吸血鬼ちょぎくんと人狼くにひろくん身体が成長せず幼いままで何百年も生きている長義。そんな長義の屋敷に迷い込んだ幼い人狼の国広。国広は長義にすぐ懐いたが、長義は幼い身体ゆえに頻繁に長い眠りについていた。親しくなればなるほど別れの時が辛くなるのを長義は知っていた。
「おれはおまえとちがうんだ。ここにくるんじゃない」
冷たく付き返しても国広は長義の元を訪れた。長義は次第にうとうととすることが増えた。
「ねむたいのか?」
「……おれは……きゅうけつきだから、おまえよりずっとながいじかんねむるんだ…」
「そうなのか」
「……おまえはもう…ここにくるな……あしたきたら、きっとおれは……」
次の日国広が屋敷を訪れると地下の暗い部屋で静かに寝息を立てている長義がいた。大きなベッドに身体を横たえてすやすやと眠っている。国広はベッドによじ登り長義の横にごろんと寝転ぶ。
「ちょうぎ……おまえがおきてもさみしくないようにずっといるから」
長い長い時が経ち、ある日長義が目を覚ました。幽かに覚えているのは幼い人狼の寂しそうな顔。身体を起こし隣を見ると、すっかり成人男性に成長したあの人狼がいた。一瞬誰かわからず戸惑ったが、金色の髪に覚えがある。国広はぱちっと目を覚ました。
「おはよう、長義」
「……なん、で」
「あんたが起きても寂しくないようにと思って」
「ずっとここにいたのか?」
「俺の方が先に大きくなってしまった」
「おれはそういうたいしつなんだ。なのにおまえは、ばかしょうじきに…」
言い表せない感情が溢れそうになる長義を抱き締めて国広は優しく呟いた。
「ずっとあんたのことが好きだから、待つことなんて苦じゃない」
「……!」
「一番最初に、おはようを言いたかったんだ」
優しく頭を撫でられ長義はくずっと鼻を鳴らした。
「うん、おはよう…くにひろ」