学舎とは閉鎖的なところだ。誰も彼もが平静を装って居るが、その装いが本当にマトモなものなのか、学問のあなぐらでは誰も知らない。事実は、みんな狂人なのかもしれない。にも関わらず、そんな連中こそ、自分がマトモだと盲目的に信じきり、他人こそが狂人だと虐げる。それはただ自分の学んだ思い込みで現実逃避して居るだけだ。だから誰かがこう言ったのだ、ここは象牙の塔、と。
ところで、マトモな人間と言うのはある程度集団行動を行うものだ。羊で言うところの群れである。そこに加わら無い者は狂人扱いされ、群に依存したところで都合良く利用されて切り捨てられるだけだ。例えば、常に鋏を持ち歩き誰とも連まずに一人で鼻歌を歌って居るような狂人は、りっぱぁ、と呼ばれる羽目に成るのだ。しゃきんしゃきんと言う鋏の音、もしくは、誰もが知って居る筈なのに妙なご機嫌さが不気味に聞こえる鼻歌で、奴がそばに居ることが分かる。すると、途端に指をさして嘲笑する者、無視する者、明らさなに嫌そうな顔で遠去かる者、分かれはするが学舎の中では全てマトモな対応に含まれる、そう学徒達は信じて居る。しかしりっぱーは気にし無い。狂人だからだ。否、彼以外の学徒がそう定めてしまったからだ。不思議なのは、そんなィ為善の盗人の中の、正直者のあくにんで有る自分でさえ、群れの一員と見做されて居ることだ。だからこそそこで、おれ達は出会ったのかもしれない。こちらとしては完全に反射だった、決して善意では無い。