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    ミラプト/プのバイクバナーネタ/糖度高

    ※オーバータイム後の設定のつもりなので、ミはプの本名知ってます。
    トライデント追加セリフにて、ミのセリフが変わっているのでそこから勝手に妄想してミは頑張って免許取った設定にしてしまってます。
    ちょいギャグめテイスト。

    無自覚イチャイチャとナチュラルにイケメンムーブするプにキュンキュンするミは良いぞ。

    今日のディナーはポークチョップ 「え、何、お前……バイク乗れんの?」
     「勝手に人の画面を見るな」
     そう言った俺に、めんどくさそうに返事をしつつ顔をこちらに向けたクリプトは、視線も膝上のラップトップからこちらへと移す。
     クリプトが見ていたのは、大型バイクのデジタルカタログで、いかつい車体がずらりと並んでいるそれを何故見ているのかが疑問として浮かんできてしまって、ついつい声をかけてしまった。
     いつもだったら流石に他人のラップトップを後ろから勝手に覗き込んで、画面の内容にコメントをするなんていうのは滅多にしない。
     クリプトは特にそういうのを嫌がる相手だと分かっているから余計に。
     けれど、随分と熱心にクリプトがそのカタログを見ていたものだから、頭の中で大型バイクに跨がるコイツをなんとなくイメージしてしまったのだ。
     だがしかし、どうにも薄暗い室内でコンピューターを弄っているイメージしか持っていないものだから、クリプトが大型バイクを乗り回す姿を俺は上手いこと細かい所までは想像出来なかった。

     いや、でも、車は運転出来るのを知っていたし、バイクくらいきっと簡単に乗りこなすのだろう。
     なんでもそつなくこなすクリプトは、トライデントの運転も下手ではない。敵に撃たれている時は、多少荒っぽい運転になるものの、壁に正面から激突したりなんかは今までに一度も無かった。
     それに加えて、ストームポイント周辺の海をオクタンとラムヤを乗せて、手慣れた様子で船を動かしていたクリプトの姿を思い出す。
     妙に姿勢よく操縦席に座り、前方に居る暴れ馬二人に『危ないから大人しくしていろ!』と怒鳴っていたのは、今思い出しても笑える光景だった。
     ……まぁ、そんな事はどうでもいい。
     それよりも、俺とクリプトは一応、付き合ってる筈なのだからそこまで冷たい態度をしなくてもいいだろうに。
     俺は不満を隠すことなくクリプトへと返事をした。
     「なんだよ、ちょっと聞いただけだろー? そんなにツンツンすんなって。んで、乗れんのか? 乗れないのか?」
     【ゲーム】前の待機施設の談話室に置かれたソファーに一人座っていたクリプトの持つラップトップの画面をさらに見つめる。
     クルクルと表示されている車体が変わっていくウェブカタログに映るバイクは、やはりどれも大型の物ばかりだった。
     こういうのを乗り回してみたいという願望は男なら大抵誰しもあるものだろう。
     単純に興味本位で見ていたのかもしれないが、後ろを通りかかったついでにソファーの背凭れ側から見えてしまった物は仕方がない。
     その上で、恋人の事はなるべく知っておきたいと思うのは、俺のサガだ。諦めて欲しい。

     ずいと顔を寄せた俺に、また少しだけ嫌そうな顔をしたクリプトは振り向いていた顔をラップトップへと戻す。
     【ゲーム】施設や【ゲーム】中に俺に必要以上に近付かれたり触れられたりするのを嫌がるのは前からだった。
     他のレジェンド達に俺達の関係がバレるのを恐れているらしい。
     実のところ、既に何人かから軽く探りを入れられているし、俺はバレたとしてもなんら問題は無いと思っているのだが、クリプトに叱られるのは怖い事だと充分に知っているのでコイツの希望通りに基本的には大人しくしている。
     その甲斐もあってか、たまのスキンシップくらいならクリプトも許してくれるようになった。
     勿論、クリプトの機嫌がよさそうな時を見計らってだが。
     ――――俺って、実は凄い優しくって出来る彼氏なんじゃないか?
     脳内でもう一人の俺が自分を褒めるのを聞いて、内心うんうんと頷く。

