爪 これはいつもの決まり事。深津さんの目の前に座って腕を差し出す。柔らかいクッションを下に敷いて、綺麗な指先で一本一本の指を固定しながらマニキュアを塗っていく。最初は爪の強化の為だと言われ、促されるまま腕を預けた。何でも器用にこなす深津さんは、バカ丁寧に一本ずつ綺麗に仕上げていく。まずは伸びた爪をヤスリで削って、甘皮の処理もこなす。それ、何処で覚えてくるんですか?なんて興味本位で聞いてみる。例えば、他の誰かに同じ事してるとか、女の人に腕や手を触られてるて考えると自分の中でも驚くくらい歯痒い気持ちが芽生えた。
「やきもちピョン?」
本当に何でもお見通し過ぎて苦笑いを浮かべる。隠し事なんて出来ないのはわかっているので、直ぐに根負けしてしまう。
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