意味のない約束「僕の美徳の一つは、約束を守ることです」
仰々しいその口ぶりに、反吐が出そうだった。簡単に言ってくれるな。約束なんて、気軽にするものではない。
鳴海は舌を打ち、保科の薄笑いを浮かべた顔から目を逸らした。ついさっきまで嘘くさい愛の言葉を囁いていたその口は、今はただ鳴海に請願するように「信じて」と宣う。まだ互いの体温が身体に残ったままではあったが、鳴海の心は冷め切っていた。
何の根拠もなしに信じるなんてあり得ないだろう。況してや、他部隊の副隊長でありながら、気安く鳴海にまとわりついて来るようなこんな男のことなんて。
「ほな僕、そろそろ帰ろかな。家着いたらメールしますね」
「知るか。黙って帰れ」
「そう言わんと。今日もありがとうございました」
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