あの手の握り方は脈動を確かめるためでもあった…とかユアの独白いずは不思議な目の色をしている。
本来は灰色に近いのだろうが、体に宿す光で内側から輝くと銀にも見える。周りの色も反射しやすいらしく…うっすらと様々な色に染まっているのも見かけ、青みがかっていることが特に多い。
どこであれ眠ってしまう体質になってしまってから、いずを見つけだすのは俺の日課のようなものだ。面倒などと思ったことは一度もない。
しかし前に雨の中ずぶ濡れで倒れ、散りかけているのを見つけた時は本当に肝を冷やした。あれから傘を持ち続けてはくれるが…やはりなるべく側に居たい。あの厄介な睡魔は予測がつかないし、意識がないままで放っておきたくない。
ようやく見つけたいずはよく聞く雨音でかき消されてしまうほどの、微かな寝息をたてている。
穏やかといえば聞こえは良いが…これは気絶に近い。持っている傘を開けないほど酷い時もあった。
だが、つい起こさず寝顔を見つめ続けてしまう。…たまに考えてしまうことがある。もしかしたら、このまま起きないのではなどと。
あの小さくゆっくりになる鼓動を忘れたくて力の抜けた手を握り確かめる。
どくり、と。
しっかり脈打つそれに酷く安堵する。例え昔より低くなってしまった体温であろうと感じていたい。
きっと声をかければ、揺すれば起きるだろう。だが「もし」がきてしまうのが恐ろしくて…確かめたくなくて…だた探して起きるのを待っているだけなのかもしれない。
いつも、いつも、祈るように。
あの時から俺は姿ばかりで変われていない。…情けないことこの上ないな。
守りたいのに喪いたくないのに未だ足踏みしかできていない。
手を握っていても遠く感じてしまう。
それでもつなぎ続けた手から、足りなかった光が行き渡ったのだろう。
目蓋があがり、俺を写す瞳から目が離せない。何度も見ているはずなのにいつも初めて見るような感覚がする。
なぁ、いつもどこへ行きたがってるんだ…