I'm looking for you【レオトリ】降り立ったのはトウモロコシ畑が
生い茂る明るい農場だ。
コールドウィンドファーム
ランシッド・アバトワー。
今回此処が儀式の場所らしい。
「……本当に別世界なのか疑う程に、
穏やかな農場にしか見えないがな」
農場の眩しさに少し目を細め、ポツリ一人、
ボンバージャケットにジーンズ姿、端正な顔立ちのその男性はレオン・S・ケネディその人だ。
バイオテロの調査中に、突然深い霧に覆われてしまい、方向感覚を失ったまま迷い込んだこの世界で彼は、サバイバーと呼ばれる追われるためだけの哀れな獲物に、選ばれてしまったのだがそれに屈することなく、果敢に儀式と呼ばれるものに
挑む彼の精神は、バイオテロで染まり切った
世界で鍛えられた不屈の心で平常を保ちこの世界に留まっているのだろうか。
「何度か儀式には参加しているが、
この世界からの出口となるヒントはまだない。
もどかしいが今は、儀式をつづけながら
この世界の綻びを探すほかない、が。
まぁ、取り合えずこの儀式をさっさと終える為に発電機探すか」
面倒臭そうに一息漏らし歩みを進めようとした彼の背後から
鋭い風切り音と共に彼の頬を微かに裂いた。
「……ナイフ……やれやれ、キラーはトリックスター、アンタか」
「やぁレオン。出会うのは何時ぶりかな?」
「さぁ、アンタ以外沢山のキラーと逢ってるんで覚えてないな?」
「えー、僕との出会い覚えてないの??妬けちゃうな」
「誰にでも言いそうな奴が、言ってもなにも感じないが?」
「だったら忘れられないようにその身体に、僕のナイフで沢山痕を残してあげるよ」
「は、それはそれは盛大なデートのお誘いだが謹んでお断りしたい」
「断れると思ってるの?」
「いいや?」
レオンはぐっと地面を蹴り一気に駈け出した。
それを追うも、流石にこの世界での歩みを抑制されているトリックスターの足ではなかなか追いつけない。ただ、その分、ナイフの精密性さえ補えば
レオンを捕える事は可能だろう。
《さっきのナイフで一本、今投げてるもので3,4,……》
「……ッく……」
遮蔽物の隙間を縫って、ナイフを搔い潜るも雨の様に降り注ぐ全てを避ける何て芸当は流石のレオンにも出来るはずは無く幾つかナイフが彼の身体を掠めた。
だが、風切り音だけは必死に逃さぬように、レオンは耳に神経を集中させ
上手にトリックスターの追跡を交わして行く。
「あはっ♡君の声SEXYだねレオン……もっと僕の愛撫で鳴いてよッ!!」
「ハッ、アンタの思い通りになると、俺の損失が増えるだろうが……」
何時までも追いかけっこを続けていると、こちらのスタミナも消費が激しい
荒くなる息と共に見えて来た固有建築の窓枠に飛び込むも、いつの間にか
距離を詰められレオンはトリックスターが振るったバットに
強く背中を打たれ、滑るように地面へ落ちた。
「がっ……!!」
「ははは、やっと掴まえた……足早いよレオン。
もうちょっと手加減してくれても良くない?」
「そう言ってる割に追いついてるじゃないか……
生憎、俺は諦めが悪いんでな……っ!」
「わっ!?あぐっ……目が……この!!!」
レオンは手近にあった砂を掴み、トリックスターの顔面目掛け投げ付けた。
トリックスターは目に入った砂の痛みに身悶え、怒り任せにナイフを乱発した。
それを寸でで交わしては、躓きながらもレオンは立ち上がり再び駈け出すも、飛び込んだ先は捌かれた豚が吊るされた、行き止まりの小屋だった。
「はぁ、はぁ……まだ、このマップには慣れてないみたいだね?さっきは砂を浴びせてくれて有難うたっぷりお礼しなきゃね?」
「……っ」
「ふふ、観念した?じゃあ……君を頂いちゃおうかな??」
大きく振り被ったトリックスターのバットを持つ手をレオンは蹴り上げたなら痛みと共にバットがトリックスターの手をすっぽ抜けてあらぬ方向へ吹っ飛ばされた。
すかさずレオンはトリックスターの懐へ飛び込み彼の黄色いロングジャケットの襟を掴み地面へと押し倒した後少し遅れて、遠くの方でバットが何かに当たり跳ねる音が聞こえた。
「あぅっ!!!
……あーあまた君に押し倒されちゃった
君、力強すぎだよレオン」
「これでも元警官だ……甘く見られては困る」
「……」
「見つめたって、すぐには開放する気はないからな。後19本分のナイフ、全部取らせてもらうぞ?」
「あ、んぅ……!そんなに胸元弄らないでよ、レオンのエッチ」
「はぁ?凶器探ってるだけだろ、喘ぐな」
「ふふふ」
「何だ?急に微笑んで……」
「君の顔間近で見ると奇麗だなって思って」
先ほど逃げなから数えた、放たれたナイフの本数とを照らし合わせ、彼の隠されたナイフを次々取り去るレオンの頬に、そっと伸ばされたトリックスターの手がその頬を撫でた。レオンはその手を掴み、何の意図もなく、さらりと流れるように言葉を零した。
「アンタの方が奇麗だと思うけどな?肌は妙に艶やかでフルムーンの様な不思議な色見の瞳は、男であってもつい見つめたくなる」
「……ッ」
トリックスターは空いた手をレオンの首へと回し
ゆっくりと身体を起こすならレオンの唇に唇を重ねた。
「ん……!?」
「はぁ……レオン、君の言葉に感じちゃった」
蕩ける様な眼差しで求めて来るその瞳は
本当に美しく吸い込まれそうな誘惑に酔い
二度目のキスを求める様にレオンはトリックスターの唇に再度寄せたが、寸での所で発電機の直る音に
ハタと理性を取り戻すも、それを許さぬように
トリックスターは彼の唇を強引に塞いだ。
「んぅ、……もう、今日の儀式は諦めてよ……お願いレオン彼らが逃げてコラプスが終わる迄で良いから傍に居て……今は殺人鬼と生存者じゃなく……ハク・ジウンとしての僕だけを見て」
「はッ……ジウン……」
「うん、もう意地悪しないで……僕をあの時抱いてくれた時から
僕は君の事忘れられないんだ……」
「ゾンビになり損ねたって笑ってたくせにな??」
「照れ隠しだよ……君に抱かれて、あんなに声出した僕の羞恥心分かってよ」
「……今日は手加減できそうにないぞ……」
トリックスターの華奢な腰に手を回し抱き起す様に彼を腕の中に抱き締めたなら
その首筋にレオンは舌を這わせた。