きょうもかわいい、カリム様「起きろ、カリム」
声を掛けると幼なじみがうっすらと目を開けた。二回、三回またたきをして、夢とこちらを行き来している。
「なんてもの抱えてんだ、お前」
「じゃ、みる?」
ゆっくりまたたいたカリムが寝ぼけた表情のまま見上げてきた。定まらない視線が俺の指を追いかける。指差された先を見下ろし止まる。ぼんやり見つめ、急に瞬いたかと思うとバッと手に持っていたものを背後に押し込んでこちらを見上げ直す。
「ジャミル!? なんで!」
目が覚めたばかりにしてはハキハキとして通る良い声だ。これなら朝一番の仕事も滞りなく進められるだろう。
「なんでって、お前が起きてこないから呼びに来た」
カリムが慌てた様子で時計を確認する。時刻は予定していた起床時間から10分ほどあと。寝坊と言えば寝坊だが、元々30分は余裕を見ているから問題ない範囲である。
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