オートエロティズム闇√みんな大人になってからの飲み会。元小手指メンバーとどんちゃん騒ぎ。
二重人格だった要圭は、高校2年生の頃から智将要圭のまま。アホの方と会えてないので、ちょっと寂しいねと話題に出す。
智将はすっかり二重人格だった頃のことを忘れているようで、記憶が抜け落ちた部分については喋らない。彼は「憶えてないな」「そうだったか?」と返すだけでやはり何も思い出せないようだった。
彼が二重人格だった頃の証拠など残っていないので、みんなの記憶の中にのみ残るアホの方の要圭。
脳の負担が減って肉体と精神が安定したのだからいい事ではあるのだが。
清峰葉流火はいつも「圭は圭」と言って要圭を区別しなかった。
智将が要圭であることは間違いない。しかしあの花が綻ぶような笑顔が見れなくなってしまったことに関しては物足りなさを感じている。
智将を見るに人格が統合されたわけではなさそう。肉体がそこにあるため、出てこなくなったアホの方の行方は誰にも分からない。長い間眠っているのか、はたまた消えてしまったのか。
葉流火の兄、葉流馬からの贈り物を智将へ渡す。アホの方が好きだったももなっちの新作AV。いらないと言う智将に無理矢理押し付ける。これで少しでも出てきてくれたらいいなという気持ち。
飲み会はお開きに。
カバンにツッコまれたAVを仕方なく家に持ち帰る智将。智将はすでに自立しているので一人暮らし。の、はずだが。
扉の開閉音に気付き、智将を出迎える存在が姿を現す。
「おかえり智将」
「ただいま主人」
そこには行方知れずになった主人格の方の要圭がいた。
ジャラ、と金属の音が響く。足枷の鎖は部屋と繋がっている。玄関扉には届かない長さ。
足枷を付けてられているので主人格はいつも長めのシャツか、ロングワンピースしか着てない。パンツも履きたいがそれはもう諦めた。
「いい子にしてたか」
「してたよ。智将お酒くさい」
智将は主人格をだっこしてお風呂場へ運ぶ。一緒にお風呂に入ってチュッチュッしながら洗いっこ。
お風呂から上がった主人格が智将のカバンからももなっちの新作を見付ける。
「ももなっちの新作だ〜! って、ちょっ、あー!!」
主人格からAVを取り上げてバキバキに折ってしまう智将。
「主人には必要ないだろ」
とニッコリ。
「それハルちゃんから貰ったんでしょ。おれのじゃん。酷い〜!」
拗ねる主人格をだっこしてベットに連れていく。代わりに好きなゲーム買ってやるから、とご機嫌を取ろうとする智将。
「……ゲームじゃなくて、たまにはお出掛けしたい」
「俺から逃げる気か?」
「そんなことしないって。疑いすぎ!」
「外は危ないっていつも言ってるだろう。主人は俺と違って男に狙われやすいんだから」
「まだあの時のこと根に持ってんの? 未遂だったじゃん」
「そうじゃなかったら殺してた」
「物騒だなぁ。おれイヤだからね、殺人犯としてニュースになるの。圭ちゃんはラブ&ピースで生きたいの」
「分かってる。アイツらのことは半殺しで許してやったろ」
「半殺しというか八割方ボコボコにしてた気がするけど」
全員病院送りにしてたし皆殺しでもある。ちなみにおはぎの話ではない。
分裂したての頃、主人格が他校の弱小野球部員から集団レイプされかけた話である。主人格はあの時怖かったがレイプ魔たちよりも、助けに来てくれた智将の方がキレてて怖かった。本当に殺してしまうんじゃないかと思うくらいオーバーキルしていたからだ。しかも一人で複数人を相手に、である。彼らからしたら智将が本物のバケモノに見えたであろう。
その後、他校生たちの余罪も暴き主犯含め関わった人間全員を少年院にぶち込んだ智将はやっと落ち着きを取り戻した。しかし主人格が襲われたことがトラウマになったらしく主人格を軟禁するという手段に出る。
おれの人権どこいったんだと思いつつ、襲われた当事者よりも智将が怖がっていたため大人しく軟禁されている主人格。
軟禁生活中に、智将に抱かれて女の子みたいな躰になってしまったりと色々と変化はあったが、友人たちとは交流が途絶えたまま。寂しいし何より退屈だった。
「おれが襲われるってことは智将も襲われる可能性があるってことじゃん」と抗議したこともある。けれど智将は「それはあり得ないし、仮に過去のことを恨まれて集団リンチされそうになったとしても主人と違って撃退出来るから問題ない」と論破された。
拘束されて動けなかったのは事実なのでぐうの音も出ない主人格。
そんなわけで、智将が買ったマンションの一室で毎日ぐうたらと過ごしている。やれることと言えば家事くらいなので、智将のために無駄に手間をかけた料理を作ったりしている。
足枷さえ無ければ夫婦の生活ようだ。えっちなことはしてるし、智将を安心させてあげたくて恋人にもなったので同棲中とも言えるが、主人格が不自由なことに変わりはない。
でも、主人格の足枷を見て満足そうにしてる智将を見ると、仕方ないなぁと彼を許してしまう。
ベットの上でバスローブを捲られ、今日も智将に抱かれる主人格。どこにも行けないのに、どこにも行くなと言う智将が可愛くてキスをする。
女の子にモテるのに、足枷を付けられた"自分"よりも"自分"に縛りつけられている智将が可哀想で愛おしかった。
終