     今のクリプトのご機嫌は思った通り、悪くないらしく、このくらいの接近ならば気にしていないようだった。
     第一に、他の連中は別のメンバーと話していたり、そもそもこの場に居なかったりするのだから誰も俺達に気を止める奴はいない。
     そして俺に見られても画面の表示を消さないという時点で、ラップトップを見られたって構いやしないと思っているのに違いなかった。
     「趣味で資格を集めていた時があった。バイクもその時にな」
     「ふぅーん」
     それは知らなかった事実だ。
     しかし、車の免許と船の免許を持っているこの男がバイクの免許を持っているのはなんら不思議ではなかった。
     「お前は、車の免許も最近取ったばかりだったな?」
     「んだよ、その含ませたような言い方は。俺だって、もう初心者マークはとっくに取れたっての」
     フッ、と薄笑いをしたクリプトの顔は見なくたって分かる。
     『俺の方が運転が上手くて色々乗りこなせるんだ。ウィット、お前は車だけだったよなぁ?』みたいな顔をしているんだろう。
     背凭れ側からさらにクリプトの方に寄り掛かると、生意気な頭頂部に顎を乗せてやる。
     さらさらとした黒髪のてっぺんにあるつむじにヒゲの生えた顎先をグリグリと押し付けるようにすれば、猫の悲鳴のような声を上げたクリプトが俺の顎先攻撃から前のめりになりつつ首を振って逃れた。
     「なにをする! お前のヒゲは痛いんだ、俺を摩擦でハゲさせる気か?」
     「お前、大体が刈り上がってるんだからいまさらてっぺんがハゲたって問題ねぇだろ。それに、そんなお前でも俺は愛せるぜ、ダーリン」
     「ぶち殺すぞ」
     「ったく、冗談でも殺すなんて恋人に言うかね、普通。俺はし、しょ……傷ついちまった」
     つり上がった目で俺を睨み付けたクリプトにそう眉を下げて言うが、鼻で嗤われる。
     全く、可愛いのに可愛くない奴だと常々思う。
     しかし、クリプトがバイクに乗れるのはどうにも、気になる。
     俺がジッとラップトップの画面を見ているのに気が付いたのか、またもや画面の方に視線を戻したクリプトが首を傾げた。

     「なんだ、そんなにバイクが気になるのか」
     「気になるってか、クリプちゃんが乗ってるのが意外だなと思ってよ。そもそも持ってんのか? 免許だけじゃなくて、その……バイク本体? とかさ」
     「……今は一台だけ持っている。でも普段は乗らないし、【ゲーム】で忙しくてたまに手入れをするくらいだな」
     「それって二人乗り出来る?」
     俺の言葉に、軽く肩を竦めたクリプトは僅かに悩むような素振りをしてみせた。
     おそらく持っているバイクを思い出しているのだろう。
     少しの間を置いてからゆるゆると動き出したクリプトは、背凭れに離れていた背中をつけて俺の腕の間に自然と頭を戻す。
     俺はクリプトにぶつからないように少しだけ身体を動かすと、両手で掴んでいたソファーの背凭れがその動きによって軽い音を立てた。
     「出来なくはない。近頃、人を乗せて走ってないから些か不安だけどな」
     「じゃあ次のオフに乗せてくれよ。クリプちゃんの運転で、ツー……ツ、……なんだっけ?」
     「ツーリングか?」
     「そう! それをしようぜ!」
     元気よく言った俺に、またもやシレッとした顔をしているクリプトはラップトップの画面を切り替える。そこにはいつもの黒地に緑色でクリプトのマークが浮かび上がっていた。

