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    全文続けて読みたい方向け。
    現代AU忘羨で、配信者魏嬰と視聴者藍湛です。出会い編。もしかしたら続くかも知れない。
    ※2人の会話はありません!

    #忘羨
    WangXian

    忘羨ワンドロ「AU」 激務に残業と続いた藍忘機は、時折ふらつきながらも何とか自宅に帰宅した。藍忘機は一族が代々経営している会社に入社し、現在は営業部の部長を務めている。社会勉強も兼ねて平社員として入社してから早十年と少し、着実にキャリアを積み重ねて今の地位を手に入れたが、当然その分、一気に仕事量が増えた。その上新卒で採用された社員達がミスを頻発する。その対処に追われる日も多い上、新規のプロジェクトを営業部が見事に掴んだ事で、藍忘機が営業部の代表としてそのプロジェクトに参加する事が決まったのだ。お陰で、藍忘機はここ数日会社に泊まり込み、プロジェクト関係の仕事と共に部下のミスのカバー等、ひたすら仕事に追われていた。そもそも自宅に帰る事も出来たが、仕事が終わる頃には時計の短針が天辺を通り過ぎていて終電も逃しているし、朝は八時前から出勤しないといけない事から泊まり込んでいたのだ。幸いにも泊まり込む社員の為の仮眠室やシャワーブースが設置されていたお陰で、藍忘機は近くのコンビニエンスストアで食事を買って泊まり込んでいたのだ。元々、何かあった時の為にスーツを何着か職場に持ち込んでいた事も幸いして、藍忘機が職場に泊まり込んでいる事を部下に知られる事もなかった。──そんな生活を数日送り、漸く連休前日を迎えた藍忘機は数日振りに自宅へと帰って来た。洗濯をしないと、や、食事を摂らないと、と脳内で考えてはいたものの身体は疲労を訴えている。このままベッドに直行して眠ってしまいたいという衝動に駆られるが、すんでのところで堪えて風呂に入る事を選んだ。毎朝シャワーを浴びていたが、そろそろ湯船が恋しかったのだ。大量の書類が入った鞄と、数日分の着替えを入れた袋をソファへ置いた藍忘機は浴室へ向かった。湯船を掃除し、湯を張る。温度と湯の量を設定しておけば、自動で湯を張ってくれるこの機能が大変有難い。大量の湯が出始めたのを確認した藍忘機は一度浴室を出て、居間へと戻る。そうして長椅子に置いた鞄の中からスマートフォンを取り出した。厳格な叔父と共に住んでいた実家では考えられなかった事だが、最近の藍忘機はスマートフォンを浴室に持ち込んでいる。重要な連絡に直ぐ目を通せるようにという名目ではあるが、実の所は、動画配信アプリを開く為だ。スマートフォンを片手に持ったまま、脱衣所で身に付けていた服を直ぐに脱いで浴室へ入る。スマートフォンが湯船に落ちず、湯が掛かる事もない窓の近くに置いて髪から順に洗っていく。熱めの湯が気持ち良い。藍忘機は頭からシャワーの湯を被りながら、ふう、と一息吐いた。
    「……疲れた」
     藍忘機らしからぬ発言が、口を衝いて漏れ出る。自分で紡いだ言葉なのに思わず驚いていれば、浴室内に音が鳴り響いた。湯船に湯を張れた事を知らせる音で、藍忘機は身体に乗せたままだった泡をシャワーで洗い流して湯船にそっと足を入れる。此方は長湯出来るように少し低い温度に設定したが、冷たさは感じない事を確認してから身体を湯船の中に沈める。そうして、スマートフォンを手に取り、動画配信アプリを開いた。そうして登録済のチャンネルから新しくアップロードされた動画を確認する。──魏嬰と名乗っている男の、個人の動画チャンネル。藍忘機はそのチャンネルの視聴者だ。偶々見掛けたこのチャンネルの配信者があまりにも可愛い笑顔で笑っていて、気が付けばチャンネル登録をしていた。各地の動物園のチャンネルが並ぶ中、そのチャンネルのアイコンがやけに目立っている。どうやら、元々は〝双傑〟というコンビで動画を配信していたようだが、それぞれで個人のチャンネルを持ったらしい。試しにメインチャンネルと書かれた双傑のチャンネルを見たが、魏嬰とコンビを組んでいる江澄という名の男が何となく気に食わなかったから、このメインチャンネルは余程の事がない限り観ていない。そうしてこの魏嬰という配信者は藍忘機より若く、動画配信をしながら大学に通っているらしい。それでも殆ど毎日配信しているのだから、一体どんな生活をしているのだろう、と不思議で堪らない。毎日そう思いながら、藍忘機は今日アップロードされたばかりの動画に目を通した。今日は木曜日で、視聴者と一時間喋る、という内容の生配信である。生配信は夕方に行われる事が多く、普段の藍忘機は仕事帰りにその生配信を観ていた。いつもは投げ銭というシステムで高額を投げている。それを今日は観れなかったと、眉尻が下がる。
    『こんばんは〜! 双傑の魏嬰です! 今日も配信を始めるぞ! どれどれ……ん? SNSをやるか? そうだな、何かやろうかな? よし、アカウント作るぞ!』
    『おい、勝手に決めるな』
    『そうそう! 今日は江澄も家に居るんだよな、偶に顔出すかも。別にSNSぐらい許可出ると思うけど』
