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「別にいらないです」
まるでそれが当たり前かのように呟かれた拒絶の言葉。
怒っているわけでも拗ねているわけでもなく、お腹いっぱいになって食べられない時と同じように、ただ本当に「いらない」と。
そんな風に言われたものだから、一瞬思考が追いつかず固まった。
「えーっと…嫌、だった?」
手元の作業にもう意識を移してた目がキョトリとこちらを向く。
まん丸い大きな目に見つめられると言葉が、いや胸が詰まってしまう。
タソガレドキ城下にある忍軍御用達の薬屋に行こうと誘ったのだ。あそこは一般客も利用できるが一見さんお断り。自分たちが紹介さえすれば次から専用の手形で出入りできる。
そう話したらいらないと言われた。
「嫌というわけでは…」
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