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    ベリーあつふみ

    @berryatsufumi

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    ベリーあつふみ

    ☆ติดตามเงียบๆ

    葉流火→←主人←智将

    七夕 笹飾りの短冊を手に取る。そこには『もっと野球が上手くなれますように』とデカデカと下手な字で書かれていた。
     それに懐かしさを感じて、遠い記憶が蘇る。おれも子供の頃に同じことを書いた気がする。昔のことは飛び飛びにしか思い出せないが幼馴染も似たような願い事を書いていた。
     心から野球を楽しんで、上達を望み、それだけに打ち込んできたことは過去の自分が書いた絶対ノートからでも明らかだ。そしてそれは現在いまにも言えること。
     小手指高校でゼロから野球を学び、悔しさと喜びと楽しさと知ってしまったから地味でキツい練習も続けている。
     おれは昔から変わってない。だからどんなに忘れたって結局昔と同じように愛してしまうのだ。

    ▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁

    「葉流火の将来を台無しにするつもりか」
    「…………」
    「俺は絶対に許さない。お前はことの重大さを何も分かっちゃいないんだ」
    「……わかってるよ……」
    「なら、自分がすべきことも分かってるよな?」
    「うん……」
    「幸い、葉流火はまだ自覚してない。お前が余計なことを言わなければアイツは野球だけに集中出来る。お前の望みだって叶うんだ」
    「そうだね……」
    「俺はお前の為にも言ってるんだぞ。くれぐれも一時的な感情で葉流火の将来を奪うことだけはするなよ」
    「そんな言い方しなくても……」
    「事実だろ。それに俺とお前の思考回路は全く違う。感情もな。後先を考えてないアホに釘を刺しておかないと何を仕出かすか分かったもんじゃない」
    「本当に同じ気持ちじゃないの? 智将はそれで後悔しない?」
    「ほらな。それは有り得ないと何度も言ったのにまだそんなことを言うくらいだ。お前の『分かってる』は全く信用ならん。いい加減その懐疑心は捨てろ」
    「だって、智将はおれじゃん」
    「そうだが、だからといって感情まで共有してる訳じゃない。俺という存在はお前の一部だと前に説明しただろ。頭ではリスクやデメリットを理解出来ているはずだ。感情に振り回されて選択を間違えないために俺は主人のストッパー役を担ってるに過ぎない」
    「うん……」
    「………………」
    「葉流ちゃんのため、だよね?」
    「……あぁ……」
    「そっか。安心した。形は違っても、智将もおれと同じなんだね」
    「………………俺は智将要圭として葉流火を完璧な状態で未来に送り届ける。それが俺のやるべき事であり、使命だ」
    「わかってる、心配しないで。智将の努力を無駄になんてしないから。ねっ?」
    「………………」

     頭の中で別人格に笑いかける。完全な信用とまではいかなくとも約束をすれば少しは納得してくれると思ったのに彼は硬い表情のまま顔を背けた。
     智将の言葉がどこまで本当なのかは分からない。けれど幼馴染の未来を本気で考えていることだけは伝わってくる。捕手として、何より親友として葉流ちゃんのことを一番に考えているに違いない。だから浮ついた感情を持ったおれのことが許せないのだと思う。
     自分自身に冷たくされるのは結構心に来るが彼が怒るのも無理はない。越えてはならない一線というものは必ずある。それがアイデンティティに関わることなら尚更だ。それをおれが揺るがしかねないから不安になって忠告して来たのではないだろうか。

     芽生えたばかりで自分でも信じられないでいた気持ちをこっそりと心の奥にしまう。今の内に蓋をして隠してしまえば誰にも気付かれることはない。あとはこの感情が枯れて土に還るまで待てばいいだけ。簡単なことだ。

    ▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁

     とある日の夕方、梅雨が明けたばかりだというのに急に激しい雨が降り始めた。強風によって殴りつけるようして窓にぶつかっては跳ね返っている。近くで落雷の轟音も鳴り響いていた。

     ついてない。帰宅前にこれでは確実に濡れてしまう。

     しかしここは葉流ちゃん家だ。おれの自宅と近いし傘も借りていくことが出来る。足元は濡れるだろうがそこは仕方ない。筆記用具を片付けてさっそく帰る準備をする。

    「圭、帰るのか?」
    「うん。葉流ちゃん、悪いんだけど傘貸して? 天気予報見てなくて忘れちゃってさ」
    「……泊まってけばいい」
    「親御さんに悪いでしょー?」
    「母さんなら良いって言う」
    「いや、急に言われたら困るって。飯とかさ……」
    「そんなことより圭が外で雷に打たれないか心配」
    「おれは避雷針か」
    「おばさんには今から電話する」
    「あっ、……もぉー!」

