私と契約してくれませんか あの、魏無羨が法師と契約した――そんな噂が出回った頃。雲夢蓮花塢では大騒ぎとなっていた。
「魏無羨はいつになったら戻るんだ⁉」
「阿羨が法師と契約した、なんて噂が出ているけれど……本当かしら」
「あの子の魔力は随一だ。召喚されたとしても逃げる事が出来るだろうに」
三者三様の反応のいずれも、家族同然の存在である魏無羨を気に掛けていた。そう、彼は「モス」と呼ばれる種族の一人である。雲夢蓮花塢に住む全員が同じ種族であるが、彼等と同居する魏無羨は種族の中でも特別視される程、魔力が強いのだ。モスでは通常使えないはずの、高魔力が必要とされる難しい魔法も使えるので、中級の法師よりかは強いだろう。
そんな彼が、ある日突然姿を消した。
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