とある写しの片思い「山姥切、いいだろうか」
「何かな偽物くん、手短に頼むよ。俺も忙しいからね」
「実は最近、恋をしてしまったんだ」
「は?鯉?」
「魚の方ではないぞ。恋だ。気になる相手が出来た」
「……へえ、それをわざわざ俺に報告する意図がわからないな」
「お近づきになりたいんだが、方法がわからない。そういうことならあんたの方が詳しいだろう」
「何だそれ、人をたらしみたいに言うのは止めてくれないかな。まあ、偽物くんより人付き合いが得意だと自負しているけれど」
「ああ、教えてほしい。どうすれば親しい仲になれるのか」
「(はあ?こんな朴念仁を絵で描いたような偽物くんが色気づいたのか?何かむかつくな。適当にあしらってやろう)そうだね。まずは距離を縮めてみてはどうかな」
「どうすればいい?」
「さり気なく触れるんだ。手を繋いでみるとか」
「手を……こうか?(にぎにぎ)」
「それではただの握手だろう?違う、もっとこう互いの指を絡めて」
「こうか?」
「何で俺でするのかな?」
「練習したいんだ、頼む」
「はあ?するなら自分の手ですればいいだろう?」
「次はどうすればいい?」
「……相手の身体を抱き寄せてみたり」
「……こうか?」
「だから何故俺でする?というか近い!離れろ!」
「抱き寄せたら互いの距離が縮まるのは当たり前の事だろう」
「そうだが…だがそうではない!」
「教えてくれ山姥切。次はどうすればいい?」
「(次って……そんなのここまで来たら)せ、接吻をする、とか」
「こうか」
「待て待て貴様!さすがにそこまで練習しなくてもいいだろそれは本命にとっておけ!」
「何故だ」
「……接吻とは好いた相手と行うものだ。そんなことも知らないのか偽物くんは」
「問題ない」
「はあ?」
「俺が恋している相手はあんただ、山姥切」
「……は?」
「だからこれは正当な行いだ」
「…………は?」
「教えてくれ山姥切、次はどうすればいい?」
「は……?お前、何言って」
「手を繋いで、抱き寄せて、接吻して、次はどうすればいいんだ?」
(こ、こいつ…正気か…?何で俺を……訳がわから……)
「山姥切」
(そんな、乞うような目で見つめられてもどうすればいいのか分からない)