     葉流ちゃんが迷いのない動作で固定電話機からウチのババアに電話をかけてしまう。これで強制お泊まりルートになってしまった。
     幼馴染だから何度も泊まったことがあるようでとてもスムーズに幼馴染の家に泊まることが決まるが、過去の記憶が朧げなおれからすると実家のように寛げるわけではない。
     葉流ちゃんの母親はおれを優しく受け入れてくれたがやはり急に世話をかけることになったことが申し訳なくて自宅ではやらない皿洗いを率先してやった。これによって葉流ちゃんが葉流馬さんから「客人に何させてんだ」と怒られてしまったり「さっさと圭くんの寝床の準備をしろ」とドつかれてしまったので慌てて止めに入ったりして過ごす。
     葉流ちゃんは自分のベットでおれと共寝するつもりらしかった。どう考えてもそんなスペースはない。葉流ちゃんは体が大きくなっても子供の時の感覚が抜けないらしい。

     お風呂から上がって葉流ちゃんのパジャマを借りたあと、作ったばかりの小さな笹飾りを眺める。今日はこれを作るために葉流ちゃんの家に寄ったのだ。
     近所で見かけた笹飾りを見て童心に返りたくなったのか、曖昧な記憶を手繰り寄せるようにして折り紙で吹き流しや提灯、星飾りや貝つなぎを作っては笹に括り付けた。書くことが思いつかなかったので短冊は白紙のまま机に置きっぱなしになっている。

    「圭、可愛い」
    「喧嘩売っとんのか」
    「売ってない。本心」

     おれのパジャマ姿を見て真顔でそう言う葉流ちゃんにジト目を向ける。体格が違うのでちょっとブカブカではあるが女の子が男物の服を着るのとは訳が違う。野郎同士の服の貸し借りでトキめく要素なんて無いだろうに。

    「葉流ちゃんって智将にもそういうこと言うの?」
    「え?」
    「いや、なんでもない。忘れて」
    「…………」

     葉流ちゃんがおれに対してアホだの、球捕れうんこだのと馬鹿にした物言いをしてくるのは今に始まったことじゃない。おれの言うことは聞かないけど智将の言うことには従順なのだっておれが記憶喪失になって野球技術を失ってしまったからだし。
     仕方のないことだ。わかっている。でも、どこかで葉流ちゃんを信じきれない自分もいる。
     『圭は圭だ』と言って昔の要圭に戻る必要はないと言っておきながら『捕球音が違う』と言って昔の要圭を求める葉流ちゃん。
     彼が求めているのは幼馴染のおれではなく、捕手としての智将なのではないか。
     おれ個人としても『打倒、智将要圭』を目標に掲げたはいいが記憶が戻らない状態でそれが出来るとは思えなかった。

    「……子供の頃、短冊に何書いたか覚えてる?」

     寝っ転がりながら葉流ちゃんの方を見上げて質問する。葉流ちゃんはコクリと頷いて、机の上に置きっぱなしの短冊に何かを書いておれに見せた。

    「圭とずっと一緒に野球が出来ますようにって書いた」
    「ふふっ。……葉流ちゃんらしい……」

     葉流ちゃんがその短冊を笹に下げてから窓の外を見る。雨雲に覆われていた空が晴れて月が街を見下ろしていた。都内の夜空では星は見えないが彦星と織姫は無事に会えただろうか。

     そろそろ22時になる。葉流ちゃんが寝る時間だ。お喋りをやめないと智将に怒られるから、葉流ちゃんのマットをポフポフ叩いて「寝よ」と言った。

    「圭」
    「ん〜?」

     素直にベットに座った葉流ちゃんが敷布団に寝っ転がるおれの顔をじっと見てくる。意図はわからないがいつものことなので放っておいた。葉流ちゃんは時々こうやっておれを見つめてきては何か言いたげな顔をする。入院している時からこうだったので流石にもう慣れた。

    「今日、雨が降って嬉しかった」
    「ふぅん……?」

     うつらうつらとしながら葉流ちゃんに生返事をする。

    「こういうの遣らずの雨って言うらしい。兄貴が言ってた」
    「……へぇ……?」

     雨が降って嬉しかったなんて彦星と織姫アンチだったの葉流ちゃん。今は晴れてるけど、雨降ってる間は天の川渡れないのに。

    「圭。オレ、昔の圭には言わない。今の圭にしか言わない」

     そりゃあそうでしょうとも。例えば智将が後逸しても『オレの球を二度と後ろに逸らすな』とか言わないでしょ。智将には言わないけどおれには言えることって他にもたくさんあるよね。ちゃんとわかってるよ。

