Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    01771G

    @01771G

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 44

    01771G

    ☆quiet follow

    注意) 日本語が母語ではない人が書きました。何か間違いを見つけたら是非教えて下さい!

    【フェヒュ】飴とキスフェルディナントは共用厨房を借りてしばらくの間騒いでいた。廊下を通る途中、その光景を目にしたヒューベルトは、最初はそのまま通り過ぎた。しかし、1時間後も厨房に止まっているフェルディナントを見てからは気になってしまって厨房に足を踏み入れた。

    「食事の準備をするにはまだ早いですが」

    「ああ、ヒューベルト!」

    うれしい顔で明るく笑うフェルディナントのそばからは甘くて香ばしいシナモンの香りが漂っていた。

    「おや?念入りに何をお作りかと思ったら…」

    机の上に置かれている広い板の中に入っているのは、蜂蜜と香辛料が混ざった透明な飴だった。フェルディナントは右手に小さな金槌を持っていた。

    「ああ、飴を作っていた。この程度ならよく冷めて固まったようだな」

    フェルディナントは綿布を敷いておいた上に板をひっくり返して中身を抜き取った。そして小さな金槌と一対のように見える小さなのみを飴の板に当てて割り始めた。

    「今回ガルグ・マクに入ってきた避難民の中には子どもたちが多いとドロテアから聞いた。大したことではないけどお菓子をあげたくて…」

    「左様ですか」

    ヒューベルトはフェルディナントの細かい作業を根気よく見守った。半分ほど飴を割って、のみを握り直していたフェルディナントはヒューベルトの方を見た。

    「はっはは、これは悪い。作業が終わるにはもっと時間がかかる気がする」

    「ここにいるのは私の意思です」

    「待っている間に一つ如何かな?」

    大人しく待っている子どもにご褒美をあげるように、腕を組んでしょんぼりと立ったヒューベルトに飴のかけらを差し出した。ヒューベルトはそれをじっと見て、遠慮なく頭を下げて咥えた。がちゃがちゃと飴が歯に当たって小さな音を立てた。

    「どう?」

    フェルディナントはかなり自信満々な笑みを浮かべた。

    「甘いですな」

    乾燥していた口の中に唾がたまった。

    「子どもたちなら喜ぶでしょう」

    「そうだな」

    フェルディナントは再び飴割れに熱中した。ヒューベルトは左の頬に噛んでいた飴を舌を転がして右の頬に送った。

    「フェルディナント殿」

    「うむ?」

    「そろそろ席を外します」

    「すまない、待たせるばかり...行く前に飴をもう一つどうだ」

    「飴ならまだ口の中に残ってます。それに、これ以上子どもたちの分を横取りすることは出来ません」

    ヒューベルトの手袋をした手が、のみを握っているフェルディナントの素手の上に重なった。

    「私の分だけ頂きます」

    フェルディナントが首を振り向いてヒューベルトの顔を確認する前に、顎を引っ張られ口づけされた。軽いキスだったが、フェルディナントの唇には粘り気が残った。唇を舐めてみたら甘い味がした。フェルディナントの奥歯の内側から唾液が湧いた。

    「それでは…」

    「ヒューベルト…忙しいのか」

    フェルディナントは向き直そうとするヒューベルトの腕を掴まえた。

    「私はいつも忙しいですが。エーデルガルト様に報告することもありますし」

    「...飴を咥えたままではちゃんと喋らないんだろ?口に残った飴でも全部食べてから行くのは如何だろ」

    「くくく、一理あるお話ですな」

    「そう...私が手伝ってあげるから...」

    「...それでは、遠慮なく」

    実は、飴を咥えたままでも彼の発音が乱れることはなかった。この会話が単なる口実に過ぎないということも二人とも知っていた。

    フェルディナントは台所の奥深くにある高い棚にヒューベルトを連れて行った。廊下側から二人の姿が見えないように。


    「飴はどのくらい残っているの?」

    ヒューベルトは口を開いて舌を見せた。舌の上には唾液で更に透明になった飴のかけらが置かれていた。そういえばヒューベルトは甘党ではなかった。ヒューベルトの口の中に長くとどまっていた飴は、角がすべて丸くなったものの、その大きさはほぼ変わらなかった。

    「全部食べるには少し時間が必要かもね」

    「それは貴殿の努力次第です」

    ヒューベルトの体温で温められた飴がフェルディナントの口の中に滑り込んだ。飴と一緒に入ってきた唾液は甘さに満ちていた。フェルディナントは何度か舌で飴を転がしてからヒューベルトの首筋を引っ張った。

    「うっ...うん....」

    ヒューベルトの心地よい声がのどから響いた。フェルディナントの舌がヒューベルトの口の中を掻き回した。飴のかけらが誤って喉に入らないように、ゆっくりと二人の舌がもつれた。かたかたと口蓋と歯の内側につく飴のおかげで、普段より大量の唾液が口に溜まっていた。鼻で呼吸するだけでは息が切れて、口の中の唾液がごくりと自然に吸い込まれた。肌に伝わるよりは少し高くてじめじめした熱気がそのままお腹に到達した。

    「あっ」

    ヒューベルトの後頭部がことんと軽く壁に当たった。しっかりとついていた唇が隙間を見せると、その間から唾が漏れ出た。外気が口の中に入り、甘さに浸かっていた粘膜を刺激した。フェルディナントとヒューベルト、誰の口にも飴は残っていなかった。

    「はぁ…フェルディナント殿…」

    ヒューベルトは息を吐きながら恋人の名前を呼んだ。その甘い音色にまた口づけしたくなったフェルディナントは、顔を近づけた。

    「実は···エーデルガルト様にご報告があるというのは嘘で···あっ」

    フェルディナントはヒューベルトの口元と顎に粘り強く跡を残して流れた唾を舌でゆっくり舐めた。

    「もう分かってる。じゃ、忙しいって事は···?」

    腰に腕を巻きながら寄り添ってくるフェルディナントを彼はそっと押し出した。

    「残念ながら、それは事実です。貴殿もよくご存知じゃないですか。でも…」

    「でも…?」

    「フェルディナント殿の…すさびが終わってからしばらく位なら、時間を空けることはできます」

    甘ったるい休息でつい先まで飴を割っていた事をすっかり忘れていた。フェルディナントは少し困ったように笑いながら頬を掻いた。

    「実はさ…あの飴版がもう一つあるんだ」

    「……ふう…私にも金槌とのみをください」


    「ありがとう!君のおかげで今日の夕食時間に食堂に来た子どもたちにすぐ配れるようになったよ」

    子どもたちもきっと喜ぶだろうと言うフェルディナントは満面の笑みを浮かべた。二人だけの密かな熱さはどこへ行ったのか、フェルディナントはヒューベルトに、食事時間になったら一緒に飴を配ってやろうという提案までした。ヒューベルトは少し不満そうな顔で返事に代えた。

    しかし、その日の夕食の時間に食堂に入った人々は、日差しのように微笑むフェルディナントと、飴ではなく毒でも食わせようとする空気を漂わせながら立っているヒューベルト、二人が織り成す対照的な雰囲気を見物することができた。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works