     これは何かご不満らしいと思った俺の予測通り、顔を上向かせたクリプトは眉を微かに寄せたまま唇を開いた。
     「それは構わないが、次のオフはお前の家で映画の予定だっただろう」
     「映画はいつだって見れるだろ?」
     「映画より……お前が作った……」
     その先を口ごもったクリプトの目が左上を向き、俺よりは薄い唇が察しろとばかりにムグムグと動いている。
     オフの際に俺の家で映画を見る時は、いつもよりも時間があるから手の込んだランチとディナーを作ってやるのがいつものルーティンだった。
     そして、それをクリプトが密かに楽しみにしているのも、俺はこの二つの目でしっかりと見抜いていた。
     つまり、『外出したら俺の飯が食べられない』と言いたいのだろう。
     「かわりに、帰ってきてからとっておきの美味いディナーを作ってやるよ。前の日に下拵えさえしておけばそんなに負担にもならないしな」
     「……それならいい」
     俺の返答に満足したのか、真下で柔らかく笑ったクリプトにキスしてやりたくなるが、ここは【ゲーム】施設の談話室だと自分を宥めた。
     いくら周りが俺達を気にしていないとしても、急にキスなんてしたら俺の頬が【ゲーム】前から大ダメージを食らってしまう。それはごめんだった。
     「んじゃ、約束したぞ」
     「分かった」
     パタンという音と一緒にラップトップを閉じたクリプトは、それだけを言うとソファーから立ち上がってしまう。
     おそらく次の【ゲーム】メンバーがそろそろ発表されるのもあって、準備の為に一度自分のスペースに戻るつもりなのだろう。
     俺はそんなクリプトの後ろ姿を眺めながら、二日後にくるオフの日を心待ちにしている自分に気が付いて、誰にも気が付かれない程度の苦笑を浮かべていた。

     □ □ □

     うっすらと降り注ぐ光の下、見慣れたパラダイスラウンジの扉横の壁に背を凭れてポケットから取り出したスマホを眺める。時刻は九時少し前。
     パラダイスラウンジ周辺は飲み屋街なのもあって、周囲の店は軒並み『準備中』の札がかかり、賑わいを見せる夜中ではありえないくらいに静かだ。
     いつもよりも集合時間が早いのは、クリプトが真昼を過ぎるとバイクは暑いから嫌だと言ったからだった。
     一、二時間ソラス郊外をぐるっと回って、事前に俺が調べておいた店でランチを食べる程度ならば、日が一番高く昇る前には戻ってこられるだろう。
     俺としてはもう少し遠出をしても構わないとも思ったのだが、クリプトはあまりソラス中心街から離れるのを好まない。
     そして俺もそこまで外出が好きな方ではないから、この点に関しては特に問題は無かった。

     それよりも、ちゃんとスタイリングは決まっているだろうか。
     額にかかる前髪の先端を指先でつまみ、三十分以上かけて整えたそこをチェックする。
     勿論常に髪型はバッチリにしているが、こうしてクリプトとオフに会う時はいつも以上に気合が入った。
     服はクリプトの事前の言い付け通りに、オレンジの長袖カットソーにヴィンテージのGジャンと黒デニムにブーツを纏っている。
     バイクに乗る時は、例え後ろに乗るにしても長袖長ズボンの方が色々な面で安心らしい。
     本当は薄手のライダースでも羽織ろうかと思ったが、大の男が二人乗りで、なおかつ運転もしない後ろの奴が典型的なライダー系ファッションなのも可笑しいかと思って止めておいた。

