寮生たちは長髪寮長を守りたい「速報です」
駆け込んできた寮生に複数の視線が重なる。息を切らして駆けてきた少年を労うように見上げ、彼の息が整うのをじっと待った。
「予想通り副寮長が押し負けました。今晩は様子を見るそうです」
途端にわっと歓声が上がって上級生から消灯時間が近いんだから静かにしろと叱責が飛ぶ。慌てて口を噤んだ寮生たちがゆっくりと視線を交わらせる。
「喜ぶのはまだ早いぞ」
メモ用の紙を持った寮生が全員の顔を見渡した。神妙な面持ちでカチッとふたを取り、ペンを走らせた。
「寮長の髪を守る会 作戦会議」
彼の周りを取り巻く寮生たちがごくりと息を呑む。
期限は明日の夕方まで。
それまでに副寮長を納得させる必要がある。
かくして寮生たちの戦いは静かに幕を開けた。
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