Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ___

    SS置き場
    ある程度溜まったら支部に置きます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request
    POIPOI 107

    ___

    ☆quiet follow

    ミラ(→←)プト/新規掛け合いネタ/糖度中

    ※シーズン14の新規掛け合いネタ
    相変わらず捏造ばかり・このミプはセフレだと思いつつの両片思い
    「お兄ちゃん」と呼ばれて嬉しいような複雑なプトと、自分で呼びかけたクセに後から色々ヤバいかもと思うミって可愛いのでは?というネタ

    甘いお兄ちゃんネタも今度書きたい。

    メガイラの舌 「ミラージュだっけか? ありがとな」
     「ウィットでいいさ、お兄ちゃん。ハハハ」
     自身で倒した敵部隊のデスボックスを漁っていた俺から少し離れた場所にて、ニューキャッスルとミラージュが親しげな雰囲気を漂わせてそう声を掛け合っているのが耳に入り込み、少なくなっていたシールドセルをバックパックに詰めようとしていた手を思わず止める。
     『ウィットでいいさ』? それに、"お兄ちゃん"とは、一体いつの間にニューキャッスルとミラージュはそんな仲になったというのだろう。
     しかしそれ以上の会話は風の流れが変わって、今度はこちらが風上になってしまったせいで上手く聞こえなかった。
     今は命を賭けた試合中で、こんな事に意識を取られるワケにはいかないと握っていたシールドセルをどうにかしまい込むと、今度はノロノロと弾薬の整理を始める。
     何故、俺はこんなにも酷く混乱しているのだろうと、自分でも分かるくらいの意識の変調が気持ち悪い。
     ミラージュと俺は互いに都合の良い関係だというのは、暗黙の了解になっている。その点に関して深く議論を交わした事もないが、恐らく向こうもそう思っているのだろう。
     だったら今の俺の思考は論理的ではない。

     それに、今シーズンから運営の意向によって、リングの縮小速度と与えるダメージが増加したせいで移動や物資の補給でモタモタなどしていられない。
     分かっているというのに、既に離れた場所に落ちているデスボックスから物資を補充し、バックパックの整理を終え、ついでにこちらのデスボックスも確認に来たらしいニューキャッスルとミラージュの二人に視線を向ける事が何故か出来なかった。
     「おーい、おっさん。もう行けるか? そろそろリングが来る。亀みたいに丸まってる場合じゃないぞ」
     しゃがんでいた俺の視界に、土煙で汚れた黒いエンジニアブーツの先端が映る。
     頭上から投げ掛けられた声は、普段よりも幾分いくぶんか冷たい。
     コイツが何に拗ねているのか、何が怒りを買ったのかも分からないまま、今日はやけに突っ掛かってくるミラージュの態度にこちらも苛立ちが募る。
     だから弾の補充も完了した辺りで素早く立ち上がれば、思ったよりもこちらに近い位置に立っていたミラージュがわざとらしく身体を動かし俺を避けた。
     「もう行ける。それにリングはまだ余裕があるだろうが。……本当に我慢の足りない奴だ、やはりいつも最初に敵に突っ込んでダウンするだけはあるなぁ? 小僧」
     「はぁ?! 俺は別にいつも一番にダウンしてるワケじゃねぇだろうが!」
     「どうだか」
     こちらの挑発にもう一度唇を開きかけたミラージュの肩をニューキャッスルのグローブで隠された分厚い掌が覆う。
     その様子に、腹の底から沸々と嫌な感覚がのぼってきて、この感情の正体不明さから余計にミラージュを睨み付けた。
     「こらこら、もうそこら辺にしておけよ! 今は試合中で俺達は仲間なんだから」
     だが、こちらを叱り付けるような声を出したニューキャッスルに視線を向けると、フェイスゴーグルの下から覗いている口許が、わざとらしくムッとしかめられているのに毒気が抜かれる。
     全く、本当にその通りだ。
     俺と同じ事を思っているのか、バツの悪そうな顔をしたミラージュと視線が絡む。
     いい年して、仕事中に無駄な喧嘩をしたせいで同僚にこれ以上叱られるのはごめんだ。けれど、俺はやはりもう少しだけ言ってやりたくて口を開いた。
     「分かっているさ。……そもそも俺をコイツが"おっさん"だなんて言ってからかうのが悪い」
     「なっ、……それは、……それは別に良いだろ……お前だって俺の事を"小僧"って言うんだからお互い様だ!」
     「一歳しか変わらないだろうが」
     「うるせぇな、俺の好きに呼ばせろよ」
     しかし、そんな俺達の姿を見ていたニューキャッスルはミラージュの肩に置いていた手を外すと、何故か快活に笑い出した。
     「アハハッ! お前達は仲がいいんだなぁ」
     「……別に? 仲良くなんてないさ。なぁ、クリプト?」
     ニューキャッスルのその言葉に、俺よりも先にそう言ったミラージュはこちらをじっとりとした瞳でめつけてくる。
     やはり今日のコイツはどうにも可笑しい。元々可笑しいのは変わらないが、何かを言いたげなクセに、ハッキリと明言しないその顔に同意の言葉を浴びせようとして結局止めた。
     今はそれを言うべきではないと、何となく虫の知らせが働いたともいえる。
     代わりに、フンと一度鼻を鳴らしてミラージュの肩にぶつかりながら横を通り過ぎれば、何も言わないミラージュの視線が背中を焼くのを空から降り注ぐ日差しと同じくらいに強く感じた。

