春によるさざなみ(雷コウ) まるで合成写真のようだと、ノラはメニュー表で顔を隠しながら笑いをこらえる。笑っているのがばれてしまえば悪いこの男の機嫌がさらに降下することは間違いない。拗ねて、帰る、と言われては元も子もない。
淡いアイボリーを基調とした可愛らしい内装に、壁際に伸びているタワー。あちこちに散らばった玩具と駆け回りながら自由に過ごすネコたちがいるノラのお気に入りのネコカフェ。そんな空間に押し込められて居心地が悪そうに身を小さくしている我らがヘッドは滅多にみられるものではない。
ただ居心地が悪かったのは雷我だけではないと見える。雷獣大将と呼ばれる威圧感は、どうやらもう一回り体の大きなネコ科の獣にも似ているのだろう。いつもは人懐こく駆け寄ってくるはずのネコですら遠巻きにこちらをうかがっている。自由の象徴のような彼らも委縮することだってあるのだ。
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