自本丸の国広に想いを寄せていた長義。しかし国広は長義と顔を合わせることもなく会話もまともに成り立たない。恋慕だけ募っていってそれは苛々に変わり、たまに顔を合わせたところで全て嫌みになってしまう自分に嫌気がさす。そしてとうとう修行から帰ってきた国広はすっかり変わっていた。以前と違い顔を合わせることもあるし会話もするが、卑屈だったあのころとは全く違いどう接していいかわからなくなってしまった。
(本歌たる俺が写しである偽物くんにこんな思いを抱くなんておかしい。これはきっと不具合だ。バグなんだ)
そう言い聞かせたものの、一度抱いてしまった感情はそう簡単に消せない。そう思った長義は、ある日刀剣男士用の出会い系に手を出すことにした。自分の本丸にいる国広には素直になれないが、他本丸の極める前の卑屈な国広であれば自分優位で事を運べると安易なことを考えてしまった。プロフィールを入力して探してみるとあっさりと布饅頭の国広とマッチングできた。一週間後に現代で待ち合わせることにした。そこでならば、あと腐れなく出会えると思っていた。
「な、んで……」
当日、待ち合わせ場所に来たのは他本丸の布饅頭ではなく、自本丸の国広だった。唖然として動けない長義に近付き、国広はとても厳しい表情で近付いてくる。
「山姥切、どうしてこんなことを」
「な、んのことかな?お前には関係ないだろう」
「関係ないだと?あんたがここを利用しているのを知らないとでも思ったのか?」
スマホの画面には例の出会い系サイトが表示されている。長義の顔はさーっと青ざめていく。何でバレているんだ?と混乱している長義を追い詰めて国広は泣きそうな顔をしていた。
「俺では駄目なのか?」
「は?」
「どうして俺じゃないんだ。俺ではあんたの隣に立つことは叶わないのか」
「何、勘違いして……」
「……埒が明かないな。続きはホテルで聞く」
「…………何て?」
「あんたが指定したんだぞ。ここで待ち合わせをして、ホテルに行くと」
空いた口がふさがらない長義を連れて国広は目的の場所へ向かう。少し灸をすえてやろうと思っただけだった。自分を置いて他の写しと遊ぶなんてやめてほしいと伝えたかった。
しかしいざホテルで二振りきりになると、長義から思いのたけを聞かされてしまい、国広は言葉を失うし、ならば猶更出会い系を利用したことが許せずに半ば強引にことに及ぶことに…。