追っ手の目を逃れ、群から離れた一頭の魔獣が疾駆する。ある一点を目掛け、脇目も振らず駆けていく。その鋭い視線は、先刻彼らの獲物を横取りした、より脆弱な者のもとへ。しかしながら標的となっている少女はその接近に気付くも臆することなく、彼女よりも更に脆弱な存在――村の少年をその背に護りながら、魔獣を睨みつけた。
誤って森に迷い込み、魔獣の群に食われそうになっていた少年を発見、保護したまではいいが、その所為で怒り狂った魔獣共と少女の従えるサーヴァント達との間で戦闘状態となっていた。もっとも、本来ならば前線からは下がって指示を出すことに徹するべき少女がこうして少年と共に孤立してしまったのは、偏に少女が魔獣の牙から少年を護ろうと、サーヴァント達の制止を振り切って先行してしまったからなのだが。
1238