求婚事件2清河に帰った後、孟瑶は機嫌がすこぶるよかった。貰った花束は執務室にある孟瑶の机に花瓶を置いて入れていた。毎日それを見て微笑む孟瑶。それに反し、明玦の機嫌は最悪だった。誰が見てもわかるくらいには。あまりにも機嫌が悪いため、とうとう刀霊の影響が出たのではと清河聶氏の修士達の間で噂されていた。
明玦は気持ちを落ち着かせるため、外で瞑想していた。誰かの足音がしたため、目を開けると孟瑶が竹筒と身体を拭く布を持って立っていた。
「お邪魔でしたか」
「いや、ちょうどきりがついたところだ」
孟瑶は持ってきたものを明玦に渡す。
「何か用でもあるのか」
「いえ、ただ最近ゆっくり話す機会がなかったので」
孟瑶は周りの修士達に明玦の不機嫌をなんとかしてほしいと懇願されて会いに来たのだが、どう切り出すべきか悩んでいた。すると明玦は立ち上がり口を開く。
「おまえ、返事はどうする気だ」
「返事?…ああ、この前の」
まさか自分の話題を振ってくるとは思わず驚いた後、孟瑶は恥ずかしそうに俯いた。その様子を見た明玦は先ほど瞑想で静めた気持ちが再度沸くのを感じる。
「昔言っていったな、誰かに必要とされ認めてもらいたかっただけだと。おまえは、必要とされ認めてもらえれば誰でもいいのか。」
「そんなことは…」
「秦宗主のご息女の時もそうだったな。あの公子とまったく同じだ」
「何が、言いたいのですか」
冷ややかな声で言う孟瑶。明玦が今から言う言葉は孟瑶を傷つける言葉なのではと、孟瑶は心臓が苦しくなる。
「…でも、いいのか」
孟瑶が聞き取れない音量で明玦は何か呟く。孟瑶は聞き取れず、俯いた顔を上げ明玦の方を見る。
「誰でもいいなら、曦臣でも、懐桑でもいいのか」
明玦は拗ねていた。そして、
「俺でもいいのか」
「は」
孟瑶は情けない声を思わず出してしまった。