おまえが前探してるって言ってたの、これだろ?なんの前触れも無く差し出された。それは確かに欲しかった画集で。「…どうした?」咄嗟に受け取って胸に抱いたものの、言葉に詰まって立ち往生するこちらに、訝しげな声がかかる。「感謝の言葉が詰まってしまって…」「…ああ、
嬉しくておまえそんな成るのか」へえ。そんな感慨深げに言われても。そしてその後不思議そうに首を傾げられる。「別にいつもみたいににこにこしてくれてればそれで良いけど」いつもにこにこって誰のことだそれ。「まあもっとにこにこしてくれるってんなら確かにそれはしてほしいけど」言葉を詰まらせる
わたしに対して語彙力の無いおまえかよ。「…ありがとうございます」真っ先に言うべきだった言葉が漸く零れた。おまえがにこにこしてどうするんだ。