ほまちあめ ——さあさあ。
——さあさあ。
自室を包むような広く小さな音に、隣に座るスレッタも気が付いたらしく、絡んでいた視線をついと窓へと向け、感嘆の声をあげる。
「雨ですよ、エランさん!」
晴れやかな笑顔で振り返った彼女に、こくりと頷いておいた。
——本日は午後5時から雨の散布予定。
数ヶ月前から予告されていた通り、天井パネルからは人工雨が降り注いでいる。いつもならばオレンジ色に切り替わっている映像も、暗いグレーがまだらに映し出されていた。
多くの住民が疎ましく感じる雨の散布日も、スレッタにとってはそうではないらしい。ブルーグレーの瞳を輝かせながら、腰掛けているベッドのすぐそばにある窓から外を眺めている。さらには時折目と口をぴたりと閉じて、雨粒の音を聴いているようだった。
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