【薫零】キスの日「薫くん」
次のライブはどのくらいのキャパの箱がいいか、どういうコンセプトにするかと話していた零の口がいつの間にか閉じられていて、少し目線を上げれば呆れたような色とぶつかり合う。
「何?」
「何じゃないわい。我輩の話、聞いとったかえ?」
「ごめん、ちょっと考え事してた」
正直にそう答えれば途端に心配そうな顔になる。そういうとこ、世渡り上手に見えて優しすぎるとこ、だから付け込まれるんだよ、俺なんかに。心の中でだけ薫は呟く。
「……何かあったのかえ?」
自分が踏み込んでもいいものか、それとも放っておいて欲しいのかと図るような目から逃れるように視線を下げればまた先ほどと同じ行先にたどり着いた。
零の体の中で自分の唇が唯一触れたことのない、その場所。
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