    「うん……わかってる……おやすみ……」
    「おやすみ、圭」

     おれは頷きながら返事をして、葉流ちゃんが布団に入ることを確認にしてから目を閉じる。
     
     過去が苦しくて忘れたいと願ったのは自分なのに思い出したいと願うことはやはり我儘だろうか。過去の醜いことを一瞬でも考えた自分への罰だとするなら今の自分に出来ることを増やすことでしか償えないのかもしれない。

     葉流ちゃんを輝かしい未来へ送り届けられた時、もしくは葉流ちゃんにとっておれが必要で無くなった時におれが存在する理由が無くなるのかもしれない。なんて、答えの出ないことを考えている内に意識が底へ落ちていく。
     同時にまったく気配を感じさせなかった智将が眠るおれを嘲笑った気がした。

    「やっぱり何もわかってねェじゃねェか」

    ▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁

    「……圭?」
    「まだ起きてたのか? さっさと寝ろ葉流火」

     ガバッと起き上がる葉流火へ二度ほど払い除けるように手を動かす。

    「主人はもう寝たぞ」
    「あぁ……昔の圭……」
    「そう、昔の俺な」

     葉流火はもう一度頭を枕につける。いつもならすぐに寝るのに今日は寝付きが悪いのか妙な質問をしてきた。

    「圭は圭?」
    「……どういう意味だ」
    「昔の圭も今の圭も同じ圭?」
    「当たり前だろ。主人は忘れてるだけだ」
    「でも、違う気がする……記憶が戻ったら同じになる……?」
    「………………」
     
     普段は鈍いくせに主人のこととなると勘が働くのか、俺に探りを入れる葉流火に何と答えてやるべきか考える。いつものように無理矢理納得させるか適当にはぐらかすつもりでいた。葉流火があんなことを言うまでは。

    「圭、怒ってる?」
    「それは葉流火がそう感じるってだけの話だろ。怒ってねェよ」
    「前はこうじゃなかった。どっちも圭だから変わらないって、本気でそう思ってた……」
    「……どうしたんだお前」
    「わかんない。今の圭がよく笑ってくれるからオレも笑えるようになった気がする。でも、変な気持ちにもなる」
    「……変な?」
    「昔の圭にはそうならない」
    「…………」

     良くない兆候だ。葉流火が俺たちを区別出来始めている。軌道修正してやらなくては。

    「いい事を教えてやる」
    「?」
    「俺も葉流火にはそうならない。前と同じだ。俺たちの間では何も変わっちゃいない」
    「うん」
    「お前はまだあのアホに対する免疫のようなものが出来ていないだけだ。じきに慣れる」
    「そうなのかな」
    「これからも他のことは考えるな。俺のことも周りのことも気にせず投球だけに集中しろ」
    「……うん……」

     余計な感情はプレーの質が下がる。結果を出すことが全てであり、そこに個人的な感情など必要ない。だからこれは葉流火と主人のためなのだ。けして私欲で彼らを縛っているのではない。

     ーー本当にそうか? 微塵も欲が含まれてないと言えるのか?

     見て見ぬふりをしてきた主人への執着が真っ黒い化け物の形をして俺に語りかけてくる。

     ーー葉流火に主人を取られたくないだけなんだろ? 主人を傷付けて、傷付けたことも忘れた葉流火を憎んでいる。

     違う。俺はアイツを憎んでなんかいない。あれはお互い餓鬼だっただけだ。

     ーーもし、葉流火と主人の蟠りが無くなったらお前はアイツらを認めてやるのか?

     その頃には俺は消えてる。あとはアイツら次第だろ。

     ーー嘘つきめ。主人がお前を必要としなくなっても、お前は主人から離れられやしないさ。

     うるさい!!

     己の中の化け物に叫んで追い払う。真っ黒い影はケタケタと嗤いながら消えていった。



    ▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁◇▷◁

    補足説明

    葉流火⇨彦星
    主人格のことが好きだが無自覚。智将にマインドコントロールされているので自分の気持ちについてあまり深く考えたことがない。主人格に好き好きアピールするのはほとんど無意識。上手く伝わらないことを歯痒く思ってる。

    主人⇨織姫
    葉流火のことが好きだと自覚済み。葉流火から重ための感情を向けられていることに気付いてる。しかし自信が持てず会話等ですれ違いが生じる。葉流火の将来のために想いをしまいこむ。

    智将⇨天帝
    主人格に強く執着しているのにそんな自分を認められない。葉流火と主人が両片想いだと知りながら二人が恋人同士にならないよう抑えつけていてこれを正当化している。実態は独占欲の現れ。己の主人への感情を不毛だと思いながらその実、主人を心から欲している。
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