     改めてファッションチェックをしていると、遠くの方から聞き慣れないエンジン音がこちらへと近付いてくる。
     物凄くうるさいワケではないが、確かな存在感のあるその音の方角を向くと一台の大型バイクが迫ってくるのが見えた。
     砂利混じりの道路をザリザリと音を立てて巨大なホイールで踏み締めながら、全体のカラーリングが緑色で構成されたバイクが滑らかに俺の前で停車する。
     遠くから見える限りで想像していたよりも、さらに大きな車体に見えるバイクに内心驚いていると、エンジンを切ったのか駆動音が止まった。
     そして、素早く跨がっていたバイクから降りた人物は被っていたフルフェイスヘルメットを取り去ると、少し乱れた前髪を手櫛で直す。
     ……その動作に、思いがけずグッと来てしまったのは仕方がないだろう。
     「おはよう。……ウィット?」
     「! ……お、おはようクリプちゃん。今日はなかなかいい天気で良かったよな! 暑すぎずかといって寒すぎず……あー、とにかく良かったよ」
     「落ちつけ、何をそんなに慌ててる」
     「いや、慌ててなんかいないさ。ただ、……随分と様になってるなと思っただけ」
     そうだ、とても様になっている。
     俺の前に佇むクリプトはいつもの戦闘服や私服とは違い、黒のライダースと青デニムに長めの黒ブーツ姿だった。
     そして手にはグローブがはめられ、バイクと揃いのグリーンを基調にしたヘルメットを小脇に抱えている。
     「そうか? それならいいが……ほら、ヘルメット着けておけよ」
     「あぁ、ありがとう……」
     こちらの言葉に気を良くしたらしいクリプトは、バイクにくくりつけていたもう一つ同じカラーリングのヘルメットを取ると、俺の胸元へと押し付けてくる。
     自慢げな顔をしているのが納得出来るくらいに美しく磨かれた緑色のバイクは、日の光を浴びてキラキラと輝いていた。
     たまにしか乗らないと言っていたものの、このバイク自体はかなり気に入ってはいるようで、ハンドルの横辺りにはクリプトのマークとハックのステッカー、それに加えて【TJP】のステッカーまで貼られている。
     コイツは自分の正体を隠したいという割に【TJP】のアピールを衣装にも時々混ぜていて、俺としては心配な時もあるが、衣装の装飾に関してはシンジケートの嫌がらせの可能性も否定出来ないので俺から何かを言った事は無かった。
     「ほら、いつまで見てる。早く行くぞ」
     そんなクリプトのこだわりが数多く表れている車体を眺めていた俺を尻目に、バイクに再度跨がったクリプトの後ろにあるスペースに俺も慌てて跨がると、渡されたメットを被りかけて一瞬止まる。
     折角クリプトにカッコいい所を見せたかったのだが、これを被った後では髪型も何も無いだろう。
     それを僅かに残念に思いながらも、メットを被れば振り返ってこちらを見ていたクリプトと目が合う。
     同じようにメットを被り直したクリプトが下ろしていたシールドを上げると、薄く笑うのが見えた。
     「……例え、お前がどんな髪型になろうが愛してやるさ、ハニー」
     「っ!? なに、おま……!!」
     コツン、とメット上部を軽く叩かれながら不意に言われた言葉にむせかける。
     だが、すぐに前を向いてしまったクリプトは、止めていたエンジンを動かし始めた。
     駆動前の音が周囲に響く中で、首だけをまた振り向かせて片手を後ろに回したクリプトが俺の片手を取ると自身の腰へと導く。
     「ほら、しっかり掴まってろ。でもあまり強く掴みすぎるなよ」
     「……ん」
     再び前を向いてシールドを下げたクリプトの腰に手を添えてそこを掴む。
     掴み慣れている筈のそこは、やはり細くもしっかりとした筋肉がついているのがライダース越しにでも分かった。
     俺の恋人は認めるのもシャクではあるが、かなり、イカしてる。最高にカッコいい男だ。

     これは帰ったらとっておきのディナーでおもてなししなければ、良い経験をしすぎて逆にバチが当たりそうだな。
     走り出したバイクと徐々に上がるスピード、流れいく景色の中で俺はうっすらと熱くなった頬を感じながら、そんな事を考えていた。
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