秒針は並走する きっかけは、駅前のファッションビルでたまたま手にした福引の抽選券だった。中学校在学時から愛用していたスニーカーがいよいよ足に合わなくなり、新しいものを購入するために立ち寄ったシューズショップの店員から会計時に受け取ったものだ。券の表面には、3,000円のお買い物でワンチャンス、の文字が躍る。極力低廉な商品を選んだ僕に、ツーチャンスは無いらしい。
しかし僕は、そのワンチャンスをものにした。ビルのエントランスホールに設けられた抽選会場で、ポケットティッシュを受け取るつもりで引いたくじを係員に手渡したところ、一拍置いて「おめでとうございます、2等です」と明るい声が響いたのだ。そして、2等ってなんだっけと傍らの掲示を確認し、自分の目を疑うことになる。
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