[ヴォルバロ]小夜曲死神の長き不在「貴公は十分に使命を果たしてきた」
青白い顔で俯く彼の肩を抱き、耳元で囁く。
「少しばかり休んだとて、いったい誰に咎められよう」
肩から二の腕を撫でれば、荒れた唇から小さな息が漏れた。ひたすらに磨耗し法廷を去った彼は、あと一押しで壊れてしまいそうな風情だった。
――本当にまだ死神の御業は必要か?
――既に役目は果たされたのでは?
――もはや彼は。
「いつでも戻ってきたまえ……待っている」
脳裏に聞こえる声を黙殺し、死神の帰還を希った。
しかし鳥は羽ばたく この[[rb:中庭 > コート]]には、一羽の小鳥がいる。
最初の歌こそ覚束なかったが、今やロンドンで最も美しい声で囀る私の[[rb:小夜啼鳥 > ナイチンゲール]]。[[rb:彼の兄 > クリムト]]が歌うのをやめてしまった歌を、よく覚えて歌っている。
2644