯電話は午前零時から次々と祝いのメッセージを届けて鳴りやまず、朝目覚めて朝御飯にしては豪華な食卓へ向かえば全員におめでとうと告げられた。朝はあまり得意ではないのに自然と目が覚めたのは、並んでいるものが全て好物で匂いが部屋まで漂ってきていたせいである。
生まれてこの方この味で育ってきたのだ、口に合わないはずもない。朝からこんなに食えるかよと手を付けたはずの料理は瞬く間に腹の中へと消えていく。最後に酔わない程度に僅かに注がれた日本酒を祖父と酌み交わし学校へと向かった。朝にこんなに詰め込まれたのは、学校が終わればそのまま遊びに行って今日は帰らないと伝えたせいだろう。
2906生まれてこの方この味で育ってきたのだ、口に合わないはずもない。朝からこんなに食えるかよと手を付けたはずの料理は瞬く間に腹の中へと消えていく。最後に酔わない程度に僅かに注がれた日本酒を祖父と酌み交わし学校へと向かった。朝にこんなに詰め込まれたのは、学校が終わればそのまま遊びに行って今日は帰らないと伝えたせいだろう。