     □ □ □

     結局、その後の試合もそこまでかんばしい成果は得られず、緩衝材となっていたニューキャッスルはバンガロールに用があるのだと言って先にこの場を立ち去っていた。
     ガタガタとロッカー内の荷物を漁る音と、【ゲーム】用の衣装を脱ぐ衣擦れの音だけがロッカールームに響いている。
     丁度いいのか悪いのか、他の部隊になったレジェンドの中で男子用ロッカーに立ち寄る者はまだ当分居ないらしい。
     いつもだったら嫌という程に絡んでくる筈の背後に立っているミラージュの気配だけを感じ取りながら、俺は意を決して言葉を発した。
     「お前、一体何をそんなに怒っている」
     ポツリと呟いた言葉にミラージュからの返答はない。
     だが、ゴソゴソと恐らくホログラム装置を取り外していたらしいミラージュの動きが一瞬止まり、音がしなくなった。
     けれどまた直ぐに音がし出したかと思うと、全てのホログラム装置を取り外し終えたのかそれらをロッカーに入れ込む音が聞こえる。

     このお喋り男が何も言わないくらいの酷い事を俺がしたのだろうか? そんな覚えはない、と頭の中の記憶を探る。
     大体、後ろに居る奴だって、いつの間にかニューキャッスルと親しげな雰囲気を醸し出しているのだし、別にこちらと深く関わり合う必要ももう無いのだろう。
     どうせ俺はそういう扱いなのだと、針で心臓を刺されたかのような痛みを刹那せつな覚えたと思ったタイミングで、肩を後ろから掴まれ振り向かされる。
     「!? ……ん、……ッむ……!」
     そのまま背後のロッカーに背中を押し付けられて、金属製のロッカーがガタリと大きな音を立てたが、強く打ち付けそうだった頭部だけはミラージュの掌が差し込まれたせいで痛みは無かった。
     しかし振り向かされた拍子に握られた手首には、そこそこの痛みが走っている。
     そうして探られ慣れた口腔内を無遠慮に舐めるミラージュの少しだけ血の味のする舌に眉を顰めた。
     「ふ……ぅ……っ……!」
     「……ッ……」
     いつも以上に粘着質なキスに呼吸が奪われ、くらむ視界にここがどこなのかも忘れそうになる。
     頭上にあるささやかなライトに照らされてキラキラと光を帯びている長い睫毛が伏せられているせいで、ミラージュの瞳は見えない。
     ねちっこさの仕上げとばかりに舌先を吸い上げられて外へと引きり出され、やっと離れた絡んだ舌からは透明な雫が繋がり、ポタリとリノリウム張りの床へと落ちていった。
     それと同時にこちらの手首を掴んでいた指と頭を支えていた手が離れていき、濃密な汗臭と芳香が薄まりつつあるものの甘い香りの混ざった体臭が遠くなっていく。
     「ちっとはテメェで考えな。……お兄ちゃん?」
     そうして、クコの実のような鮮やかな赤色の舌をベロリと出したミラージュが嫌みったらしい口調でそう囁き、口角を上げる。
     ニィ、と歪んだ唇は、まるでこちらを誘惑する悪魔のようにすら見えた。
     「ムォ? お前、……」
     いきなり投げかけられた呼び掛けにそう咄嗟に声をあげるが、すぐに笑みを引っ込め、ヒラリと両手を上げて俺から離れたミラージュはロッカールームをそそくさと出て行ってしまう。
     「……チッ……なんだってんだ、アイツ……」
     結局何も分からないまま居なくなってしまったミラージュに向かって舌打ちと文句を飛ばすが、当然、もうここに居ないアイツには聞こえない。

     何にあそこまで怒っているのか分からないが、それよりもミラージュの唇から出てきた"お兄ちゃん"という愛称が脳内をグルグルと回っては消えていく。
     何もかもイラつくと感じるのに、どうにも落ち着かずに気が急いているような、そんな不思議な心持ちに自分でも何が自分の琴線きんせんに触れたのかが理解出来ずに困惑してしまう。
     アイツが俺を"お兄ちゃん"と呼んできた事もそうだが、あの呼び方は最初に俺へと向けられた物ではない。
     その事実に心底むかっ腹が立っている筈なのに、脳内でリフレインするミラージュの挑発するような声に背中がぞわぞわとして熱が引かないのは何故だろうか。
     ――――これならば、"おっさん"と呼ばれた方がまだ数倍良い。
     一人悶々とした衝動を抱えながら、どうせシャワールームに行ったのだろうミラージュとかち合わないように、極力ゆっくりと自身の体中に装着しているコードを慎重に取り外し始めたのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works