おと――いずはたまにあの目をする。
ただぼんやりと、景色を反射するだけのそれは、胸が締め付けられる時がある。
見惚れることの方が多いが……どうにも今日は違うようだ。
珍しく楽しげに出かけていったと思ったんだが……戻ってからずっと考え込んでいるな
「…………」
「……いず?何かあったのか?」
「……!ユア……いや、お茶会に参加していたんだが……」
「お茶会……ミュゲさんか?」
「あぁ。途中でその、耳鳴りがして、声がとどかなく……なってしまったよう、で……だいじょうぶだろうか……」
「いず」
強めに名前を呼んで顔をこちらへと向けさせる。
両の耳を手のひらで覆うように塞いで。
「っぁ」
「別にいずのせいじゃないだろ。疲れが溜まっているとなることもあるそうだ」
「そう、か」
「ミュゲさんは他の星のせいにするような方じゃないしな」
「ん。そうだな……」
瞳が揺れている。随分と不安定だな。
自分の後遺症に近しいものだからか……いや、機微に聡すぎるのもあるか。
「慌ててジャンくんを呼んでもらった」
「なら大丈夫だろう。誰よりも心強い方じゃないか」
「同郷殿に途中であったので手助けしてもらったのだが……えぇと雨林のホームからの案内放送になった」
「ホームからの案内放送」
「迷子の」
「迷子の……(ちょっと聞きたい)」
「任せてしまったが大丈夫だろうか……」
「今度差し入れでも持っていったらどうだ(すみません御二方ちょっと面白いです……)」
「あぁ」
――ユアに耳を塞がれた時、音がした。
ふたつ。こどうがした。
これは、こんなにも心地よいものだったか……