どこかで響いた銃声 微かな乾いた破裂音が耳に届く。と同時に、獠は駆け出していた。その音の出どころに気付いた獠は「あいつ……」と小さく吐き出すように呟くと、歌舞伎町の裏路地に回り込んだ。
「今のは威嚇よ! 早く、その子を離しなさい!」
「うるせえっ! テメェは関係ねぇ! 引っ込んで……うぐぁっ……!」
香が片目を瞑って、その男の左太ももに照準を合わせようとした瞬間、鈍い打撃音と共にその男が崩れ落ちる。
「獠っ!」
その男から解放された少女が気を失って倒れる寸前で、獠の腕がその細い身体を受け止めるのを見た香は、思わずホッとして叫んでいた。
「ったく……威嚇射撃する前に、オレを呼べっつーの」
少女を左腕で抱き留めたまま、倒れた男の拳銃を抜き取った獠は、呆れたように香にそう苦言を呈す。
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