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    tate_1aot

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    tate_1aot

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    エアブーのネップリにしたやつ。マスターちゃんご無事がやりたかった。
    魔獣の首が飛ぶので注意…

     追っ手の目を逃れ、群から離れた一頭の魔獣が疾駆する。ある一点を目掛け、脇目も振らず駆けていく。その鋭い視線は、先刻彼らの獲物を横取りした、より脆弱な者のもとへ。しかしながら標的となっている少女はその接近に気付くも臆することなく、彼女よりも更に脆弱な存在――村の少年をその背に護りながら、魔獣を睨みつけた。
     
     誤って森に迷い込み、魔獣の群に食われそうになっていた少年を発見、保護したまではいいが、その所為で怒り狂った魔獣共と少女の従えるサーヴァント達との間で戦闘状態となっていた。もっとも、本来ならば前線からは下がって指示を出すことに徹するべき少女がこうして少年と共に孤立してしまったのは、偏に少女が魔獣の牙から少年を護ろうと、サーヴァント達の制止を振り切って先行してしまったからなのだが。
     
     少女は無意識に、自身の右肩に手を添える。衣服が裂けたそこからは、じんわりと鮮血がにじみ出ていた。魔獣から少年をかばったときに負った傷だ。これの所為で、いくら地点を移動しようとも、深い茂みに身を隠そうとも、魔獣共はその血の臭いを嗅ぎつけ、執拗に追いかけて来るのである。
     魔獣の鋭い爪が、牙が、少女に迫る。それらが届く寸前、彼女は一つ息を吸い込むと、その右手を掲げ、叫んだ。手の甲に刻まれた赤い徴(しるし)が輝く。
    「来い、セイバー!」
     すると辺りが光に包まれ、男がまるで瞬間移動でもしてきたかのように忽然と現れて、魔獣と少女の間に割り込んだ。
     青灰の短髪に、黒の外套姿。一見洋風の出で立ちをしている男だが、革の指ぬき手袋を纏った手には、その洋装にはおよそ不釣り合いな、一振りの日本刀が握られていた。
     刹那、男は鞘に納まったままの刀で魔獣の頭部を横薙ぎに殴打する。横っ面に強烈な一撃をもらった魔獣は衝撃で弾き飛ばされ、導線上にあった木に激突した。通常の獣であればこれで事切れるところであるが、魔の力に満ちたそれはよろめきながらも立ち上がり、かぶりを振ると、唸り声を上げながら体勢を低くし、応戦の姿勢をとろうとする。
     濁った金の双眸は大きく見開かれ、男の一挙一動を一つも逃すことなく見据えていた。はずだった。
     突如、完全に視界に捉えていたはずの男との距離が急激に詰まる。自身の認識していた距離感と大きく乖離したことで、魔獣は一瞬たじろいだ。男はその隙を見逃さない。強く踏み込み、至近距離まで詰め寄ると、今度は音もなく鞘が払われ、現れた白刃が閃く。高速で繰り出された斬撃は吸い込まれるかの如く正確に、魔獣の頸を捉え、斬り飛ばした。血煙を上げながら、胴体から自由になった魔獣の頭部はごろごろと地面を転がっていく。
     男は浅く一息つくと、付着した血液を振り払い刀を納めた。
    「……雑魚が」
     小さく独りごちて、頬にもわずかに散った赤を煩わしそうに袖で拭う。
     そうして男は少女の方へと向き直り、いつも通りの軽薄な笑みを浮かべ、問うた。
    「さて……マスターちゃん、ご無事?」
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