このクソな世界を守って(1) この世界はクソだ。母親は物心ついたときには俺におっさん相手にカラダを売らせた。その母親はビッチで俺の父親はどこの馬の骨だかわからない。学校の教科の中で唯一、音楽だけは好きで得意で、まともな家に生まれていたなら吹奏楽の強豪高校とか、音大とか、行きたかったけど、クソ母親と一緒にいたくなくて十五で家出していたからそれどころじゃなかった。
倫生(みちお)の人生はそんなじゃない。俺と同じく母子家庭育ちではあるが、家出なんかはしていなくて、貧しい暮らしだが、母親は倫生を愛している。羨ましいと思う。だが、嫉妬心を攻撃性に変換して傷つけるんじゃなく、俺の手で倫生を守りたい。倫生はいい子だから。天使みたいにいい子だから。
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