     藍忘機が江澄を気に食わない一番の理由は、江澄が魏嬰と一緒に暮らしている事だ。どうやら義兄弟らしく、大学進学を機に一緒に実家を出てルームシェアしているらしい。ああ、気に食わない。そう思いながら、江澄の声が聞こえる度に十秒先送りする。
    『よし、出来た! アカウントのIDはええっと、WeiYing。WとYは大文字な!』
     その言葉に、藍忘機は一度動画を止めてSNSアプリをスマートフォンへインストールする。こういった類のアプリは一生、使わないと思っていたが。そう思いながら、インストールされたアプリを開いてアカウントを作る。携帯番号を入れてからIDとパスワードを設定する。自己紹介を書けと表示され、藍忘機は少し悩んだ後にウサギが好きである事と会社員である事を書いておいた。名前は、LW。アイコンは実家の裏庭で何故だか繁殖していた白いウサギにしておく。そうして、魏嬰が言っていたIDを検索して、ヒットしたアカウントをフォローした。本物のようで、既にフォロワーが三千人を超えている。双傑の人気は高いようで、動画の閲覧数は常に三万を超えているし、藍忘機程高額ではないが投げ銭が飛び交っている。唯一魏嬰がフォローしているのは江澄で、どうやら同時にアカウントを作ったようだ。其方はフォローせずに、一度アプリを閉じて動画配信アプリに戻る。そうして再生ボタンを押せば、魏嬰が何かが書かれたホワイトボードを掲げた。
    『SNSも始めたし、前々から立てていた企画をします! その名も、視聴者さんと会って一日デート、だ!』
     その言葉に、藍忘機はうっかりスマートフォンを落とす所だった。魏嬰が、視聴者の誰かと一日デートする、だと? 信じられないと目を見開いてしまったが、条件を聞く内に段々と冷静になって来た。──曰く、普段から生配信でコメントをしてくれる視聴者で、新しく開設されたSNSアカウントをフォローしている人。非公開とやらに設定しているアカウントは選ばれず、動画配信アプリでの名前と同じ名前でないと駄目、だそうだ。先程設定した名前は動画配信アプリでも使っている物で、これにして良かったと思わず胸を撫で下ろした。選ばれた人には後日、ダイレクトメッセージとやらを送られて来るらしく、それを待つしかないそうだ。条件を確認した藍忘機は、これは自分も選ばれる可能性があると安心した。選ばれると良いのだが、と其の儘配信を観続けていれば、入れたばかりのSNSアプリから一件のピコンと通知が来た。何だろうと通知をタップした藍忘機は、それを確認してピシリと固まった。再び、スマートフォンを湯船に落としそうになる。
    『こんばんは! 魏嬰です。企画は知ってますか? 視聴者さんとデートする事になったので、是非LWさんとお会いしたいです。可能であれば、ご都合を教えてください!』
     ダイレクトメッセージとやらに届いた一通の連絡。それはまさしく魏嬰からの物で、本当に本人からだろうかとアイコンをタップした。フォロー中の、本物の魏嬰である。文章を三度読み直した藍忘機は、深く息を吐いた。──これは、現実か? 震える指でキーボードを叩き、文字を打ち込む。
    『こんばんは、LWです。ご連絡ありがとうございます。企画は先程拝見しました。本当に私で良いのでしょうか?』
     素っ気ない文章になってしまっただろうか、と不安になりながら藍忘機は返信を送った。するとメッセージの下にある小さなチェックマークが青色に変わる。これは何のマークだろうか? そう考えていれば、ピコンと音が鳴り、魏嬰からの新規メッセージが届いた。
    『返信早くて驚いた! LWさんが良いと思って思って連絡したんです。ぜひお会いしたいです』
     文末にウサギの絵文字が添えてある。何とも可愛らしい文章だと思いながら、藍忘機は直近の予定を思い出す。来週からはプロジェクトが本格的に進み始める筈だから、今週中なら時間を作れる、ような。そう思い、藍忘機は文字を打ち込んだ。
    「今週の土日であればお会い出来ます」
     魏嬰のように絵文字の一つや二つ、入れるべきだっただろうかと思いながら、送信してしまったメッセージを見る。するとまた直ぐにチェックマークが青色に変わり、一分も経たずに返信が来る。それなら、土曜日の朝八時に集合でどうだろう、と書かれていて、特に問題はないから大丈夫です、と返しておく。そうして一度アプリを閉じた。スマートフォンを窓の所に戻して、ふうーっ、と長い息を吐く。
    「……嘘だろう」
     こんな事が本当にあるなんて。一体全体、どうなっているのだ。屹度、これは夢だろう。疲れ過ぎて風呂の中でうっかり眠ってしまって、見た夢だ。そう思い、そろそろと頬を摘んでみる。すると其処から痛みが伝わり、これが夢ではないと訴えられた。有り得ない、と首を振り、湯船から上がる。そうしてスマートフォンを片手に浴室を出た。

     ──これは、配信者と視聴者の、有り得ない出会いの始まりである。
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