-題名未定- 重い瞼を開くと目の前には見慣れない天井が広がり、藍曦臣は呆然とした。
当惑する感情の一方、頭は素早く回転し、昨晩の行動を思い返す。観音廰での一件以降、藍曦臣は外部との接触を全て絶ち、閉関している。一日の大半を雲深不知処内の自室である寒室で過ごし、外に出ることは滅多にない。閉関当初こそ、藍啓仁の命令で内々の会議や内弟子の前に顔を出してはいたが、普段と変わらない姿であろうと努めてはいても、翳りを帯びた気を隠すことはできなかった。
白を通り越して青くなった肌に黒ずんだ目元、絃が緩んだ琴のような声、何枚にも重ねた衣が酷く重たそうで、そんな藍曦臣を見た周囲の人々は戸惑い、表情を硬くする。そのような状態だったため、藍啓仁は頭を抱えると鳩尾を押さえ、「暫くは顔を出さなくてもよい」と言った。そのため、ここ数ヶ月寒室から出たことがない。
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